第412話 またもや復活! 毒親父
気が付けば4月もすでに後半に差し掛かってしまった。小説はおろか、エッセイさえもすでに2週間くらいご無沙汰してしまっている。
いや、実際には書こうとしたんだよ、ちょっとしたエピソードもあったし。でも、なんか上手く書けなくてボツにしちゃったんだよね。
毒親父も手術を終えて無事に帰ってきた。見舞いには2回ほど行ったな。手術前と手術後に1回ずつ。それも別に毒親父を見舞う為ではなくて、母親が車で毎日通うのがしんどそうだったから乗せて行ってやろうと思っただけである。
帰ってきてさっそくエクセルの使い方を聞いてきた。何やら今打ち込んだシート1をシート2に移して、シート1に古いデータを残したいらしい。それって単純に最初からシート2にシート1をコピペして打てば良かったんじゃね?
すでにシート1を書き換えているので、このまま上書き保存したら古いデータが消えてしまう。かと言ってこのまま保存しないで消したら今打ったデータが消えてしまう。毒親父は八方塞がりになって私にどうすれば良いか尋ねてきたのである。
毒親父はなぜかシートの事をステップと言う。ステップ1からステップ3にコピーするのはどうするんや? といった具合である。あんた、大昔、船乗りやってた時、海外で仕事してたんだろ? seetとstepの違いも分からんのか? やり方を教えても無駄なので、私が毒親父のやりたい事をヒアリングして、その通りに作ってやった。
たった2週間程度だったが、毒親父のいない日々は実に快適だった。余計な仕事も増えたが、それを差し引いても極端に負担は軽減された。しかし、これからはまた毒親父のいる日々に戻るのである……。
まぁ、自分に余裕のある時は、毒親父の嫌な言動も、体調が悪いから周囲に当たっているんだなと憐れむ事も出来るのだが、常にそういう態度を取られるとどうしてもイラッとしてしまう。
どういう訳か、私の周囲の人々は毒親父をとても心配している。あれほど虐げられている母ですら、手術後にしんどそうにしている毒親父を見ていると気が滅入ったそうだ。
私なんてずっとフラットな状態だった。手術前、どうなるかな? 大丈夫かな? とも思わない。これまで肝臓、胃、心臓と大手術を繰り広げていた毒親父が、今回に限って死んでしまうとは思えない。
今や胃は全摘出、肝臓は何度もがんを焼き、心臓は弁を取り替え、そして今回は前立腺を摘出である。もう内臓はすっかすかだ。
心臓の時なんて、手術前にケロッとした様子で、
「いったん心臓を停めて人工心臓に切り替えて、その間に弁を替えるんよ」
と、まるで部品交換のように語っていた。まぁ確かに部品交換ではあるのだが、あんた仮死状態になるんやで? なんでそんなに陽気なん?
実際、術後に人工呼吸器でエアを送られていたのを目の当たりにしたが、意識不明でなす術がないままエアが送られ、小刻みに身体が揺れるのを見ていると、不謹慎にもその光景があまりにもシュールで大笑いしそうになった。
その状況で笑いそうになる私も大概サイコパスだなと思ってしまうが、毒親父が無敵すぎてどうしようもない。それ以前にも死にかけた毒親父を見た事があるが、結局ちょっと身体が痛い程度の怪我で済んだし。
今となっては私が開けられる瓶の蓋も開けられなくなってしまったが、まだまだあと数年は無駄に元気で生きていそうである。長生きするのは構わんが、晩年を汚すような言動をしないように気を付けてくれたまえ。
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