第8話 二度目の罪
異様、異形と言えるその姿は
全身を震え上がらせ、寒気と恐怖を一瞬にして
呼び込む。
エルゼやイロナ、二人の脳裏に咄嗟に出た
物は、何かが終わってしまう
終わらせられてしまうという直感。
エルゼ「死ぬってどんな感じ何だろう?」
イロナ「わからないけど、死んじゃうかもしれないって気持ちはこう言う事を言うん
じゃない?」
目の前の存在はあまりにも本能的過ぎて、
生物と言うよりも、意思 或いは
本能そのものを見ているかのよう。
エルゼ「どうにかして逃げ………」
シイナを連れ直ぐ様 逃げようようと
していたその時それと目が合ってしまった。
「あ……、」
……死んでしまう、
もうダメだ、終わってしまう、
死ぬってど言うことだろう、
死んだらだうなるのだろう、それは楽しい事なのか、今恐怖しているのはどうしてだろう、
気になる、気になる、気になってしょうがない
。死を悟ったエルゼの頭の中は
恐怖に勝るほどの死に対する興味、疑問、
尽きることない好奇心に埋め尽くされていた。
カリム「あぁぁ…あ〜…、、、」
三人「「「!、!???」」」
それは三人にとって想定外の事、
襲われることを期待していた訳ではない
ただそうなるだろう、そんな予感から来る
張り詰めた気持ちを崩され呆気にとられる。
弱々しいうめき声を出しながら
虚ろな目でこちらに近づくカリム。
近付いたかと思うと別の方向を向きよろよろと
した足取りでその場を離れてしまう。
カリム「うぅぅあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!」
時々、思い出したかのように
雄叫びを上げては、
全身の力が抜ける様によろめいて
しまう、
その後ろ姿を自然と追う三人。
イロナ「エルゼはどう思う?昨日とは
様子が違うように見えるけど…、」
エルゼ「襲われるって思ってたけど
こっちの方が何か不気味だね…、」
そんな話しをしていると
目の前では歩く力もなくなったカリムが
横に倒れる。
いち早くカリムに近付いたシイナはその
様子を覗き込み、二人も襲われない事を
確認するとシイナの傍によって
力なく倒れたカリムの様子を見る。
シイナ「動かない……」
エルゼ「動かなくなっちゃったね、」
まだ微かに「あぁ、ぁ」と声を漏らしている
カリム、その虚ろな目は夢を見ているような
幻覚を見ているような
視界の先には無い別の物を捉え、手を伸ばし
掴もうとする。
伸ばされた手は力なく地面に落ち、
瞳の輝きも燃やし続けた身体の熱も砂漠に吹く
静かな風に吹かれて消えていった。
シイナ「カリム…?」
もう動かないカリムを不思議そうに見つめ
その身体に触れるシイナ。
シイナ「、!?!」
一瞬、触れたその手に少しだけ熱が通った
気がして即座に手を離す。
二人「「シイナ?どうかした?」」
二人に心配ないと首を振り伝える。
その後、動かなくなったカリムを
どうかしたら良いか判らず
そのままの状態にして旅を再開した三人。
日も暮れていつものように
夜の砂漠に日が昇るのを待つ。
…………、……………………。
くぅぅぅう……くぅぅぅううう、くぅう
腹の中で聞いた事の音が鳴る。
その音は腹の一部を占領して、くぅうと
声をだし、その声に誘導された手は
腹を抑えて摩り始める。
エルゼ「どうしたの?大丈夫シイナ?」
イロナ「どこか体調が悪いの?」
心配の言葉を投げかけてくれる二人、
いつもと変わらない筈の二人の声に違いを感
じる。
声を聞くと胸の奥に込み上げる何かを感じ
無性に身体を掻きむしりたくなる。
それを抑えるため必死に歯を食いしばり
うぅーうぅ〜、と唸り声を上げる。
イロナ「凄く苦しそうだけど……、」
エルゼ「シイナ辛い?苦しい?どこか悪い
なら早く休もう?」
介抱しようと
傍によるエルゼ。
シイナ「うぅぅぅあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
抑えていた物が溢れ出し
傍によるエルゼの元に向けられる。
パァン!!と差し伸ばした手は弾かれ
そのままエルゼ目掛けて突進するシイナ。
激しい突進により押し倒される
エルゼはシイナに両手を押さえつけられる
状態になっている。
エルゼ「シ イナ…?」
突然の行動と見たこともないシイナの表情に
唖然とする。
エルゼ「どうしたの?こ、こわいよシイナ…」
どうしていいか判らず言葉に詰まるエルゼは
シイナの反応を窺いながら
退いてもらえるよう考える。
イロナは間に入ってシイナにエルゼから
退くようお願いする。
イロナ「シイナ!エルゼから離れよ?」
シイナ「うっ、あ、うぅぅお腹が…あぁあぁ」
腹を押さえ唸り続けるシイナは
暴れ疲れて眠りに落ちたのか
カリムの様に突然力尽きて動かなくなった。
イロナ「大丈夫エルゼ?怪我とかしてない?」
エルゼ「うん大丈夫、それよりシイナの方が
心配なんだけど……」
イロナ「疲れて眠っちゃったみたいだね。」
エルゼ「本当にどうしたんだろう…、
お腹を押さえてた見たいだけど」
イロナ「怖くなかった?エルゼ」
エルゼ「シイナに対して怖いって言うのは
おかしな話しだけど……、……でも正直
クウレやカリムに会った時より
殺されちゃうかもって強く思った。」
それは明らかに旅する仲間へと向けられる
言葉とはかけ離れていて、あえて口にする
ことで、あってはならない事だと自分に
思わせ言い聞かせる。
先程のシイナの顔を思い返す…
別人のような顔立ちと振る舞い、けれど
紛れもなくシイナ本人で……、
イロナ「さっき見たいに突然なったり、
体調が悪くなったりするのはシイナだけだよね?私達は大丈夫なのかな?」
それはこれまで何度も見て思った疑問。
同じ
何か明確な違いがあるのかもしれない、
そんなふうに思う。
エルゼ「うーん、違いって何だろうね?
