第16話 湧上ノ星屑

傲慢な人「まぁ責任を持って自分が最後まで

伝えるべきか…、」



「七つの罪、人類が残した最期の遺物、

それぞれ 傲慢、嫉妬、怠惰、色欲、暴食、

憤怒、強欲、

人の行いに付けられた罪の名前…

そして何故その七つが…」



シイナ「ちょっと待って、傲慢ってアナタの

名前じゃなくてアナタに当てはめられた

罪の名前の事なの!?」




傲慢な人「ん?最初に名前は無いって言った

じゃないか、自分みたいなのを傲慢だとも、」



シイナ「傲慢ってどういう意味なの?」



傲慢な人「自分勝手な人間かな。」




信じられない、今まで名前で呼んでおらず

ましてや自分勝手な人だと

連呼していたわけで…、




傲慢な人「そんなに気にしなくても

いいじゃないか、こうして本当のことを言わないのが傲慢さを物語ってる、名前としては

ピッタリだ。」




確かにその通りだけど、良くは無い。

人としてあるのなら名前は

なくてはならないものだ。


いつかのエルゼのように、

頭を悩ませながら傲慢な人の名前を考える。




傲慢な人「(今は強欲エルゼが強いのか…、)」


当然な事ではあるな、エルゼの役割とは

エルゼの名は得ることと、名前の無い人を指す。


無意識に自分で付けたとなると

やはり、ヒトには星屑私達

そういう風にあると認識されているようだ。




シイナ「う〜ーん、そうだなぁー、

傲慢……ごう、ゴウレム…」


「じゃあアナタはゴウレムね。」




ゴウレム「ゴウレムって…、」


そんな人造人間みたいな名前…、

罪の名前と零、それに無、

星がそう名付けたのか……、ダサい……。




そういえば灰白色の木にあったに、

同じ名前の付けられかたをした

ゴーレムがいたな…、確か……業霊亡ゴーレムだったか、



人の業が籠った物、言わゆる

恨み辛みを込めた呪物を土人形や鉄人形に

入れて人造的に幽霊を作る……、



人類様は何を思ってそんな物を作ったのか…、

作った結果 人類が月に移住する前に

滅んだ一つの要因とか…、

まぁ浪漫とユーモアはたっぷりだな。




シイナ「ごめん、話しを遮って、」





ゴウレム「仕方ない、それがエルゼの権能だからね、名前を付けずにはいられないんだよ

彼女。」




シイナ「権能?彼女?」




ゴウレム「しまった またやった、次の旅が

終わったら話すから今は流してくれ。」



どうやらまた何か失言したらしい。

これがうっかり……、

こちらの興味を引くだけ引いて

まだ話せないと言うのだから

本当に自分勝手なんだと実感する。


「すまない……だが権能については話そう、

話しを続けても構わないかい?」



その問いに頷くと再び七つの罪について話す

ゴウレム。




「そうだなー、権能について話すなら

まずは訂正しなければ…、」




シイナ「訂正?」





ゴウレム「私達は確かに人間だが

普通の人間じゃない。」




シイナ「それは私達が罪人だからって言うのを

言いたいの?」




ゴウレム「確かにそれもあるが…、いいかい

シイナ普通の人間はね、

時速50kmで砂をかいて進めないし、

一瞬で爪の硬さが鋼鉄並になったりしない

んだよ」




シイナ「何でクウレとカリム?」




ゴウレム「ひと目で普通じゃないと分かるのは

あの二人しかいないから……、」




ゴウレムから普通じゃないと

言われても、そうなんだと思うことくらいしか

出来ない。

普通の人がいてくれれば良いのだけど…、




シイナ「私達が普通じゃないのは権能が

あるから?」




ゴウレム「自分達を罪たらしめるため

与えられた力だからね、

これによってより本能的な今の私達は

星屑ヒトと言うより獣に近いだろうね。」




権能…つまり私達の特別な力、

捉えようによっては

私達を罪人として縛るための拘束具…、




ゴウレム「おかしな話しだろう?

七廻着海には知らざるは罪って言う決まりが

あってね、七度目まで進めるよう

強制させるための物なんだが、

私達は七つの罪になるために他の罪を

犯してはいけないんだ。」




無知である事を許さない…、なら始めから

私達に知識を与えるべきでは?

いやでも、全てを識るのは苦しいことだって

ゴウレムが言っているし、




ゴウレム「それに関しては旅をして行けば

分かるということで、旅が終わる頃には

儀式をさせる目的も見えてくるはずだ。」




いずれ全てを識るのなら、今は焦って

答えを求める必要も無いか…、

七廻着海の決まり、も知る機会があると

いいのだけど…。




ゴウレム「権能は本能的にするための力、

必然 当てはめられた罪と照応する

相性の良い力を与えられる。」



「例えばエルゼ、エルゼの罪は 強欲、

つまり際限が無い程欲張りなわけだが、

それに付随する権能は




シイナ「名前をつける?」



それだけ?権能、力と言うほど特別なものには

感じないように思う。


名前をつけるくらいなら私にもできる事だし、

それに…強欲と名前をつける事の相性?





