第22話 パタリロ! と、跳んで埼玉

 カテゴリは少女漫画になるようだが私はパタリロ! が好きである。少女漫画とは言うもののギャグ漫画の要素が強いのであまり少女漫画っぽくない。

 魔夜峰央の代表作なのだが、近年は「跳んで埼玉」の方がメジャーになってしまったかもしれない。あまりにも不条理なギャグ漫画で、よくこの時代に映画化されたものだと感心するが、これは埼玉県が強者となった証であろう。

 当時なら目くじら立てて怒り狂ったかもしれない埼玉県民も、今となってはそんな時代もあったねと笑ってスルー出来るようになったのではなかろうか?

 

 さて、再びパタリロ! の話に戻るとしよう。先日、YouTubeの動画で東村アキコと言う少女漫画家が力説しているのを観た。東村アキコの知識の九十三パーセントはパタリロで覚えたと言っている。

 

 常春の国マリネラの国王である十歳のパタリロが主人公である。第一巻ではまだ王子なのだが、割と早いうちに国王が亡くなり、パタリロが王位を継承する。

 殿下と呼ばれているので間違えやすいが国王なのである。十歳で陛下と呼ばれるのは爺臭いから殿下と呼べというパタリロのこだわりで部下たちも殿下と呼ぶ。

 全体を通して基本的にBLの世界観なのだが、八十年代にここまで堂々とBLを描いていたと言うのは驚きである。

 FBIだのCIAだのKGBなどが出てくるのもこの作品の特徴で、スパイ映画顔負けのハードボイルドタッチの話も数多く描かれている。

 その他、ミステリー要素も多く、結構作中で人が死ぬ。名探偵パタちゃんとか発明家パタちゃんなどと、色々な顔を持つ。

 

 せっかくなので私のお気に入りの話を紹介しておこう。一番好きなのは果てなき旅路という作品である。五十三巻に収録されている話で、たった三十一ページで完結する話とは思えない壮大な話なのである。ぜひとも実際に読んでみて頂きたいと思う。

 ネタバレはしたくないのでざっくりと説明すると、マリネラの山の中のペンションが大銀河星団を旅するための中継基地となっており、たまたま基地に立ち寄っていた超人とそのペットに出くわしたパタリロたちは驚いてペットだけを連れて王宮に逃げ帰ってしまう。ペンションの管理人に扮していた基地の管理システムに事情を聞いたパタリロは超人にペットを返しに行くと言いだす。

 パワーユニットと呼ばれる装置によってたとえば千光年離れた場所に行く場合は千年の時を逆行して移動する。つまり、実質時間はゼロという事になる。

 ただし、移動する本人は主観的には千年の時を過ごす事になるので、とてつもない精神力が必要なのだという。その説明を聞いてなお、パタリロはペットを返しに行くと言い続ける。なぜそこまでして返しに行くというのか? それは実際に読んでもらえば分かると思う。

 

 もう一つは遺産過多という話だ。こちらは全く毛色の違う話なのだが、伏線とはこういうものかと思わされた作品である。突然、バンコラン少佐に多額の遺産が入る事になった。しかしバンコランは金持ちが嫌い。金に対しては非常にストイックである。そこでバンコランの愛人である美少年のマライヒがパタリロを訪ね、バンコランが遺産を受け取るように説得して欲しいと頼む。バンコランは相続を辞退する為に南米に飛ぶが、遺産を残した男の親戚たちの強欲さに怒りを覚え、受け取って寄付すると言い出す。地下室に閉じ込められて火を付けられたが、遺族の少年に助けられて逃げ出す。しかしパタリロだけは金持ちの家だからどこかに大金があるはずだと燃え盛る家の中を探し回る。そして……。

 

 発明家パタちゃんの話で言えば、四十三巻のワンス・アポンナ・日本が好きだ。弟子入りを希望する青年がやってきて、将来タイムマシンを作りたいんだと語る。パタリロは以前作ったタイムマシンを売ってやると言って、青年が持っていた二万円で売る。

 運転の仕方を教える為、過去の日本にタイムスリップしてみる事になったのだが、青年は重量百グラムオーバーしているのにそのまま出発してしまう。そのせいで軟着陸できるはずだったのに墜落に近い状態で到着する。何か壊してないかと調べると人を押し潰していた。ただの町人なら問題なかったが、身元を調べると平賀源内だった。パタリロは平賀源内の死体をタイムマシンにのせ、青年を身代わりに置いていく。この話も関係無さそうな序盤の話が最後の最後で繋がるパターンである。

 

 推理物の話も面白い物が沢山あるがキリが無いのでこの辺にしておこう。

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