第5話 情報収集

 話は少し戻り、オークの集落を潰し、薬草の群生地に戻った時になる。

 俺は薬草の採取ポイントでジェネラルと数匹のオークの討伐証明となる角と、魔石のみを切り出したりした。


 また、アイテムをドロップしていたが、変わった形の被り物だった。


 少し縫ったりの加工をしなければならないが、真っ黒な目出し帽というか、覆面になりそうだ。

 ジェネラルが煙をものともせずにいたから不思議だったが、これのお陰か?

 また、鑑定してみると、名はなく、俺が名前を付けないとだった。


 捻った名前にするか、関係ない名前にするか?

 後回しにしよう。

 取り敢えず変更可能なので、ブラックマスクとしておこう。黒いマスク、そのまんまだ。

 魔力を消費し発動するタイプの魔法具で、発動すると半径20m以内の発動された魔法がキャンセルされ、その魔力を己に取り込めるチートアイテムだ。

 身体の外に魔力を放出すると魔法が消えたのはこれの所為だ。


 残りは後日にするとして、収納から一部を出して解体をしていった。

 これで依頼完了となる分を確保しただろう。


 その後、真っ直ぐにギルドに向かった。

 急げばまだ受付嬢が窓口にいる時間だ。

 ある程度の時間をすぎると、受付嬢が帰ってしまい、夜間要員の職員が相手をしてくれるが無愛想な上、仕事も不確実だ。


 やはりきめ細かな気遣いがあったりと、女性に対応してもらう方が良い。

 なにより目の保養になる。

 何せ受付嬢には容姿端麗の者しかなれないからな。

 性格が良いかは関係なく採用されるから、とんでもないのも時折見る。

 見た目だけは良い受付嬢は多い。


 例えば昨日担当した受付嬢は、スタイル抜群で、ついその胸元に引き寄せられそうになる位の見事な谷間をわざと見えるようにしており、男の冒険者の気を惹こうとしている。

 しょぼい依頼を受けたりすると、明らかに嫌そうな顔をする。


 どうやら受付嬢の給金の大半は、担当した冒険者の報酬に依存しているらしい。

 冒険者に支払われる額の数%ほどが彼女達の取り分らしいんだ。


 で、この女、稼ぎの良い冒険者をたらし込むのに枕営業をしていると噂されていた。

 羨ましいので1度お相手願いたいと思うのだが、俺は稼ぎの悪い冒険者と思われているようで十把一絡げの1人だ。


 さて、どこもかなり並んでいるな。

 今回は受付嬢の顔を見ずに、1番並んでいる者の数が少ない所に並んだ。

 30分程で俺の番が来たが、その受付嬢は新人だった。


 斜め後ろにトウの立った怖いお姉さんが指導員として立っている感じで、慣れないからかぎこちない。


 俺は殲滅報告をしたが、ジェネラルの討伐証明部位や魔石を出したら驚いていた。


「オ、オークジェネラルですか!?す、すごいです!A級の魔物じゃないですか!?」


 後ろのお姉さんが睨んでいるので咳払いして顎で示してやった。


「えっと、失礼しました。他の方のカードは?」


「ああ。俺1人でやったが」


「えっ!ええええ〜!A級を1人でって!あっ!ひょっとしてゲロじゃなくて、ランスタッドさんですか?」

 

 こいつ今ゲロビーと言おうとしたな。はあ・・・


「ゲロビーで悪かったな。いかにもランスタッドだ」


 その受付嬢はやってしまったというような顔をしたが、まあそれは良い。

 不名誉な二つ名はムカつくが、事実でもある。


 周りに聞こえたようで、まさか?あのゲロビーだぞ!とか聞こえた。


 面倒だから放っておこう。


「も、申し訳ぎょざいません」


 舌を噛んだようだ。


「慌てるな。別に怒っちゃいないぞ。それよりも依頼の確認と、魔石の買い取りを頼みたいんだけど大丈夫か?」


「あっはい。失礼しました。は、はい。えっと、依頼ですね。集落を潰したという事ですよね?」


「ごめんなさいね。この子来週寿退職する私の後任で、成人したてなの」


「問題ない。短い期間だったが、あんたにも世話になったな。幸せにな。ああ、依頼の方だったな。オークの集落はしっかりと潰してきたぞ。まだ作っている最中の・・・」


 その後は報告をし、依頼達成の報酬と魔石を買い取って貰った。


 少し可哀想な事をしたかもだが、俺でなければ怒鳴られていてもおかしくない。

 多分この後、先輩に指摘されるだろう。

 この子の並びが少なかった理由でもある。

 まだ15歳、今年の儀式で戦闘ギフトを得られなかったのだろう。

 支援職にはそういった者が就く事が多い。


 その後少し寄り道をして情報を得るべく情報屋に向かった。


「ゲロビーの旦那、ちゃんと調べ済みですぜ。旦那をゲロビーにした奴はしっかり調べていますぜ」

 

 俺は今朝自分に何があったのか思い出し、オークの集落を潰しに行く前に情報屋にてこの町のゴロツキや盗賊の類の情報を集めたいなと思い、情報収集の依頼をしていたのだ。


「ほう、旦那がやるんですか?」


 情報屋が突然聞いてきたので咽てしまった。  


「どうだろう。こいつらはそれほどの奴等なのか?」


「追い剥ぎに始まり強姦や殺し等大抵の悪事はやっていやすぜ。つまりアウトですぜ。旦那がしようとしている事はそういう事でしょう?」


「あははははどうだろうな。どうも昨日ボコラれたようだから、リベンジマッチしようかと思ってさ。次に会ったらぶちのめしてやるけどな。まあ今日は、またいつもの安酒でも飲むさ」


 俺はそうやっていつもの酒場に行き、酒をあおりながらちょっとしたものを食べる。

 そしてまた女将さんに帰れと言われるまで飲んでいた。

 自己嫌悪に陥る。

 こんなところで何やってんだろうなぁ?と。


 生活費が怪しくなってきた事から久々にまともな依頼をしてみたが、今度はやり過ぎたようだ。

 ただひとつ言えるのは今晩は何事もなく宿に辿り着き、きちんとベッドで寝た事だ。

 俺は眠りに落ちる前にふと思う。

 あのガキはちゃんと帰ったんだよな?と。



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