第3話~咲希の想い~

「なあなあ、そろそろ作り始めようぜ。」

 夏海くんがそう言ったのは、入学して二週間が経った頃。

「そうね、そろそろ、設定やジャンルを考え始めなきゃ…。」

 ジャンル、ジャンルか…。どんなのがいいのかな…?

「ねえ、咲希。昔作った小説は何から作ったの?」

「えっと、あの時は…。」

 この学校で教えてくれるのは文法や言葉の使い方、心理学、日本文学や外国文学等等…。要は小説に必要な知識は教えてもらえるけど、作り方そのものは教えてもらえない。

「えっと、まず、ジャンルや登場人物の設定を決めて、後は書いては消しての繰り返しかな…。」

「ふむふむ。ならジャンルを決めましょ!」

 夏澄ちゃん主導のもと、みんなで考える。私はファンタジーばかり書いてたけど、新しいジャンルも書いてみたいな…。

「俺、恋愛もの書いてみたい…。」

 夏海くんがポツリと言った。

「奇遇ね、私も同じこと考えてた。」

 夏澄ちゃんが、嬉しそうにそう言う。

「恋愛かぁ…案外、書きやすいかもな。」

「私も、書いてみたい!」

 ハルくんも私も頷いて、満場一致で決まった。

「じゃあ、次は設定だね。」

 そこでまたみんな悩む。どこから決めたらいいんだろう…?

「まず、物語の舞台からよね…。」

「身近なところで高校がいいんじゃね?大学生活なんて分からないし…。」

「そうだな…。でもさ、正直高校生活も分かってなくね?」

「う、それは確かに…。」

 そう言ってみんなで悩んで、黙ってしまった。

「あ、あの~…。」

 私が小さく手を挙げると、三人がそろって私を見る。

「高校生活なら、今私たちが送ってる感じで進めれば、親近感も沸くし、やりやすいと思う…。全部経験したことじゃなきゃダメってわけじゃないと思うし…。」

 言い終わると、みんなあっけにとられて顔を見合わせる。それから声を揃えて

「「「それいい!!」」」

 と叫んだ。

「想像とかも入れていいのかな?」

「うん、良いと思うよ。」

「そうよね!それも含めて『物語』だものね。」

 夏海くんと夏澄ちゃんはそう言って笑ってる。

「咲希もそうやって今まで書いたのか?」

 ハルくんも目を輝かせながらそう言った。

「うん…。」

「そうなんだな~…。なんか楽しくなってきたぜ!」

「ふふ、そうだね。」

 そう言って笑い合う。複数人で書くとこういう楽しさもあるんだ…。

「っと、そろそろあいつらこっちに戻さないとな…。」

「あはは、そうだね…。」

 二人はまるでお祭りに来た子供みたいにはしゃいでる。

「おーい、授業始まるぞ~。」

 ハルくんが声をかけると、二人は慌てて席に戻った。

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