第一章 隷属の国

第4話 死んでなかったニャ

 そこは気持ちのいい草原だった。

 空気が澄んでいる。排気ガスの匂いがしない。空はずっと青く透き通っていた。

 太陽の様なモノは、三原色の光が少しズレて重なっている。

 雲は無い。様々な色の綿みたいものがふわふわと目の前を横切る。


「ニャあっ!」


 猫の時の癖で、思わず薄緑の綿に飛びついてしまった。

 しかし、私の攻撃は空を切りそれに触れる事はなかった。


「これなんニャ?」


 目の前をフワフワされるとムズムズする。


「精霊ですね。意志を持ったマナと言われています。

 マナは全ての物質の素で、世界はマナで満たされています♪」


 サポちゃんは自慢げに説明している。


「急にややこしい設定の話になったニャ」


「設定言うなしっ!」


 サポちゃんの鋭いツッコミが入った。

 いや、だってゲームみたいな世界だし・・・。


「とりあえず、人がいる所を目指すかニャぁ」


 そう言えば、結局なにをすればいいのか分からん。


「その前にまず、やる事があるでしょう!異世界転生と言えばあれですよっ♪

 さぁ、唱えるのです!声高らかに叫ぶのです!!」


 あぁ・・・あれかぁ。何だか期待されると急にやる気がなくなるニャ。

 でも、一応確認しとかないとだよなぁ。


「ステータスオープンにゃ!」


 なかば、投げやりの叫ぶ。


*********

ニャレットLV1 獣人族 ??歳


 マナ£€&※}[

 魔力40

 筋力40

 精神40

 防御$※&£^

 知力&※〆€

 器用40

 根源値$€〆


ユニークスキル

・悪食『あらゆるモノを食べられる』

・完全記憶『あらゆるモノを記録する』

・データベース『過去に知り得た知識を検索出来る』

・エディット『世界の理(ことわり)を書き換える』


我らがアイドル、ケモミミ獣人毒舌超絶美少女!

ぶっちゃけどうやっても死なないし、何でも出来るよ♪

もはや神っ!むしろ神以上っ!!

**********


・・・


 もう、どこからツッコんでいいか分からないニャ・・・。


「ステータスとスキルと製作者の頭がバグってるニャ・・・」


 つまり、全部バグってる。

 考える事をやめたい・・・。


「どれどれ?・・・ぷっ!なんですこれっ!?

 チート通り越してバグ扱いされてるじゃないですか!

 さすがマスター、略してサスター♪」


 サポちゃんはお腹を抱えて大爆笑していた・・・。


「略す意味が分からないニャ・・・。エディットってなんニャ?」


 他のは、前世の引き継ぎでなんとなく分かる。


「チートスキルを選ぶ時に、観測者に一番いいやつを

寄越よこせって言ったらくれました♪」


 世界の理を書き換えれたら、もう何でもありニャ・・・。


「一応、観測者の承認がいるらしいですけど、多分ザルですよ。

 どうせ、内容なんてろくに読まずに印鑑ポンっです♪」


 ダメ社長にゃ・・・。


「というか死なないってどう言うことニャ?」


 前世では一応死んだし、更に強化されしまった?


「正確に言うとマスターは前の世界で死んでないんですよね♪」


 ん?死んだよね?


「どゆことニャ?」


 地球が消滅してさっき死んだばかりのはず・・・。


「宇宙空間に放り出されて気絶してた所を回収されたらしいですよ?

 地球粉々でも生き残るとかマスターマジ人外!あ、猫でしたね♪」


 死んでなかったニャ・・・。

 サポちゃんは随分楽しそうだ・・・と言うか馬鹿にされてる気がする。


「もう、死ぬ方が難しいんじゃニャいか・・・?」


 地球消滅する隕石食らっても死なないとか、ヤバすぎる。


「かもですねぇ。まぁ、いいじゃないですか♪やりたい放題ですよ?

 どうします?」


 ・・・もうどうでもいいや。


「どうするも何も何をすればいいニャ?ちゃんとサポートしろニャ」


 結局、観測者は何をして欲しいんだ?


「観測者達はこの世界、と言うかこの世界にある国を、

なんとかして欲しいみたいですよ?」


 サポちゃんから話を聞くと、どうやらこの世界には8つの国と種族があるらしい。

 そのどれもが問題がありまくりらしく、それを何とかして欲しいとの事。


 実は、どの国も日本からの転移者によって作られた国らしい。

 好き放題やった挙句収集がつかなくなっているとか・・・。

 

 要は、転移者の尻拭いだ・・・。


「知らんニャ。自分達で何とかしろニャ」


 自業自得な予感しかしない。


「まぁ、別に義務でも何でもないみたいですし、

ペナルティもなければ、報酬もないみたいですよ?

 適当に遊ぶぐらいでいいんじゃないです?暇ですし♪」


 サポちゃんも適当だなぁ。でもその通りだし、気が合うな。


「確かに暇だし、ちょっと見に行ってみるかニャ」


 義務じゃないなら、異世界旅行も悪くない。

 ちょっと楽しみになってきた。


「まずは、近くのエルフの国からですね♪」


「エルフの国かぁ、どんな国ニャ?」


「人口1万人程の国で、8割が王族に隷属されてます♪

 あと2割の貴族が裕福な暮らしをしてますが貴族の半分は何もしてません!キリッ」


「腐ってるニャ!!」


 触りを聞いただけでも、腐敗臭しかしないニャ・・・。

 それ、見に行かないとダメかニャ・・・?

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