第364話 副業の近況
月曜日に新しい人がやって来た。声は完全に男だが、見た目が中性的でどっちか判断が付きにくい。まさか本人に聞くわけにもいかない。
今回、二人の新人が三ヶ月程度でギブアップした教育係はお役御免となり、リーダーが教えることになった。しばらく様子を見たがどうやらやっぱり男性のようである。マスクしてると全く分からないな。何でそんなおかっぱみたいなヘアスタイルにしてるんだ? まぁ個人の自由だけどさ。
新人が入ってきたタイミングで私はリーダーの隣の席から背中合わせの反対側の席に移動することになった。これまで共有スペースを向いて座っていたのを壁に向かって座ることになったのである。
私にとってはその方がありがたい。共有スペースはミーティングに使われたりするので気が散るのだ。それでなくても働いてるのか遊んでいるのか良く分からない、デスクさえ与えられていない若い営業社員がちょろちょろしているのが目障りだったからね。
壁に向かって作業する方が黙々と出来て良い。机も広くなったし、電気スタンドもあるので環境はかなり良くなった。
どういう訳か私はパソコン使えないおっさんだと思われているようだ。どちらかと言えば使える方だと思うが、別にそう思われているなら勝手に思わせておけば良い。まぁマックはあまり得意ではないからその意味では正しいんだけどね。
私はこの職場でどんどん仕事を覚えていろんな事が出来るようになろうとは思っていない。ただただ黙々と作業をするだけの一作業員で良い。そもそも、そういう条件でこの職場にやって来たのである。
やれる事はやろうとは思うが、限界点を超えたらいつでも撤退するつもりだ。それは別に残業時間が長いとかそういう話ではなく、作業内容についてである。
今やっている仕事の質を上げ、他の人たちの手を煩わせる事無く出来るようになる努力はするが、今の仕事にプラスしてもっと煩雑な作業をさせられる様になったらパンクする可能性はある。
もちろん、私より後に入った人が私のやっている仕事をきちんと出来るようになって、私の稼動が減ってきたらプラスアルファで別の仕事を覚える努力はするつもりだが、今の仕事量そのままに新しい仕事を追加されても無理である。
繁忙期に入ってからは今の仕事だけでも四時間とか平気で残業になるのだ。この上、別の工程まで押し付けられたら日を跨ぐようになるのは目に見えている。
今思えば、ちょっと前まで楽にこなせてた時期があったのだから、そういう時に色々と教えていれば良かったのである。忙しくなってから慌てて教えようとしても間に合わないのだ。
新しい人は期間限定で、繁忙期だけやって来るらしい。ずぶの素人ではないようなのですぐに作業できるようになる……予定である。
果たして本当にこのメンバーで年末年始の繁忙期を乗り切れるのだろうか?
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