第3話 vsボス
俺が1人になって、つまりパーティーを追放されてからは初となる集団戦に不安を覚えつつも挑んでいく。
集団戦と言っても多対1だ。
近年は後衛の者達を守る殿として戦いのサポートに徹してきた。
パーティー内で俺の立ち位置は攻撃に関しては魔法主体であり、遭遇戦は別として近接戦闘をするのは後衛に近付いてくる奴のみを駆除しつつ、魔法で倒せない時に剣で対処する事だ。
つまり、俺が近接戦闘をするというのは乱戦になっていたり等、行き当たりばったりの状況だ。
前衛職に対して俺がしっかりフォローを入れ、敵の位置や強さを伝えて機動力を活かして敵を撃滅してきた。
集団戦の時、今までは前衛の者が敵の只中に立ち向かい対処してきたが、今は俺1人だ。
いくらオークとはいえ、20体に囲まれれば刺し傷の1箇所や2箇所ぐらい食らってしまうだろう。
だからそうならないように最初に火を着けたのだ。
また、水で濡らした布を口に巻いている。
そう、直接煙を吸わない為にだ。 効果の程を確かめた事はないが、布を濡らすと煙を吸いにくくなると聞いた事があり、どうだかなあ?と思いつつも試している感じだ。
ゴーグルなんてこの世界にはないから目がしみてしまうのは仕方がない。だがそれは向こうも同じだ。
?ゴーグル?それは何だ?
オーク共は煙で視界が悪い事に苛立っているのか、怒りをぶつけんとばかりに雄叫びを上げながらやみくもに棍棒を振っている。
襲撃者の位置がはっきりしないハズなのでそんな事をしたら・・・ほら言わんこっちゃない!同士討ちをしているじゃないか!
そのような場面も見られ、こいつらバカだなあと思う。
作り掛けの建物もあったので、最近ここに来たばかりで集落を作っている最中なのだろうと思う。
おそらく30匹程いるであろうオーク共は、火により俺が意図した通り混乱に陥っていた。
俺も頃合いと見て集落に突入して次々とオークを倒していく。
そうすると1番大きな建物の中から一際大きいオークが出てきた。
先程すでに上位種の1つであるナイトが2匹出てきていたので、ジェネラルがいるな?と思っったが、案の定ジェネラルが出てきた。
そう、オークナイトは剣を持っているのと、一回り体が丕きいので分かりやすい。
通常大人のオークは身長1.2m歩度で、オークナイトは1.4m。
また、オークジェネラルは1.7m程にもなる。
そしてできれば御免被りたいが、オーククイーンやオークキングという2m 越えの化け物もいる。
こいつらは S級指定を受けている災厄と言っても良いようなオークの元締めだ。
本来の実力というか、自力だとジェネラルは今の俺で倒せるられるのか分からないが、こういう時の為に魔力を温存していた。
そう、先読みを使えるようにしているのだ。
先読みがなければ恐らく歯が立たないであろうと思う。
頼り過ぎるのもどうかとは思うが、今持っている力を活用するのが冒険者として当たり前の話でもある。
ただ、過信は命取りだ。
今頃になってしまったと思った。
ナイト相手にスキルを使わずにどこまでやれるか確かめておくんだったなとちょい後悔だ。
今でこそそのように思うのだが、ナイトの時はスキルを使ってきたので、まだ残りの数が多いのもあり、剣技、つまりスキルを使い剣の1振りずつで仕留めていった。
相手が振った剣を躱し、カウンターの形で首を刎ねる簡単なお仕事である。
この2ヶ月の間、俺は大した事をしていない。
魔物の駆除を中心に行なってはいたが、C級の魔物を討伐するのばかり行なっていた。
俺はジェネラルと対峙する前はオーク相手に無双をしていた。
煙で俺の姿が見えないのだろうが、俺は駆けずり回り、先にオークを見付けるとその背後から斬り裂く。
そして斬り裂くとほぼ同時に死体を収納に入れて行くのを繰り返していた。
そして問題のジェネラルである。
驚いた事に魔法が効かない。
そういったスキルを持っているのか?もしくはそういうマジックアイテムを持っているのか?
それと、奴が持っている剣は業物である。ジェネラルは難易度が大幅に上がり、A 級の魔物である。
ランク的に俺のランクより上だ。
それと俺がA級に上がれなかったのは、直接魔物を殺した数が少なかったからだ。それに伴いA級に上がるのに必要なレベルに達していなかったからだ。
俺はギフトの関係から上級魔法を覚えられなくも無かったはずなのだが、覚える為の時間がなかった。
1つの魔法を覚えるのに1週間は掛かるが、その時間をリーダーはくれなかった。
俺の場合、ギフトのおかげで中級魔法と初級魔法に関してはギフトを得た瞬間から覚えており、初めから無詠唱で行けた。
上級魔法はもちろん詠唱がいるのだが、俺が S 級パーティーの中で今まで何とかやってこれたのは、戦闘の中心になる中級魔法があったからでもある。
このジェネラル戦、魔法が使えないので必然的に俺は剣で戦う事になる。
スキルなしで戦っていると、どうも互角だという事が分かる。
お互い細かい切り傷のみを負っていく。
だだ、自身に対してヒールや強化系の魔法は発動しており、強化魔法も効果がきちんと反映できていた。
だが、外に魔法を放つ事が出来なかった。
こいつが何かやっているのかどうかは分からないが。
便利な魔法の使い方として、魔法陣を展開させ、それを足場として機動力を上げるというのがある。
だが、それが使えなかった。
また、魔力弾も手から放った瞬間に霧散していく。
その為剣で戦っていたが、俺の心はこのギリギリの戦闘に心が踊り、滾っていた。
実戦経験が何よりの訓練だという人もいるが、なるほどと分かる位訓練にもなる。
自分の実力以上の者と対峙した時、その戦闘で得られるその内容が貴重なのだ。
しかし、それも俺が押され始めたところで変わる。
体力の違いだった。
奴の方が体力がどうも上だ!というよりも、俺は30匹以上のオークと戦ったから、体力が先に尽きてきたのだ。
剣で打ち合うのももはやこれまでと思い、俺は先読みのスキルを使った。
そこからは見違えるように俺の動きが変わった。
剣の軌道が予め分かるので懐に潜り込み、剣を持った腕を斬り裂き、返す剣で首を落としてあっさり決着した。
以前はぞくっとして嫌な予感から、相手の攻撃が来ると分かるだけだ。
今のようにどう躱せば良いのかはなく、ただ、やばい攻撃が来る!?とその予測がつく、そこまでだった。
こちらの攻撃をどうすれば当たるか、どういう効果があるのかというのが視覚効果で分かる。
慣れるまでそれなりに苦労はしたが、そのお陰でA級の魔物を単独で撃破できた。
そうして俺はジェネラルの武器や死体を収納に入れ、オーク共の死体を収納に入れて回った。
残念ながらオークの集落には特にめぼしい物や、捕えられた人もいなかった。
1番大きな建物には火を着けていなかった。
これには理由があり、もし人が捕えられているとすれば、1番大きな建物だろうと思ったからだ。
幸い人が捕らえられている痕跡は全くなかった。
お宝も無いので集落を燃やし尽くしてから引き上げたが、もう夕方近くだった。
帰りがてら薬草の採取ポイントに寄ってみたが、もう誰もいなくなっていた。
血の臭いや争った痕跡もなかったので、マリニアも他の冒険者達と一緒に引き上げたようだ。
つまり、俺の警告をきちんと聞いてくれたのだ。
明日の朝マリニアの無事を確認したいのもあり、念の為ギルドに顔を出そうと思うのであった。
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