第21話 ジョゼと虎と魚たちと芋たこなんきん

 小説の勉強のため、プライムビデオで色んな映画を観るようにしていた。いつだったか、もうすぐ無料期間が終了しますという中に「ジョゼと虎と魚たち」という作品があった。妻夫木聡演じる大学生と池脇千鶴演じる足の不自由な少女との恋愛ドラマである。池脇千鶴の関西弁がやけに印象に残る作品だった。無料の割には面白かったので、それからしばらくはもうすぐ終了の作品を何作か観るようになった。

 

 それを観た事も忘れかけていたある日、NHKの連続テレビ小説で芋たこなんきんの再放送が始まった。当時、最高齢の主演女優だった藤山直美(現在の最高齢は深津絵里)が話題となった作品で、とても面白かった。

 ふと、田辺聖子ってどんな作品を書いてるのかな? と気になった。母に尋ねると田辺聖子は知っているが何を書いたかは知らんと言う。

 

 その頃、母はスマホを買ったばかりだったので、

「そういう時はすぐにスマホで調べるんよ」

 と言って母に調べさせた。

「ええっと、ジョ、ジョ……、ジョゼと虎と……」

 母は出てきた作品名を読み始める。

「ジョゼ?! あれ、田辺聖子の作品なん?」

 どうせ作品名を聞いても分からないだろうと思っていたのに、思いもかけない作品名が飛び出してきて驚いてしまった。

 

 たまたまプライムビデオの無料期間が迫っていたから観ただけの作品である。しかも芋たこなんきんが再放送になっていなければ田辺聖子の事も興味を持たなかっただろうから、色んな偶然が重なって作品と作者が結びついたのである。

 

 昔の人だと思っていたらつい三年前までご存命だったようだ。芋たこなんきんにも最終回に登場してた。筒井康隆先生も出てたな。

 

 ジョセと虎と魚たちのストーリーについて、うろ覚えだが印象に残ったところを書いてみよう。中途半端な情報で全然違ってたらすまぬ。

 

 結構モテキャラの大学生が雀荘でバイトをしていて、雀荘で早朝に乳母車を押している老婆の話を耳にする。ある日その噂の老婆が坂の上から乳母車を追いかけてくる。

 下にいた青年が乳母車に近づくと、中には包丁を構えた足の不自由な少女が乗っている。青年が唖然としていると、少女が包丁で切りかかってくる。

 

 少女の娯楽は老婆が拾ってくる本だけだった。その中には教科書なども含まれている。教科書に挟まれてSMのエロ本が出てくる。おそらく教科書を捨てる際にこっそり混ぜて捨てたのだろう。ちょっとしたエピソードと思いきや、物語全編を通してずっと引っ張られるアイテムである。

 少女はジョゼと名乗る。好きな本の主人公の名前だそうだ。ところがその本は上巻しかなく、少女はその上巻だけを丸暗記するぐらい読んでいる。青年は必死になって古本屋などを探して下巻を手に入れる。

 

 老婆にもう来るなと言われ、そのまま疎遠になっていった。その後、大学の飲み会で後輩の中にSMのエロ本の持ち主を発見する。青年は忘れかけていたジョゼを思い出して後輩に八つ当たりする。

 その後、なんやかんやで老婆が死んでジョゼ一人で暮らしている事を知った青年は訪ねていく。そしてそのまま付き合う事になり、青年が荷物を持って引越してくる。

 しばらく付き合って、別れる事になった日、ジョゼは青年に一冊の本を渡す。

「餞別や」

 ジョゼが渡したのはあのSMのエロ本だった。「他のがええか?」

「いや、コレが良い」

 青年はそれを持ってジョゼの元を去る。その別れのシーンも淡々としている。その足で青年は元カノと合流するが、歩いている途中で泣き崩れる。

 最後のシーンではジョゼがものすごいスピードで電動車椅子で疾走して、一人で淡々と暮らす様子が描かれている。

 

 色々思い出して書こうと思ったら長くなったのでかなり端折った。障がい者との恋愛がテーマなのでもっと重苦しい内容かと思いきや全くそんな事は無く、淡々と生きる強いジョゼと、回りで勝手にドタバタしている他の人々という感じである。

 

 ネットで調べたら原作とは結構違っているようだ。せっかくなので原作も読んでみたいなと思う。図書館とかで調べてみようかな。

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