4話 最終試験スタート!

 試験はその後も続いていった。最初でさえハナとメグムが不安がっていた二次試験の面接試験。


 ハナは、どうして自分がこのフラワーギフト学園を受験したいと思ったか、それを志した日の出来事を、素直に試験官に伝えた。卓球が大好きだという気持ちも。


 メグムは暴走しすぎることなく、たっきゅーと!とミカンへの愛を伝えた。そして、お互いの親友への感謝の気持ちも。


 二次試験の合格者は五十人。二人はその中に残ることができた。


 そして、最終試験が行われる、フラワーギフト学園に二人は初めて足を踏み入れた。


「わぁ~空気がきれい! それに思っていたよりも広い!」


 ハナはフラワーギフト学園の校門をくぐると、周りを見渡す。都会の中にありながら、自然に囲まれた土地。全校生徒は六十人であり、校舎はそれほど大きくないけれど、お城のような外観をしている。


 プールや体育館、練習設備、学生寮などが広く作られた、アイドルたちの学校。


「いよいよだね、ハナ。二人で、ここに通おう」


「うん、ここに通えたら、きっと忘れられない三年間になるはず!」


 二人は緊張感よりも、高揚感を感じながら、試験会場である体育館へと向かった。


 体育館はハナたちの地元にある総合体育館の第一体育館よりも広く作られていた。一階が競技スペースで、二階が観客席であることは同じだが、すでにステージやスクリーン、音響設備が整っている。まさに、たっきゅーと!を行うための会場といった造りをしていた。


 二階の観客席に、受験生五十人が集まる。すると、一階のステージに人影が現れる。


「皆さん、本日はフラワーギフト学園の最終選考会にお越しいただきありがとうございます。私は学園長の秋風緑です」


 秋風緑。この名前に、ハナは聞き覚えがあった。たっきゅーと!を初めて行い、世に広めた、全日本卓球選手権で優勝経験もある人。


「うそ……! 本物……!」


 隣でメグムが口を押さえて、なんとか興奮を押し殺していた。周りを見渡すと、他の受験生たちも各々喜んだり、驚いたり反応していた。


 スーツに身を包んだその姿は大人の女性の風格を漂わせており、その中に母性のような優しさも感じられた。


「皆さん、すでに知っている人も多いと思いますが、最終試験は、受験生による、たっきゅーと!の試合となります。勝ち負けだけが合否に影響するわけではないので、その点だけはよろしくお願いします」


 秋風学園長は、深々と頭を下げる。


「そして、一つだけ、変更点があります」


 その言葉に会場がざわつく。


「以前までは、一人一度だけ試合を行っていましたが、今回の試験では、一人二回試合を行ってもらいます。これは、少しでも正確に受験生のことを知りたいという私の願いにより導入されたことです、ご理解の程をよろしくお願いします」


 一人二回試合ができる。確かにそうすることで、ウィナーライブを行える受験生も増える。


「そして、時間の都合上。試合は3セットマッチ、2セット先取で行われます。こちらの方もよろしくお願いします。それでは、準備ができ次第、対戦相手の抽選結果をスクリーンに映し出しますので、少々お持ちください」


 そう言い頭を下げると、秋風学園長はステージから外に消えていった。


「二回試合か……。でもチャンスはみんな広がるわけだよね、メグ!」


「そうだね。でも3セットマッチっていうのも重要だね、2セット取られたら、試合が終わっちゃうもの」


 受験生たちは、それぞれ変更点から、たっきゅーと!のイメージを組み直していた。


 そして、会場内にアナウンスが入る。


『お待たせしました。これより、一回戦の対戦相手の氏名と受験番号を発表します。スクリーンに映し出された上から順に試合を行っていきます。試合に勝った人はステージで、フラワーギフトのウィナーライブを行うことにも気をつけてください。それでは、熱いたっきゅーと!をよろしくお願いします』


 アナウンスが終わると。スクリーンにそれぞれの対戦相手が映し出された。ハナとメグムは自分の名前を探す。


 そして、


「……!」


 二人は自分の名前を見つけた。それと同時に、親友の名前も見つけた。二人の名前は隣どうし。


 ハナとメグムは一回戦目の対戦相手だった。


 ハナは、声を出すことができなかった。受験生どうしが試合を行う。二人が戦う可能性もゼロではない。それでも、最終選考まで残った受験生は五十人いる。当たらないだろう。そう思っていた。願っていた。


 ハナがメグムの方を見ると、メグムも丁度こちらを振り返っているときだった。


「えっへへ。当たっちゃったね、ハナ」


 メグムはハナに笑いかけた。


「本当は、当たりたくなかった。でも、これは逆にチャンスじゃないかな」


「チャンス?」


「うん。勝敗だけが、結果に影響するわけじゃないって秋風さんが言ってた。それなら、私たちで、最高のたっきゅーと!の試合をしようよ!」


「メグ……!」


 ハナはメグムをすごいと思った。すぐに気持ちを切り替えて、前に向かっていける。ハナはメグムの笑顔に救われた。


「うん……! 最高の試合をしよう、メグ!」


 二人はポケットの中からキーホルダーを取り出す。ハナはミカンのキーホルダー。メグムは花のキーホルダー。お互いに親友が合格できるよう思いを込めたもの。それを見て、二人で笑い合う。


 ハナとメグムは改めて感じた。二人の絆が、こんなことぐらいで傷つくことはないってことを。

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