第4話 過去の事

 少し昔話をしよう。

 15歳の頃の事だ。

 この世界は秋の特定の期間に、この1年の間に15歳になった者は神殿に赴く。

 そこで各自信託を受け、何かしらのギフトやスキルを得られる。

 行かなくても受けられるらしいが、何のギフトやスキルを得られたのか確認する手段が神殿にあるので、正確には確かめに行くのだ。


 大抵の町や村は収穫祭に組み込んでおり、成人を祝う。

 そう、信託を受ける=成人になる。


 そうして場合によっては同郷の者達でパーティーを組んで旗揚げをというか、一攫千金を狙ったり成り上がりだったりと色々な理由を付けて辛気臭い村を離れ、都会の町にて冒険者をしたりする。


 ある者はチャンスを活かして大金と名誉、そして女を手にする。

 またある者は志半ばで倒れ、運が悪ければ鬼籍に入る。


 しかし若者と言うのは夢を見、己の力を過信する。

 だが、俺のように孤児院で暮らしていた者は選択肢がない。

 成人となると孤児院を出なくてはならないからだ。

 その為戦闘系のギフトを得られると冒険者をする義務があり、村を出ざるを得ない。

 金貨1000枚を国に収めるか、30歳まで冒険者をしなければならない。

 勿論怪我で冒険者をできなくなれば免除される。


 孤児院は国が経営し、貴重な子供を死なせないように成人するまで面倒を見る。

 魔物の多いこの世界では、幼い頃に親に先立たれる子供が多いのだ。


 そんな中俺はスキルとして生活魔法、収納、ギフトとして大器晩成になるよく分からないがフューチャーなるギフトと、何をするにも中途半端な万能者というのを得た。


 どうやら万能者のギフトの付随スキルとして収納と生活魔法がある。

 万能者は序盤から中盤は非常に便利で強力だ。

 何せ中級魔法までだが、全属性に適正がある。

 だが、頭打ちが必ず待っている。

 ギフトは殆どの者が1つだ。

 だが、俺は2つ。いや、2つ持ちは聞いた事がないレベルで無い。

 その為、良ギフトを得られた者達でパーティーを組んだのだが、先の理由から期待の星として俺もその中の1人となった。


 リーダーは村長の息子だった。


 英雄の超レアギフトを得て、良ギフトを得た者を強引に引き入れていった。

 俺の万能者は便利屋として序盤から中盤で重宝される。

 良ギフトには変わりないが、精々上級冒険者であるA級が限界らしい。


 それに引き換え英雄は魔王を討伐するだけの力を得られるから、勇者とも言われる。


 そんな中俺は副リーダーという実質的なパーティーの纏め役をさせられ、精力的に活動させられた。


 パーティーメンバーはこうだった。

 リーダー 

 英雄のサンタナ

 身長175cm

 赤毛

 粗暴で生意気な嫌味な奴で、ロングソードを使う。

 かなり体格もよく筋肉質。

 何より幼い頃より剣術を仕込まれており、波の大人より強い。


 槍使いのギルミー

 身長160cm

 スキンヘッドで恰幅が良い。

 サンタナの幼馴染。

 前衛から中衛をこなす。

 剣術、槍術に長けており、サンタナの悪友でもある。


 賢者のシルレット

 身長155cm

 水色の腰までのストレート

 オドオドしたサンタナの分家の者でそこそこ可愛らしく、スタイルは普通。

 風魔法と水魔法の2属性に大きな適正があった。

 得意は水。


 タンクである守護者のダンカン

 身長190cm

 銀髪

 この世界では極めてでかい。

 豪快な奴で、武器はメイスで殴り倒したり、無手での格闘術を得意とする。

 大盾でヘイトを稼ぎ、皆を守る守りの要。


 ヒーラーである聖女のハーニャ

 身長160cm

 薄緑色の髪で、肩までの長さ。

 温厚な性格だが、現実主義できつい性格。 スタイルは年不相応に素晴らしい。


 そして俺。

 ランスタッド。

 身長172cmの金髪。

 痩せ型で3枚目という感じだ。

 普通より少し良い顔立ちと思うが中々女性ウケが良いらしい。

 ごめんなさい、話を盛りました。

 1話目にあるようにどこにでもいる平均的な顔です。ぐすん。



 俺をスカウトしたのは、生活魔法が使えるので旅に便利なのと、当初は多分200kg位だったが珍しい収納持ちだったからだ。


 万能者は成長すると、最終的に500kg程の収納能力になるらしい。

 サンタナとしてはもしも万能者がいれば引き入れるのは決定事項だった。

 自分達の成長に欠かせないからだ。

 但し、俺は自分で言うのも何だが、頭が回る。

 何故か難しい計算も暗算で出来る。

 自分の立ち位置をしっかり考えないと、いずれお荷物として放逐される。


 だから俺は頑張った。

 きつい斥候役を常にし、時に前衛や殿を努めた。

 いや、最初は皆魔物と戦うのに慣れておらずおっかなびっくりで俺が前衛をしていたが、慣れるとサンタナが自分がやるとして、殿だったのを俺と代わった。

 どうやら女に良いところを見せる目的だ。

 最初は守ってやるとして近くにいたかったらしい。

 だが、俺が前衛で活躍しているのが嫌でも女性陣の目に入り、俺の株が上がっている事に危機感を覚えチェンジした。


 本来殿が1番大事なのだ。

 殿は周りに注意を払い、常に警戒して仲間を守らなければならないからだ。

 殿が殺られると、パーティーの生命線である魔法使い系があっという間に殺られてしまい、簡単に全滅してしまう。


 本当はサンタナが殿をするのが1番効率が良いが、確かに俺が殿も悪くはない。

 だが、代わった理由が頂けなかったりする。


 経験値はパーティー員に等しく入ってくるはずなのだが、俺の位置は隊列の最後方で、殆どの魔物を倒しつうる前衛との距離がある。

 恐らくわざとなのだが、俺は経験値が入る範囲外にいさせられている事が多かった。


 ダンジョンでの俺は、仲間に背を向けて後方の通路の警戒をさせられる事が多く、リーダーは仲間全体が経験値を得られる努力をせず、己の事しか考えていなかった。


 例えばA級の魔物と戦っていて、もう動けなくなり、後はとどめを刺すだけの段階でも後方のパーティー員を待たず、経験値が入らない範囲にパーティー員がいようがお構いなしにとどめを刺していたのだ。


 これでは近接戦闘組のみがレベルが上がり、後方組はレベルが上がらない。

 本来は後衛の魔法を切り札とし、後衛の者のレベルを上げるのがパーティー全体の底力がアップする近道なのだ。


 前衛を中心として戦い、俺がパーティーの者達に指示を与えていれば、直接倒す数というのはおのずと少なくなってくる。


 ヒーラーはまた話が別だが、ヒーラーは近接戦闘組が怪我を負うと即時に回復させる必要から経験値が入る範囲にいる事が多かった。


 魔法使いの場合、A級より上に上がる条件が上級魔法が使える事で、S級まで上がると特級魔法を覚えられるが、彼女は辛うじてA級だった。

 ギフトの関係から、得意属性の魔法は特定のレベルになると勝手に使えるようになる。覚えていけた。


 つまりだ、俺の不幸の始まりはこの英雄パーティーにいた事だった・・・

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