第16話 不朽の想い
今ならやれる気がする……。一刻も早くここから起き上がりたい……!
私の右手に想いが宿る……
「不朽の想い《エターナル=ホープ》!」
私は魔法を唱えた。すると、眩い光が右手から放たれ、私の傷を優しく包み込んでいく。
光は傷を癒していき、そして、やがて全ての傷を跡形もなく消し去った。
「おぉ……これが君の魔法……すごい。 とても綺麗だ……それになんと言うか、優しい感じがするよ」
ベルさんはとても驚いた様子だった。それを聞いて少し照れ臭くなる。でも、これでようやくみんなの役に立てるようになったと思うと嬉しかった。
「ふぅ……。では、アスティルベ=S=エフェメラル。戦線に復帰させていただきます」
「うん、よろしく頼むよ」
ベルさんは笑顔で言う。
「はい」
私もそれにつられて笑みを浮かべた。
それから、しばらく彼女と会話をしていると、突然、部屋の扉が開かれた。
「ちょっといいか」
現れたのは支部長だった。
「は、はい……」
私は慌てて立ち上がる。
「おや、もう傷は治ったのか。さては魔法を使ったのかな?」
彼女はニヤリとした表情を浮かべた。どうも食えない人だ。
「えっと、まぁ……そうですね」
隠しても無駄だと思い正直に打ち明けることにした。
「そうか。よろしい、それなら好都合だ。君には早く復帰して欲しいと思っていたからな」
彼女に私を心配する様子は微塵も見られない。まるで、さっさと仕事をしろと言っているようだ。
「はぁ……」
「さて、そろそろ本題に入ろう。ベルフは外してくれるかな?」
「わかりました」
ベルさんは席を立ち、医務室の外へと出て行った。
「まずは君が無事で何よりだ。エフェメラルくん。君が死んでしまっては、重大な損失になる」
「はい……ご迷惑をおかけしました」
「いや、謝る必要はない。君にはしっかりと責任を取ってもらうからな」
冷たい瞳が私を射抜いて、動きを止める。
「えっ……」
「ルーメンが死んでしまった。そのため今113スクワッドにはリーダーがいない。そこで、君に新たなリーダーをやってもらう」
「ちょ、ちょっと待ってください! どうして、私が……!?」
あまりの急展開に頭がついていかない。
私なんてまだ入ったばかりだし、みんなをまとめる力もない。それに戦場では役立たずだった。なのに、いきなりリーダーを任せられるなんて……。
「簡単なことだ。君が一番適任だからだよ」
「そんな……私なんかよりベルさんの方がよっぽど……」
「奴は駄目だ。奴に任せるくらいなら、の君のほうがよっぽどマシだ」
その言葉に違和感を覚える。ベルさんより私の方が適任? そんなはずがない。ベルさんは優しいし、コミュニケーション能力も高い。他の人に慕われている。きっと、私よりも相応しいはずだ。
「う、嘘ですよ。だって、ベルさんは……」
「奴はあまりに不安定すぎる」
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