第2話

私は初めての仕事てんせいを終えた。

片手にはスマートフォンを持ったまま何もない空間に一人立つ中

「お疲れ様。無事終えたわね」

と、リヴェルーが電話越しに話しかけてくる

「これの繰り返しよ。あとはあなたが思うようにやりなさい。そして今思い出したのだけれど、紹介するわ。あなたの上司となる、ハディー神よ」

私の周囲が暗くなり、そのまま振り向くと黒髪で黒のマント。肌の色さえなければまるで影がそこにあるかのような人がそこに居た。

「やぁリヴェルー。新天地へ行くなら私に何か一言あるんじゃないのかい?」

「あらやだ、ハディー怒っているのは重々承知よ」

「じゃあなぜ私の到着を待たずにやってきた人間に任せたんだい?」

「善は急げってよくいうじゃない」

急にリヴェルーという神が「私の代わりに」と押しつけられた神の椅子になんとなく座っている状態で、コンピューターのプログラムのように時間があればすぐにできるというわけでないのだ。

「新しくなった後の研修制度やら君は手順をすっ飛ばして…ことの重大さをわかっているのか?」

まだ喧嘩は続いているが「その必要はないわ。その心配はあなたの能力を使えばわかるはずよ」とリヴェルーは伝えた。

そしてハディーは「私」をみて、品定め…いや値踏みだろうか?その間緊張のせいで自分の鼓動が少し早くなるのを感じる。

「確かに…だが君が面倒を見てもいいと思うが…」

そう話あっている間、白い光が現れた。何というタイミングだろうか、新しい転生者である。

「このタイミングで転生者か…私に任せてもらってもよろしいかね?新しいリヴェルー神」

「え…いや?…」どうしよう、どうしたらいいのかわからない

戸惑ってるうちに、白いふわふわした光は人の形を取り始め、腰の辺りはヒラヒラとした形。まるで制服を着た女子高校生のような

「人の形になるのが早いな。このパターンだと、会話を通して転生先を決めるケースが多い」

そう言いながらハディーは私の前に出て光に近づく。

「あら、もう人の形になる魂が来たのね。なら私はこの会話から外れるわ。新しいリヴェルー神。ハディーがいるから大丈夫よ。だから安心してちょうだいな」

そうしてリヴェルーとの通話が途切れた。

私は頼りの綱である、スマートフォンがホーム画面に戻ってるのに落胆したのを確認したと同時に、光は蛍が飛ぶかのように飛散し、女の子が現れた。

名前を知らない彼女は次第に目を開け、周囲の空間を認識するように周囲を眺めて、ハディーを見た瞬間「ひ!!死神?!」と驚いた声を上げたが

「大丈夫。彼は私の先生の神様。君は心配することはないよ」と宥めるようにハディーは言う

「もしかして、ここっていわゆる、異世界転生への最初の場面ですか?!」と

状態を把握した彼女はとても興奮した様子で

「やったー!!異世界転生!!待ってました!!ねぇ、あなたが転生させてくれる神様なの?私、希望があって、モンスターと仲良くできる世界に行きたいんです!そう言う世界でモンスターと旅したいんです!」

とハディーに詰め寄るように話しかける

「あぁ…えっと」

ハディーは少し困った感じだったが、咳払いをして「なるべく希望に添えるようにしよう。他にはあるかい?」と会話を促した

「そうですねー…ドラゴンに乗って旅をしたり、行く先々でいろんな新種のモンスター発見したり、それを記録する仕事がしたいです!レンジャーみたいな…そういう職業ってあるんですか?」

夢が溢れる転生者の彼女...たしかにその憧れはとてもわかる。私もそうすればよかったかなと思ったが「きみは、仲の悪いこと仲良くしろって言われたらどうする?」とハディーとの会話を遮るように言った。

「なんでそんなことを聞くんですか?そんなの、なるべく関わらないようにします。」と言う誰だよあんたという、声色の返答が来た。

「水をさすような事を言ってしまって申し訳ない。でもあなたの好きなモンスターたちを怖がる方の意見だよ。少数派であっても何か問題が起これば煙たがられる。自分からそこに行きたいのかい?」

私は好きの中に嫌いという人がいれば必ず溝が生まれる事が嫌で、人間としては転生したくなかったのだ。

動物もそうだが人と共生する上で何かしらトラブルはつきものだ。鳴き声やアレルギー、何か壊されたことや、怪我をしたや力を持てば持つほど、それは人間の脅威とされ狩られ、また食糧としても扱われる

「それでも、やってみないとわからないじゃないですか」

と、若々しい回答が返ってきた

「すまないね。私の後ろにいるのは新しく着任した神でリヴェルーという。転生する前に君の記憶を少し見させてもらうよ」

とハディーが彼女の頭に手のひらをかざす

「…君はサイトー、リエというのかい?友達が少ない分、動物を大事に思ってたんだね。成績もいい方みたいだ。君なら基礎のスキルがあれば、とんとん拍子でことが進むよ」

その言葉にリエはほっとしたような表情を浮かべ恐る恐る「転生するとスキルがいいのがつくとかあるんですか?」と聞く

「正直なことを言うと、リヴェルーの言う通り最初からモンスターと仲良くなんて珍しいんだ。だから比較的に共存が進んでいる地域に転生をさせよう。だが、その後のことは君次第だ。」

すると、緊張がほぐれたように顔がすこし緩んだように見えた

ハディーはその間スキル調整であろう割り振りをしていく

見かねた私は老婆心から「転生には時間があるなら、少し君のいく世界を見せておくよ」と彼女に今から行く世界の風景、存在する生き物や植物、そこに暮らす彼女の理想とする「モンスターとの共存の世界」を見せた

「もう出発はできるかい?」

ハディーはリエに向かって尋ねた

「はい、いつでも大丈夫です」

そこにはさっきまであった不安より、期待に満ちた輝く瞳があった。

「そう。では良い旅路を。君の行く末はリヴェルーが見守っているよ」とハディーが言うと、彼女は光に包まれ、勢いよく消えていき

「ふぅ…君。いちいちこう言うやりとりを続けるきかい?君は下手に人間じみすぎてて、心配だ」

呆れた顔のハディーが私の方へ振り返った

「す、すいません。どうしてもショックというか。イメージとは違う!っていうのが怖くて…」

「そういうのを人間じみてるというんだ…まぁ、君の一言のおかげで、彼女自身つまづいたとしても大丈夫なまじないをかけておいたよ」

こうして二人目の転生が無事終わり私の持つスマートフォンに「リエ」と言う新しい連絡先が追加された。

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