第二章 怠惰の聖女

第11話 ポンコツ妖精、大爆発ニャ

 エルフォールの街を出て、次の国を目指して歩き始めた・・・

はずだったのだけど、


 今、私の目の前には三メートルをゆうに超える巨体、

筋骨隆々、ムッキムキのボデ〜をこれ見よがしに見せつけながら、

二メートルはある魔剣をぶん回す、災害級魔物『オークキング』がいた。


「どういうことニャ!!?」


 怖い云々うんぬんの前に兎に角、気持ち悪い!

 ぶひゃぶひゃ言いながら、汗やら涎やらを撒き散らし、

太陽に反射してキラッキラしている豚がいる。


「いや〜、周辺サーチしてたら見つけちゃって、

放置してたらシゲルさんの国滅ぼされそうでしたので♪」


 サポちゃんは、それはもう楽しそうに目をキラキラさせながら観戦している。

 

 私のLVは昨日今日で82まで上がっていた。

 昨日倒した亜龍はLV100、シゲルはLV150程だった。

 この世界では8人パーティが最大で、LV100の魔物はLV100の人が8人でやっと倒せるレベルなのだ。


 対して、このオークキングだが・・・LV320・・・。

 ふざけてるのニャ・・・。

 確かに放っておけば確実に国が滅ぶからグッジョブなのだけど・・・。


「せめて、事前に言えニャぁぁぁ!!」


 サポちゃんはケラケラ笑っている。

 後で絶対に殴る!


「あっちいけニャ!!」


 私はニャンコ装備の出力をmaxにしてぶん殴る!

 しかし、攻撃はヌメっとした身体をぬるっと滑った。


「ヌメっとして、気持ち悪いニャあああああ!」


 亜龍をワンパンした攻撃だったが、

さすがにこのレベル差だと通用しない様だ。


 相手の魔剣による薙ぎ払いがクリーンヒットする。

 私は五メートルは吹っ飛ばされ転がる。


「目が回るのニャ〜・・・」


 痛くも痒くもないけど、これじゃ硬直状態だ。


「サポちゃん、何か方法を教えるニャ」


「エディット使えば楽勝ですが?」


「あれは極力使いたくないニャ」


「じゃあ、自分で考えるしかないですね♪」


 このポンコツ妖精め!妙にエディットを使わせようとするのが気になる。

 そうなると意地でも使いたくない。怪しいのニャ。

 ちなみに魔物に意志はなく、人を襲うシステムの様なものらしい。


 私はインベントリからモーニングスターを取り出し装備する。


「これなら触らないで済むニャ!」


 モーニングスターを振りかぶり、全力フルスイングが豚の頭に直撃する。


 そして・・・


 モーニングスターが砕け散った・・・。


「ああああぁぁ!!私のモーニングスターがぁ!!?」


 サポちゃんが悲鳴をあげていた。

 なんだ、気に入ってたのニャ?ちょっと申し訳なかった。


 豚はちょっとフラフラしている。

 さすがに、少しはダメージが入った様だけど、

まだ元気そうだニャぁ・・・。


「許さんです・・・。モーニングスターのかたき!!」


 お?なんかる気になったっぽい?

 壊れたのは、ほぼ私のせいだけど・・・。

 サポちゃんは何故か豚から距離を取る。

 そして、何やらモニョモニョと呪文の様なものを詠唱し出した。


「己が罪を数えろです!『アルテマ!!』」


 なにそれカッコいい。などと傍観していると目の前の豚が、

シャボン玉の様な七色のマーブル模様の球体に包まれる。


 そう・・・目の前で・・・。


「綺麗だニャぁ」


 などと呑気に眺めていると突如、


シャボン玉が大爆発を起こした!?


「にゃああああああ!?」


 爆発は周囲の森を薙ぎ倒し、地面を球体に抉って行く。


 巨大なキノコ雲が上がる。


・・・


 直撃を受けた豚は粉々になっていた。

 どうやら物理耐性が高く魔法に弱かった様だ。


 そして私はと言うと至近距離で巻き添えをくらい、数十メートルは吹っ飛ばされていた。


 サポちゃんは、透明の球体のバリアの様なもので身を守っている。

 便利だニャ!それ!!私にも使って欲しかった。


「あっはっはー♪木っ端微塵なのです!ざまーみろです〜♪」


 サポちゃんは両手を上げて高らかに笑っていた。


「私、思いっきり巻き込まれてるんニャけど?」


 砂まみれのなりながらクレームを言う。


「モーニングスターの仇です♪」


 確かに壊したのは私だったニャ・・・。


 しかし、凄い威力だった。

 上手くおだてて今後もお願いしたいのニャ。


「凄い魔法だったニャ」


「全属性複合オリジナル魔法『アルテマ』なのです♪

 あらゆる魔法中でも最強の威力を誇ります!」


 サポちゃんは自慢げだ。もう少し煽てよう。


「凄い綺麗な魔法だったニャ」


「でしょでしょ♪普通は三属性で精一杯の所を八属性混ぜる荒技なのです!」


 何やら凄い事をやっていたらしい。

 オリジナル魔法らしく、サポちゃん以外には使えないとか。

 あと、私のバグってる知力のおかげもあるとかなんとか言っていた。


「また見たいのニャ。強そうな奴が出たら是非とも見せて欲しいニャ♪」


「仕方ないですねぇ、更に改良を加えた『アルテマ』を見せてやるですよ♪」


 チョロいニャ。サポちゃんは上機嫌で次回を確約してくれた。


「モーニングスター、壊して悪かったニャ。次の国でもっといいやつを買うのニャ」


 壊した事を謝る。一応、サポちゃんのものだった訳だし。

 しかし、何故か鈍器はしっくりときた。剣よりも向いてるかも知れない。

 因みに、チェーンで繋がっているフレイルタイプではなく、

トゲトゲ球体が先端に着いたメイスタイプがサポちゃんのお気に入りらしい。

 今度はもっと丈夫なのが欲しいニャ。


「いいんですか!?確かにもうちょっと装飾があるのが欲しかったんです!

 あれも悪くなかったんですけどもっとトゲ感が欲しかったんですよねぇ♪」


 トゲ感ってなんニャ?


 何はともあれ、何とか丸く収まって無事寄り道は済んだ様だ。

 戦利品を回収して旅路に戻る。魔剣はレアドロップだったらしい。

 インベントリにしまっておいた。


 そして、私とサポちゃんのLVは250に爆上がりしていた。


・・・


 その数時間後・・・


「丁度、通り道にアースドラゴンの巣があったので突っ込んでみました♪」


 私はアースドラゴンの口に挟まれてガジガジされていた。



「だから・・・事前に言えにゃああああああ!」

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