イロナと初めて会った時も、イロナは明らかにシイナより覚えるのが早かったし……、
私達には解らないこと、知らない事が
まだ沢山あるんだね。」
イロナ「そうだね。
私達これからもっと知っていけるのね」
エルゼ「うん、きっと…だって、今まででも
たくさん知る事があったんだもん。」
イロナ「ねぇエルゼ、私シイナだけじゃなくてあなたの事も もっと知りたい。」
エルゼ「私も。シイナとイロナ二人の事も、
他の景色や色んなものを知っていきたい。」
抱いた恐怖心も前向きな気持ちと未知の物への
興味と疑問で、明るい空気に変わる。
イロナ「たくさん知るために、もっと肌を寄せ合いましょう♪」
そう言ってイロナは近づいて直ぐ隣りに座った
かと思うと抱きついてきた。
エルゼ「ちょっと、!?わざわざそんな事しなくても……、」
慌てるように抱きつくイロナを引き剥がそうと
するエルゼ。
イロナ「えー〜?でもシイナは抱きついて
も嫌がらなかったし、こうやって肌を寄せ合うとポカポカしてドキドキするでしょ?」
エルゼ「確かに暖かいけど…でも…、それでも離れて〜〜、、、」
イロナ「お互い知っていこうって言ったのに?私、どうしてそんなにエルゼが嫌がるのか
不思議でとても気になるんだけど……?」
エルゼ「うぅ〜それは……」
イロナに抱きつかれるのは嫌では無い、
ただ近付いた時に香るイロナの匂いは魔法を
かけられるように瞼を重くし、
綺麗なその顔と瞳、肌を間近に感じると
温かい所へと連れて行かれる気がして……。
それは何故か良い事に感じるような、
良くないと感じるような……、
判断が出来なくなるほど不思議な感覚に
囚われる。
イロナ「エルゼ、胸に手を当ててみて。」
言われるまま自分とイロナの胸に手を
当ててみる。
(ドクンドクンドクン)
胸の鼓動が速い、
エルゼ「はぁはぁはぁ、」呼吸が荒くなり
自分の鼓動がさらに速くなる。
イロナ「エルゼ……」
エルゼ「っ、!!?!」
自分の手にイロナの手が触れただけで
心拍数が跳ね上がる。鼓動が止めて欲しいと
叫んでるみたいだ。
エルゼ「んっ!んー〜、、」
イロナの手はエルゼの胸や身体の下の方へと
伸ばされて……、!…………////ー、………………?!。……………………………………///、
暗闇の中、徐々に淡い光が視界を照らす……、
向こうにぼんやりと、肌色の二人が重なって
るのが見えた気がした。
その姿の二人を見て手を伸ばして見る。
けれどその手は届かない……………………、、
届きそうもない二人を見つめる、、、
何だか胸の奥の熱が自分の身を燃やしてしまいそう、熱い、熱い、熱い、、、熱い。
こんな熱さは感じたことが無い。
どうしてこんなにも内側がやけてしまいそう
なのだろう、
ダラダラ…くぅくぅくぅ、カリカリ、、、
そんな生温いものではない。
これは私だけにあるもの。
私だけのもの、
私、わたし、わたし、わたし!わたし!!わたし!
あぁ ああぁ ああああぁあ
やけてしまいそう、やけてしまう、早くその手を伸ばさなくちゃ、
その手を伸ばさなければ………………………、
夜が過ぎ、朝を迎えた。寝ていた体を起こし
いつものように歩きだす。
砂漠はいつもと変わらない、、
海もここ何日と変わらない静かな景色そのものだ、、、、本当に変わらない…変わら…ない?
