第383話 みみっちい話
久々のパワハラ案件である。思い出すだけでムカムカしてくるのだが、エッセイのネタになれば少しは気が晴れるかもしれん。
今日は定時ギリギリに作業が入り、私は文句も言わず黙って残業をしていた。作業が終わって片づけていると、
「もう帰っても良いですよ」
と、教育係(今となってはただの同僚)が言ってきた。時計を見ると18時10分である。残業は15分刻みなので15分になったら帰ろうと思ってちょっとした雑用などをしたりしていると、「ちょっとお願いがあるんですけど」
と、なんだか神妙な言い方をしてきた。
以下、そいつの言い分。
・うちの職場は以前は残業が30分刻みだった。しかし、20分くらいになると10分待機して残業を付ける人が出てきたため、15分刻みにする代わりに待機はしないで終わったら退社するようにとお達しがあった。
・江良さん(当然仮名だ)を見ていると、どうも15分になるまで待機しているように見える(見える、じゃない。そうしているのだ)。また30分刻みに戻されたら困るからそういう事はしないで欲しい。
ふむふむ。あんたの話は分かった。ではこちらの言い分。
・どうして15分刻みと分かっているのに10分に帰れと言うのか? そしてその言い方が「帰って良いですよ」なのはどういうつもりなのか? せめて「本日は誠に申し訳ございませんが10分ほどただ働きと言う事でご了承頂けませんでしょうか?」と言え。いや、言っても了承せんがな。
・私が5分待機しているのが我慢ならないなら10分切り捨てろというそっちの言い分はそっちの2倍は納得できない。
・そもそもあんたは私を10分ただ働きさせて何のメリットがあるのか? こちらはデメリットしかないので納得のいく回答をよこせ。
そんな訳で久々にはらわたが煮えくり返っている。話だけは聞いておいたが、どうにも納得出来ないので明日、なるべく感情的にならずに話し合いたいと思う。
おそらくリーダーとか進捗管理だとか言われているうちに、自分がただの労働者だという事を忘れてしまったのだろう。以前からやりがい搾取されてるなぁと感じていたが、それを他人にまで強要するようになったら害でしかない。
5分やそこらの話でみみっちい、と思うかもしれないが、10分ただ働きを積み重ねれば1か月20日勤務としても3時間以上ただ働きさせられる事になるのだ。へらへら笑っていられるか!!
こちらの要望はそんなに無茶苦茶ではないと思う。働いた分は払え、これだけだ。切り捨てなんてせいぜい5分程度だろ。10分切り捨てろってのは横暴だ。
あれ? ちょこっと調べただけでこの残業算出方法が違法だって出てきたぞ。月のトータルが30分以上か以下かで切り上げ、切り捨てって法律はあるが、毎日の残業は1分単位で集計するってなってるじゃないか!
毎日の集計で15分以下を切り捨てるなんて無茶苦茶過ぎるわ。ついでに雇用契約書を調べてみたが残業が15分単位で切り捨てなんてどこにも記載されていなかった。
ふぅ……。私はただ、働いた分だけ貰えるならば黙って働くのだ。それさえも出来ないってどういう事なんだ? あんたらは泣き寝入りしたかもしれないが、私はそういう訳にはいかんぞ。
とはいえ、しょせんは副業である。本業である作家業が軌道に乗れば些末な問題だ。問題は本業がいつになったら軌道に乗るのかという事だが……。
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