9話 合格発表!
ハナが家に帰ると、母親は特にハナから試験の様子を聞こうとはしなかった。ハナの様子から何かを感じ取ったのかもしれない。
帰り道に、メグムからは、勝ち負けだけが合否判定に影響するわけじゃないよと力説されたが、ハナは自分が確実に落ちたと感じていた。
(ママに伝えよう。今日の結果を……)
このまま黙っていると、母親や家族に変に期待させてしまうかもしれない。ハナはそう思った。ダメだったなら、ダメだったと正直に話そう。支えてくれた家族には伝える義務があるはずだ。
「ママ、あのね、今日の試験なんだけど……」
ハナは勇気を持って母親に話しかける。
「うんうん。どうしたの」
すると、母親はハナに優しく微笑みかけ、急かすことなく、じっとハナが話しだすのを待ってくれた。
「二試合、試合をしたの。メグとも当たっちゃって、二試合とも勝てなかった……」
「うんうん」
ハナは、話していて、泣きそうになるのをなんとか堪える。
「だから、試験、落ちた……と、思う……」
「そうなんだ。良く頑張ったねぇ」
そう言い、母親はハナを優しく抱きしめる。
「結果はまだわからないけど、もしダメでも、ハナちゃんがずっと頑張っていたことは、私たちが知ってるよ。本当に良く頑張ったねぇ」
「……ママ!」
ハナは母親の優しさ、温かさに触れ、もう涙を堪えることができなかった。
人目を気にせず、大きな声で、涙を流す。
「行きた、かった……。フラワー、ギフト学園に……行きたかったよう……!」
「うん、うん」
ハナが泣き止むまで、母親はずっとハナの頭を撫で続けてくれた。
☆ ☆ ☆
フラワーギフト学園の合格発表当日。
ハナは自分の部屋で布団にくるまっていた。
合否結果は、文書として当日に受験者に郵送される。ハナはその結果を見るのが怖くて、布団の中に隠れた。
母親に先に見てもらい。結果を教えてくれるようにハナはお願いした。
(ううぁう……。落とすなら、もうひと思いにすぐに落としてほしいよう)
最終試験から数日、ハナは悶々とした日々を過ごしていた。そして、いまは、母親の足音が気になって仕方ない。
(もう結果届いたのかな? ううう……!)
ハナはごろんごろんとベットの上を転がる。すると、母親の足音が近づいてくる気配がした。
(ママが、くる……!)
ハナはもう一度布団を深く被り直す。そして、動かなくなる。
「ハナちゃん、入るわよ~」
そう言い、扉がゆっくりと開かれる。合否判定を伝えにきたわりには、母親が冷静だとハナは思った。
(もし、受かっていたら、もっと明るい感じだよね……)
落ちたとずっと考えていた。でもいざ、合否判定を目の前にすると、心臓がどくんどくんと脈を打つ。
「ハナちゃん、試験結果なんだけど……」
ハナは、ぎゅっと目を閉じて、母親の言葉を待った。
「おめでとう」
時間が止まった気がした。ハナは自分の耳を疑う。
「おめでとうハナちゃん。四月からは、フラワーギフト学園に通えるね」
ハナはがばっと布団から飛び起きる。
「ママ……本当に? 嘘じゃ、ない……?」
ハナは母親から一枚の文書を手渡される。そこには、合格おめでとうございます、の文字があった。
「だって私……二連敗したんだよ……? なのに、なんで、嘘……!」
意図せずに、ハナの瞳からボロボロと涙が零れ落ちる。
「きっと、たっきゅーと!の神様が、ハナのことを見ていてくれたんだね」
「やった、やった……! ありがとう、ママ……!」
ハナは母親に思いっきり抱き着く。
「ハナが頑張った結果だよ。それよりも、メグちゃんに伝えなくていいの?」
「メグ……! ママ、ちょっとだけ、外に行ってくる!」
「外って、そのパジャマのまま? あ、ハナ! もう~」
ハナは母親の話が終わる前に、部屋を飛び出す。そして家を出て、メグムの家を目指す。
(メグ……! 私、受かったよ……!)
自分がパジャマであることなんて気にしない。ただ、早くメグムに伝えたい。
メグムの家が見えてくると、玄関の前にメグムがいた。
走ってくるハナにメグムは気が付く。そのハナの様子を見て、メグムはハナの試験結果に気が付いた。
メグムの表情を見て、ハナもメグムの試験結果がわかった。
二人は抱き合い。お互いに歓喜の涙を流す。
周りの人なんて気にならない。最高の瞬間を、いまは二人だけのものだ。
ハナとメグムは、フラワーギフト学園に合格した。
四月から、フラワーギフト学園を舞台にした、二人の新たなたっきゅーと!の物語が始まる。
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