本当にそうだろうか…いつもと何か違う気が
する。
突然感じる違和感に胸がざわつく、
改めて景色を見回して見る……………………、
変わらないのはこの静けさだけ、
真っ新な砂はまっ白に…、静かな海は霧に覆われた灰白色で晴れて澄み渡る青空と
不釣り合いな景色をしている。
シイナ「いつも静かだから違いに気づかなかったな。」
相変わらず景色は真っ新で殺風景、
けれどいつもとは何かが違う世界。
さっきまで確かにいつもと変わらないと感じていたはずなのに、
こんなにも寂しさに溢れた世界になったのだろう。
それとも自分が今まで気づかなかっただけで、
この世界はこんな寂しい色をしていたのかもしれない。
長いこと黙々と、砂浜を進む……………、
みるみる霧が立ち込め視界を覆っていき
足場を確認出来なくなっていく。
慎重に足を進めるが気がつけば足下には
濡れる感触があり、
波打ち際に入ったと思い反対方向へと
引き返す、しかし進んでも進んでも
足下は冷たく、ちゃぷちゃぷという音を聴覚が捉えている。
シイナ「進んでる気がしない…、」
何十分、何時間、一体どれだけ歩いたのだろう
下手をすればもう一日以上何も見えない霧の中を歩いてるかもしれない。
歩みを進める度、何があるか分からない
この瞬間に
期待と苛立ちが入り乱れる。
歩いている感覚はもう無い、歩く振動は胃の中を刺激して空腹を呼び起こす、くぅくぅなる音に
余計に苛立ってそんな自分に疲れてしまう。
疲れた……、期待に胸躍らせるこの気持ちは
本当だけど、今はもう何もしたく無い。
その場に座り込んで ただぼっーと霧の中を
見つめる。
何もないのはこんなにも苦痛だなんて
知らなかった、少し前までそれが当たり前
だったのに…………、
じっとしているのに耐えきれず
立ち上がろうとすると、「!?」
知らぬ間に見知らぬ人物が隣りに座っている
ことに気づく。
青い髪に横顔からうっすらと見える青い瞳が
霧の先を見つめている。
???「…………、」
謎の人物は一言も発せずただ隣りにいる。
シイナ「あなたは誰なの?」
声をかけるが返答はかえってこない、
青い瞳の人物は見つめる先に指をさして
一言「用が済んだらあそこに向かえ」とだけ
口にしてそれ以上は語らない。
用が済んだら?どういうことだろう…、
それは何を意図していて、
何に対しての言葉なのかを深く考える…………
…………、、、
こちらも深く考えるのに沈黙していると
青い瞳がこちらを向いて口を開く。
???「どうした?さっきみたいにしないのか?」
シイナ「さっき私がしてた事?」
???「そうか、自覚が無いのか、まぁそれも
後で気づくだろう。」
何かを知ってるような口ぶりで話す、
目の前の人物は私を他所に一人 納得しようと
している。
???「自分は君のように全部を欲してる訳じゃ
ないからね、今は退屈してる訳じゃないが…、」
「まぁ自分の元に来るならその時は
話し相手になってやろう。」
何一つ分からないまま話しが進んでいくが、
何か聞くなら口を開いてくれた今しかない。
シイナ「あなたは誰?何者なの?」
先程の問いを再び口にしてみる。
???「何者って、何者でもないよ。
自分は誰でもない名前のない
「そんな訳ない、みたいな顔をされても…
当然だろ?君だってエルゼが付けてくれるまで名前は無かっただろシイナ。」
エルゼ「どうしてそれを!?」
???「さぁね、自分はもう話す気はない。
自分が話さなくてもいずれ知る事だし…。」
「あと二回すれば分かるんじゃない?」
また訳の分からない事をいう青い瞳の人物。
どうして知っていることを全て話して
くれないのだろうか、
そもそも何をそんなに知っているというのだろうか。
分からないもどかしさが胸を焼くほど
カリカリさせる、あぁあぁ!!気付かないふりを
していたのに腹の音がうるさい!
この星屑人を知りたい、知ってる事
全て私も知りたい。
知りたい、痛い、うるさい、あぁ
あぁ あぁ あぁあぁあぁあぁああぁ…………
…………、
???「なんだ、やっぱり欲しかったんだ」
燃える熱に耐え切れず、頭の中の糸が切れるような感覚と共に意識が消えていく。
暗闇の中、身体中がこの上なく満たされるのを
感じる…………、、途絶えていた意識も
徐々に戻りスっと瞼を開けると
そこには白く
ふと見た瞬間、触れられずにはいられない
衝動におそわれ、この手が触れる。────
─────────────────────────────────────────────────
────────────────────
────────────────────────────────────────
頭の中をまっ白な線が通り過ぎて行く、
パラパラと分解され灰の粉になった後
この視界に色が付くまで
風と共に流れていく。
景色に色がついて砂漠の色がハッキリ見える
ようになると、あの白い木は何処かに消えて
いた。
あぁ見知った砂漠、何度も見た光景。
「おーーい!!ねぇ君ーーー!!」
「ちょっとー!?あれ?聞こえてる〜?」
そして聞こえるいつもの声。
シイナ「エルゼ、」
エルゼ「エルゼ?なにそれ?」
シイナ「え?」
けれどここはまだ
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