第35話 渋谷ABEMAS その1

 今日もMリーグに参加しているチームについて語ってみようと思う。

 

 Mリーグは藤田晋がチェアマンとなって始めた麻雀プロ団体の枠組みを超えたリーグ戦で、八つの企業が麻雀プロをドラフトで指名してチームを作り、一年間を通してリーグ戦を行っている。

 

 昨年、というかMリーグ発足以来三位しか獲った事のない渋谷ABEMASについて語ってみよう。このチームはチェアマンである藤田晋が監督をしている野球で言えば読売ジャイアンツのようなチームである。にも関らずこれまで四年間の成績は全て三位という今一歩弾け切らない惜しいチームとなっている。それでも毎年必ずファイナルに進出しているのだから実力は間違いなくある。麻雀という運が作用するゲームにおいて毎年三位を獲り続けるというのは実は凄い事なのである。

 

 これまで一度もファイナルシリーズに参加した事のないチームもある中で、毎回ファイナル進出を果たすという事がこのチームの強さを物語っている。

 現在のラインナップは多井隆晴、白鳥翔、松本吉弘、日向藍子の四人である。

 

 まずはドラフト一位指名されたRMU代表の多井隆晴である。おや? なんだ、RMUって? と思った人も多いだろう。これまでは何たら協会とか連盟とかだったのに急にRMUだし、しかも代表だし。

 まぁ私もその歴史は詳しくないだが、連盟の若手を中心に謀反を起こして発足された団体らしい。その団体の代表が多井である。だからといって連盟と仲が悪いかと言われるとそんな事もなく、連盟員である瀬戸熊とは今でも親友だと言っている。

 

 麻雀はとにかく強い。Mリーグで一番強いのは多井か堀だと言われている。初年度はレギュラーシーズン個人成績一位。それ以降も毎年プラス二百以上稼いでいる。

 その上で多井は麻雀界全体の事を考えて行動している。メディアに積極的に出るようにして、麻雀プロの知名度や地位を高める努力をしているのである。

 

 最近は麻雀プロもYouTube活動している人が増えたが、多井もたかちゃんねるというチャンネルを開設している。

 

 ポーカーフェイスの方がこういう勝負事には有利なはずなのだが、多井はかなり表情豊かで、上目遣いで同卓する三人の様子を窺ったり、思いがけない牌で鳴かれた時に驚いた表情をしたり、リーチ後に掴んで振込んでしまった時などに哀しげな表情を浮かべたり、とにかく顔がうるさいとまで言われる。だが、それがライトな層にはウケが良いので、その部分でも裾野を広げる活動をしていると言える。

 

 ドラフト二位で指名されたのは日本プロ麻雀連盟所属の白鳥翔である。嘘のような名前だが本名である。母親が息子に白鳥翔と名付けたいが為に白鳥さんという人を探し出して結婚したというのだ。そこに愛はあるんか? (大地真央風)

 

 現在は麻雀ハイブリッドなどと呼ばれて浮かれているが、以前の通り名は「供託泥棒」であった。と言うのも、自著で供託(前局までのリーチ棒など)がある時は全力で取りに行くべきだと語っていた事、そして実際に供託がある時にいつもより押し気味に打っていたからである。

 

 役満ボディと呼ばれる岡田に対し、自分はザンク(三九〇〇点)の男だと自虐している。結局、釣り合いが取れなかったのかすでに破局している。

 

 麻雀はかなり守備よりのバランス型である。直近で二連続ラスを引いてしまったが、それまでは連続ラスなし記録を伸ばし続けていた。

 

 東城りおがMリーグに参戦するまではヘアスタイルと色の変化で話題を独り占めにしていたが、高宮がライオンみたいな髪にしたり、園田が謎のリーゼントっぽいヘアにしたり、昨年度パイレーツを自由契約になった朝倉がアミバのコスプレしたりと、いつの間にかMリーグは髪型で話題作りをする文化が出来上がってしまった。

 

 その文化を作り上げたのは白鳥で間違いないだろう。インタビューで魔法少女がどうのと訳の分からない事を言っていて、ダークサイドに落ちそうになると黒っぽい髪で、調子が良くなると金髪に近づいていくと言うような「設定」を語っていた。

 

 初年度は三位のチームのメンバーとは思えないほど落ちぶれてしまったが、翌年からは本領を発揮し、特に二年目は奮起したのか多井よりも個人スコアを叩き出している。四暗刻単騎もあの伝説となった黒沢よりも先に和了している。しかし、その模様はCMにはなっていない。ただ、あのCMでごちゃごちゃ言っているのは実況の松島桃とプレイヤー解説の白鳥である。

 

 どうも王者チームというイメージで応援できないのだが、今年度も嫌われ者の役を買ってダントツでレギュラーシーズンを独走し続けている。

 アンチに出来る事といったら「どうせお前ら三位なんだろ?」と嫌味を言うくらいである。私は別にアンチではないのでそんな事は言わないが、今年は優勝候補なんて思わず、挑戦者の気持ちで頑張りますと言っていたので、ちょっとくらいは応援しても良いかな? なんて思っている。

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