ゴウレム「名前をつける、案外バカにできないものだぞ?名前は魂の表れ、また見えない物に概念を与える特別な力と言える。」





何故かは知らないけど、力と言うのは

もっと大袈裟なもので、当たり前のように

ポンと使える物では無いと感じる…、




ゴウレム「当たり前だからこそだよ、

全ての事象に力は宿り、全ての存在に

魔力は満ちている、君と自分がこうして

目を合し話しているだけでも、

立派に、正しく、そして魔力が働いている。」





全ての事象に力は宿り……、

全ての存在に魔力は満ちる、

それは私達 罪人だけでは無くて普通の人にも

特別と言える物があるということ?






ゴウレム「人はね、所有する物に名前を

付けることで自分の物と証明し、

また名前をつけて自分の所有物にするんだ、」



「エルゼのはそういった力、

名前を付けることで

、」





全てを自分の物に……、

なら最初の旅でエルゼに名前を付けられた

私はエルゼの所有物という事になる……、


儀式をさせるため…なんだろうな…、

エルゼの気持ちの裏で権能と言う力、

儀式の運営がされているんだ。




ゴウレム「エルゼには幾分かの言葉と、

知識欲に探究心が備わってる、

特に最初の旅では要となる人物だ、

そういう意味でもエルゼは強欲の名に

相応しい。」




「とまぁエルゼと強欲については

そのくらいかな、後は強欲の権能は

湧上ゆうじょう、際限なく湧き上がる力

という名前があるってことぐらいだ。」





権能についてはよく理解した、

エルゼや強欲という罪を知れた事も…、



シイナ「そう言えば話しを遮って、まだ

ゴウレムが傲慢の罪って事しか知らない。」



「ゴウレムの権能は何なの?」



ゴウレム「あぁそうか、その話しをしている

途中だった……、」


ゴウレム(退屈しのぎとは言え、ここまで話し

が長いとあの木に任せたくなってきたな…)


面倒くさく感じてきたのは

長く充てられたせいか?

これは……ルイーゼの権能か……………、

この辺りが潮時か…。



ゴウレム「ならシイナ、私の権能を話して

この話しを終えるとしよう。」



「分かった」






私とゴウレムの話しはあとちょっと、

ほんのちょっとだけ続く。











わたしは知らない、知らない事が多すぎる、

私は知っている、自分がとても欲張りで

それが罪だと知っている。






今日も今日とて砂漠を歩く。

あまり景色は変わらないけれど、

それでもいつも新しい一日がある。


目を凝らして見れば空の景色が昨日と違うことに気づいた、「今日は雲が少し多い」

こうして違いに気づけると、

なんだか空と対話しているようだ。




空と話せたら楽しいだろうな〜〜、

どうして空は青いんだろう?

そんなことを幾つも思いながら進む…、



私の欲は満たされて満たされない、

何故と不思議に思うことがあったとして

それを解決しても、

それ以上の不思議で埋め尽くされる、

一度は満たされ、またすぐに

心は何かを欲しって渇いてしまう。






そんな潤っては渇いてを繰り返す

私の心の中に、星から零れ落ちる一雫が……、


私の瞳に映るそれは、

砂漠の中 綺麗に輝く星屑だった。




輝きと共に私は砂漠の上を渡り歩いた、

私は欲張りだから、輝きを前にしても

他に目がくらんで私欲を満たしていた。


それでも、

この輝きを一生大切にしたい、そのためなら

自分の欲も捨てる、そんな風に

毎晩 星を眺めながら考えるようになった。




そんなある日の夜、イロナが私とシイナを

もっと知りたい、寄り添いたいと言った。



私は知っている、彼女の気持ちは純粋だ、

だけど彼女の意志とは別に

私に向ける思惑がその言葉にはある。



私はを捨てられない、

私は自分を捨てられない、


拒絶することはできない、

目を背くことはできない、

全うしなければいけない…、


その言葉は魔法の首輪、私を縛る拘束具、

気持ちはちょっぴり複雑だけど、

それでもやっぱり思ってしまう…、



その言葉が嬉しい。心の底からこう思う、


出逢ってくれてありがとう、

出逢えたことにありがとう。

シイナ、イロナ、二人が大好き。




私は知っている、罪を捨て 無くすこと

はできないと、

私は知っている、それでも向き合い

幸せを探すのだと。




その湧上は特別で、その友情は唯一で、

その罪には花の蜜、その宝には青き空。

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