第5話 チート増し増し、猫まっしぐら

 とりあえず、先刻聞いた国へ向かって歩き始めた私達。

 道中、私はサポちゃんから色々な話を聞いた。


魔物モンスターがいるのニャ?」


 どうやらこの世界には魔物がいるらしい。


「魔物は、ぶっちゃけマナの供給システムなんですよ。魔物の肉は食用になりますし、皮も有用です。更に魔石は凝縮されたマナで、電池の様な役割をします♪」


「また、ややこしい設定の話ニャ」


「だから、設定言うなしっ!」


 なんだかこのやり取りに早くも慣れてきた。

 病みつきになりそうだ。


 どうやらマナは無限らしく、魔物も無限湧き、街に近い程弱い。

 強い魔物ほど魔石のマナの含有量が多い。


 天候は一年を通して温暖。病気も基本はなく、植物も存分に育つ。

 スキルで道具も簡単に作れて、魔道具なるモノもあるらしい。


「ぬるゲーにゃ。寝てても国は発展しそうニャ」


 こんな環境でまともに機能しない国とか、もう滅べばいいニャ。


「基本、観測者は介入せずに人々に何とかして欲しいと思ってるらしいのですが・・・」


 サポちゃんは口を濁す。


「観測者は、一切なにもしないのかニャ?」


「教会で祈ると神託として、短いですが助言が出来るらしいですよ?」


 説教の一つでもしてやればいいのに。

 どうやら遠慮からなのか、あまり活用されていない様だ。


・・・


 街に近づくにつれて、人が見当たる様になってきた。


「結構、街の外に人がいるんだニャ」


 見回す範囲だけでも数人はいる。


「ツノ兎と三つ目鼠がメインで、スライムもいますが食用にならないのでハズレ扱いです。この街では千人くらいが狩猟をメインにして生活しているようですね♪」


 周辺を見渡すと兎や鼠が数匹と、透明なスイカ位の大きさの球体も数匹いる。

 ・・・いすぎじゃない?畑じゃん。魔物畑、取り放題。


「倒していいのかニャ?」


「いいですよぉ、魔石はお金も兼ねてますので集めとかないと野宿ですし」


 魔石がお金なのか。詳しく聞くと、どうやら魔石は複製出来ないらしい。

 逆に他のものだと簡単に複製出来てしまうからお金扱い。

 魔石同士は合成出来て、また魔石同士でマナが譲渡も出来る。

 含有マナは数値化されるので、キャッシュレス決済さながらだ。


「何をどうやったら、これで国がなり立たないのニャ?至れり尽くせりニャ」


 普通にしてれば、何不自由なく生活出来そうだ・・・。

 貨幣システムまで、世界が用意してくれている。

 この世界で問題を抱えている国なんて、よほどの事情があるのだろう・・・。


 あるよね?


「それを見に行くのが旅の目的ですねぇ♪どんなアホな国か楽しみです」


 サポちゃんは悪い顔で笑っている。

 この腹黒妖精は何を企んでいるのやら。


 とりあえず、目についた兎を攻撃してみた。

 すると私の手が兎に触れた瞬間・・・


 兎が爆散した。


「にゃあっ!!?」


 文字通り粉々だ・・・。身体中、返り血でべっとり。

 私は何が起こったのか分からず放心していた。


「あぁ〜、やっぱりこうなりましたか・・・」


 何か知っているな!直ぐ様サポちゃんを問いただす。


「どう言う事ニャ!?」


「観測者が用意したマスターの身体なんですが・・・異常なんです」


 また、あいつらの仕業か!


「異常・・・?」


「簡単に言うと最強です♪ステータスとは別の基本能力値が振り切ってます」


 努力次第で上昇する、言うなれば筋トレすれば上がる筋力の様なもの。

 それが人外通り越して、バグってるらしい。

 そこそこの敵なら素手で瞬殺できるかもとか・・・化け物の方が可愛いレベル・・・。


「全身凶器ニャ・・・力加減なんて出来るのかニャ・・・?」


 触れるだけで、爆散するとか怖すぎるニャ!


「さすがにこのままじゃ不味そうですねぇ・・・もしもし?

 あぁ・・・なるほど・・・ふむふむ」


 サポちゃんはみょんみょん言いながらアホ毛を揺らしている。

 何やら交信している。電波だニャ。異様に似合っている。

『電波妖精サポちゃん』売れなさそうニャ。


 待っている間、暇なので下らない妄想をしていた。


「不穏な電波を感じました!バカにしましたね!?」


 サポちゃんマジ電波・・・。


「気のせいニャ。ところで何を話してたのかニャ?相手は観測者ニャ?」


 適当に誤魔化して話を進める。


「ん?そうですね♪インベントリに便利な装備が入ってるそうですよ」


 チョロいニャ。


「インベントリって何にゃ?」


 サポちゃん先生の講座によると、所有者登録のされてないものは生き物以外何でも収納できて、耐久値も減らなくなる誰でも持ってる時間停止倉庫の事らしい。

 収納量はマナの数値の10分の一の立方メートル。

 マナが初期値の30でも四畳半ほどの空間に詰め放題。

 全員がトラックの荷台分くらい余裕で持ち運び・・・ぬるい・・・。

 ぬるゲー通り越して、全自動ニャ。これでなんで国が成り立たないのニャ・・・。


「ん?私のマナ、バグってるけど大丈夫ニャ?」


 自分のステータスをバグってると言わざるをえない虚しさよ・・・。

 ちゃんと使えるんだろうか?


「あぁ、あれ多すぎて表示出来ないだけらしいですよ?ちなみにマスターの

インベントリ、地球より大きいらしいです♪マジ人外っ!」


 サポちゃんはまた爆笑していた。

 もう、どうでもいいニャ・・・。


 インベントリを見ると、


*****

・にゃんこグローブ

・にゃんこブーツ

・にゃんこフード

******


「なんニャ?これ」


 ここでまた、サポちゃんの解説。

 グローブは攻撃力の調整。肉球のダイヤルを回すと0〜100%で調整出来る。

 ブーツはスピードの調整。フードは隠蔽機能付き。

 種族を自由に変えて相手に見せるとか。

 獣人族のままじゃ、この国では目立つらしい。


 ちなみに最初から来てたワンピースについて聞くと、

『どんな汚れもつかず、破れず、覗けない!YESロリータNOタッチ!』

 と言う解説が付いているらしい。 


 ダメだこいつら、早く何とかしニャいと・・・。


 それはさて置き、装備一式は便利そうだ。


「なんだ、やれば出来るじゃニャいか♪」


 私は装備して前言撤回する。


「このデザイン、なんとかならニャかったのかニャ・・・」


 デカいピンクの肉球が付いたファンシーで可愛い猫の手をモチーフにしたグローブとブーツ。そして猫耳付きゴーグル付きのフード・・・。


 なんのコスプレにゃ?


「観測者って殴れるのかニャ?」


 一度、殴って目を覚まさせてやる必要がありそうニャ。

 

「あまりののしると観測者が病みつきになって、もっと要求してきますよ?」


「廃人になればいいニャ・・・」


「観測者歓喜ですね♪」


 何はともあれ、手加減が出来る様になった私は魔物を狩りまくった。

 100匹は倒しただろうか?1匹で100円程度の価値らしいので1万円ほど稼いで街へ向かったのだった。

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