第12話 戦闘終了のお知らせニャ

 ニャレットはその場に立ち尽くしその景色に見惚れていた。

 それは、とても美しい幻想的な景色だった。


 淡く光る小さな湖。月は無いが、夜空一面には見た事もないほど沢山の、

一際強く輝く星々。あの星々は、私の知る星と同じなのだろうか・・・。

 それすらも分からない。ただその輝きは月明かりの無いこの世界の夜でも、

月より明るく周囲の森を淡く浮かび上がらせてくれていた。


 湖の周囲には、無数の7色の精霊がフワフワと浮かんでいる。

 それは意志を持ちゆっくりと自由に動き回る。


 完全なる静寂、風は凪、樹々が揺れる音すらしない。

 この静寂を壊すのは躊躇ためらわれたが、

いつまでもこうしている訳にはいかない。


「よし!やるかニャ・・・」


 ドボンッ。


 静寂を切り裂いて、湖に重量物が放り込まれた音が響く。


 淡く光っていた湖は、強い光を放つ。

 そしてそこから現れたのは・・・

神秘的雰囲気を惜しみなく醸し出す女神風の格好をした妖精。


「あなたが落としたのは・・・ん?えっ、魔剣!?しかも混沌の魔剣??重っ・・・」


 湖の妖精は困惑している。


「え?嘘でしょ?これよりいい武器なんて無いわよ・・・」


 湖の妖精は動揺している。


「私が落としたのはその魔剣ニャ。それはやるからモーニングスターをくれニャ」


 私は端的に要求を言う。


「え?はい?・・・何でモーニングスター?」


 湖の妖精は混乱している。


「一番いい装備モーニングスターを頼むニャ」


「・・・」


「・・・」


 森は静寂を取り戻した。




***


「生臭いニャぁ・・・」


 話は、アースドラゴンを倒したところに戻る。


 アースドラゴンは私を嚙ろうと口を開け閉めしてる所に、

サポちゃんがアルテマを打ち込んで倒した。


 私はまたしても巻き添えで数十メートル吹き飛ばされて、

アースドラゴンのよだれまみれになっていた。


「毎度毎度、誰得ニャ・・・」


「観測者歓喜ですよ♪」


「何が悲しくて、あいつらにサービスしニャいとならんのニャ」

 

 私達のレベルは300を超えていた。

 しかし、あのレベルの敵だとスキルのレベルが低いせいか決定力に欠ける。

 毎回、硬直状態からのアルテマで私ごと吹き飛ばされてはたまらない。

 何とかしたいのニャ・・・。


「圧倒的、火力不足ニャ」


 私は思わず愚痴をこぼした。

 というか、サポちゃんに相談する。

 

「あ!そう言えば丁度近くにいい場所がありますよ。

『精霊の泉』と言って正直者が投げ込んだ武器のグレードを上げてくれる泉です♪」


 なにその斧が活躍しそうな泉。


「丁度通り道ですし、あそこはセーフティエリアなので、

今日はそこで野営しましょう♪急げば夜には着くでしょうし」


 こんなやり取りの末に、また数時間かけてたどり着いたのが、

冒頭のシーンだった。そして話をまた戻す訳だけど・・・


・・・


「さっきも言いましたが、この魔剣よりいい武器なんてないですよ?」


 あの豚の剣、そんなにいい武器だったのか。

 

「この際、モーニングスターなら何でもいいニャ。丈夫だと助かるニャ」


 剣は上手く使いこなせなかったのだ。鈍器は殴るだけだから便利ニャ。

 そしてあのトゲトゲはなかなかの殺傷能力な気がする。

 なんだかんだで私もモーニングスターが気に入ってきた。


「ん〜、あっ!一本いいのがあったかも!」


 妖精は、何やらゴソゴソしている。

 

「てってれ〜♪生命棍セフィロトメイス!」


 なんだかすごそうなのが出てきたけど・・・


「私が欲しいのはメイスじゃなくてモーニングスターにゃ」


 鈍器だし、私はいいけどサポちゃんがニャぁ・・・。


「なんでそんなにモーニングスターにこだわるんですか!?

 これは形状をある程度、変えられるのでモーニングスターにもなりますよ」


 なるほど。それならいいかも?


「サポちゃん、あれでいいかニャ?」


 一応、確認してみる。


「ん〜・・・ん?あらまぁ。いいんじゃないです?」


 ん?何故かサポちゃんはニヤニヤしている。怪しすぎるニャ・・・。


「呪われてたりしないだろうニャ?」


 湖の妖精に探りを入れる。


「むしろ祝福の武器ですよ?破損しても所有者のマナを使って復元出来ますし。

 ただ、消費マナは凄まじいですけど。あと攻撃力は微妙です」


 なるほど、微妙だけど使い道はありそうだ。

 マナは腐るほどあるし実質、壊し放題ニャ。


「じゃぁ、それを頼むニャ」


 生命棍が私の目の前に差し出される。

 それを手に取ると、


生命棍セフィロトメイスの所有者がニャレットに登録されました。

 この装備は、譲渡、破棄出来ません。』


「呪われてるじゃニャいか!!」


 湖の妖精の方を睨みつけると妖精はそそくさと湖の中に消えていった。


「おめでとうございます♪マスターの戦闘は終了しました!

 今後、マスターの戦闘行為は虐殺に名前を変える事でしょう♪」


 サポちゃんは、大爆笑していた・・・。


「どう言う事ニャ・・・?」


 嫌な予感しかしない。


 詳しく説明を要求すると、生命棍の攻撃力は装備者のマナステータスに依存するらしい。世界に8本しか存在しないオリジンシリーズの中でも一際、癖の強い一品だとか・・・。

 普通の人が使用すれば攻撃力の低いただのおもちゃだが私が装備するとチート装備に早変わり。さっきの豚も地竜も一撃粉砕らしい。



 これは確かに、戦闘終了のお知らせニャ・・・。

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