第3話 公平がいいニャ

『観測者』は気付けばいなくなっていて、

そこには30センチくらいの羽根の生えた少女がいた。

 栗色の髪に水色のドレス、赤い大きなリボンが特徴的だ。

 背中の半透明な4枚羽は淡く輝きを放っている。


 さっき言ってたサポートの妖精かな?


「どうもー♪サポート妖精ですー!」


 サポートの妖精だった。

 とりあえずご挨拶。


「宜しくニャ」


「宜しくですー♪とりあえず名前とか貰えます?」


「名前、ニャいの!?」


「今、生まれましたし。無いと不便なので寄越よこせです♪」


 口悪いなぁ・・・。昔、お世話になってた家の女の子を思い出す。

 あの子5歳だったけど・・・ちゃんとサポート出来るんだろうか?


「じゃあサポちゃんニャ」


 適当に付けた。


「適当すぎません?」


 バレた。


「スペシャル・アシスト・プログレッシブ・オペレーター。略してサポちゃんニャ」


 適当に付けた。


「なんだかカッコいいですね!じゃあそれでいいです♪」


 バレなかった。


「では早速サポートしてほしいのニャ。何すればいいか全然分からんニャ」


 ちゃんとサポートしてくれるんだろうか?


「まずはエディットでステータスとスキルの選択ですね。

 見た目のエディットはもう済んでるので」


 ちゃんとサポートしてくれた。なんだ、やれば出来る子。

 ところで、見た目は済んでる?私は視線を落とし、自分の手を見る。


「人間になってるニャ!?」


 そこには、少し小さく見える5本の指の付いた手があった。

 猫に慣れすぎてむしろ違和感を感じるが自由に動かせる。

 目線も少し高くなっている事に今更気付いた。


「鏡を用意しますね♪」


 目の前に鏡が現れた。そこには猫耳で小学生高学年くらいの身長の、

明るい茶髪の女の子がいた。ちょっと外はねのショートヘア。


「どうです?観測者の趣味丸出しの美少女ですよー。

 今から行く世界の基準でも、控えめに言っても超絶美少女です♪」


 正直言って猫の日々が長すぎて人間の見た目とかどうでもいい。

 と言うか観測者は暇なのか?暇なら手伝って欲しい。何するか知らんけど。


「どうでもいいニャ。と言うかこの語尾ニャんとかニャらニャいのかニャ?」


 私の意思に反して語尾が『ニャ』になる。


「それも観測者の趣味ですね。ある種の呪いです♪」


 サポちゃんは笑っている。あの観測者、もう敬うのやめるのニャ・・・。


「どうでもいいニャ。さっさとエディットとやらを済ませるニャ」


 話が進まないので色々諦める事にした。


************************

ステータスについて


ステータスはスキルを使用、習得する時に関係する能力値。


マナ 生命の源。初期ステータス値が寿命に関係する。

魔力 エネルギー干渉スキルの威力に影響。

筋力 肉体強化スキルに影響。

知力 思考加速などに影響。魔法威力も魔力の半分の効果で影響。

精神 精神干渉スキルに影響。

防御 防御スキルに影響。

器用 感知系スキル、生産系スキルに影響。


HP (ヒットポイント) マナ×10がHPとなり無くなると死ぬ。ダメージを受けると減少。

MP (マジックポイント) 魔力×10と知力×5を足した数値がMPとなる。

HP、MPはスキルを使用する際、消費する。


根源値=マナの初期ステータス能力値の3分の1が根源値になる。

    世界に干渉し奇跡を起越す可能性もある力の源。


ステータスはLVUPした際、初期ステータス値の10分の1が加算される。


 初期値:マナ30 魔力0 筋力0 精神0 防御0 知力10 器用10

 150p振分け

**************


「このエディットは、今から行く世界のみんなが出来るのニャ?」


「いえ?転移者のみですね。普通はランダムです。

 なのでこれもある種のチートです♪」


「んー。これって平等にならんのかニャ?」


「なぜです?色々個性も出来て便利ですよ?」


 私は疑問に思っていた。生まれながらに差がある世界。

 それは地球でもきっとあったのだろう。でもそれは必要なのだろうか?


 ホームレスのおっちゃんは、生まれながらに弱視だった。

 そのせいで人生が詰んだ。おっちゃんは、いつも仕方ないと笑っていた。


 自分の食べ物もギリギリなのに猫を助けて、ご飯を分けてくれて、

いつも猫に話しかけていた。おっちゃんは変わり者だった。


 だけど、話していた内容はとても素晴らしい話ばかりだった。

 それはネットのどこにも載っていない、

何が正しいかをひたすらに考え、悩み、最後にとても優しく全てを肯定した。


 平等が可能なら私は平等がいい。


「平等がいいニャ」


「既に世界にいる人は、そのままなのでこれから生まれる人がそうなりますが、

いいです?」


 出来るの!?


「出来るならそれがいいニャ」


「個性がなくなりません?」


「個性は、育てるものニャ。生まれながらの個性は必要ないニャ」


 生まれながらの個性、それは才能・・・

そして、抗いようのないかせだ。


「それに努力次第で能力は上がるニャ?」


「そうですね。ステータスはあくまで補助的に能力を強化するものなので、

公平でも努力次第で能力の差は出ます」


「なら、それがいいニャ」


 こうして、私のステータスは全て均等に、

そしてこれから生まれる人達も同様になる事になったらしい。


「そう言えば魔法の才能で、待遇が全然変わる国があるので大混乱になりそうですね♪」


「ニャ!?そう言う事は先に言うニャ!」


「まぁ、それはそれで問題になってましたから丁度いいです。

 行くのが楽しみになってきました♪」


 サポちゃんはケタケタと笑っていた。良く笑う子だ。

 でも、その方がいい。仲良く出来そうだ。

 気楽に行こう。好きな様にやろう。


 スキルも全部LV1で均等になった。これも努力次第で何とでもなる。

 これでいいのだ。


「まぁ、マスターは猫の時の能力があるので、そもそもチートですけどね」


 サポちゃんがサラッと重要な事を言った。


「ニャ!?あれはそのままなのかニャ!?」


「あれは、観測者よりもっと上位の存在から付与されたものなので、

どうしようもありませんよ?あって困るものじゃないし、むしろ超有用では?」


 まぁ、確かにあれがあればチートどころの騒ぎじゃない。

 公平なんて、どの口が言うのか・・・。


「まぁ、いいじゃないですか♪死なれても困りますし。

 あとチートも適当に選んどきますね♪」


 結局チートも付くのか・・・もう好きにして貰おう。


 生まれながらに持った能力。飛び抜けた才能。

 それはきっと、憧れであり、誰もが望む事。

 しかし、持たざる者にとって脅威であり、不平不満の対象。

 使い方を間違えれば沢山の人を不幸にする。

 

 それを世界が容認し、意志を持って采配すれば・・・

それは、抗いようのない不平等。


 公平性の無い采配は、諦めを誘発する。

 希望の無い存在を生む、絶望。


 前世では、神と言う不確定な存在がそれを行なっていたのだろうか?

 それはかろうじて、不確定であったが故に救いがあった。


 神に等しい存在がいるこの世界に置いて、

それは許されてはいけないと思った。


 結局チート増し増しなんだけどニャ・・・。どの口がニャ。

 まぁ、いいニャ。どうしようもないし、せいぜい正しく使う様に努力するニャ。

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