第3話 砂喰らいの星屑
化け物が勢いよく、砂を掘り上げては
その砂を口に運ぶのを繰り返し続けている。
一度は二人を目にするが、
すぐに目を逸らし通り過ぎる。
エルゼ「いっ一瞬食べられるかと思った。」
化け物は穴を作りながらその場を離れていく。
化け物の砂を喰らう姿を見てシイナは
エルゼの声を初めて
聞いた時の胸の奥の熱さを感じていた。
エルゼ「追いかけるの!?食べられちゃうかも
しれないよ!?」
気がつけばその足取りは、化け物の向かう方
へと足を運んでいる。
エルゼ「いいねいいね!私も気になる!
早く追いかけようー!」
急いで化け物の後を追いかける、
走りながらエルゼはこんなことを口にする。
エルゼ「化け物って呼ぶのもなんだし、
あの子に名前つけようか?」
シイナ「……!」
言葉は分からないが、いつも以上に
戸惑う発言をしたことに何となく肌で感じた
シイナ。
エルゼ「うーん、砂を食べる腹ぺこさん
だから……空腹…くうくう…クウ、」
「クウレ!あの子の名前はクウレにしよう!」
二人はクウレに追いついくが、二人の姿を
見て逃げるように砂の中へとクエレは消えて
いった。
エルゼ「あー逃げられちゃった、
追いかけたから食べられると
思ったのかなー?」
「だめだよーシイナー、私たちが穴を掘っても追いつけないよー。」
しゃがみこんで両手で砂をかくシイナに
静止させるようその手を握る。
エルゼ「また会えるかもしれないし、
新しいもの見つけにいこう!」
立ち上がり二人は再び旅の再開をする。
エルゼ「クウレは何で砂なんか食べてるん
だろうね?シイナは砂たべて美味しかった?」
シイナは言葉が分からない時の
困った顔ではなく、微妙な顔をしている。
エルゼ「美味しくないなら食べてる理由が
余計にわかんないなーー
でもなんだろう、クウレが食べてるのを見て
生き物らしい?っていうか、
人みたいだなって思ったんだよねー。」
その言葉を聞いて頷くような素振りを
見せるシイナ。
エルゼ「シイナ 今日はなんだかいっぱい
反応してくれるねー。」
「それだけ得る物があったってことかな?」
「私はシイナが反応してくれるの嬉しいよー」
握られている手がぶんぶんと大きく振られる。
それに応えるようにシイナも、
元気よく手を振りシイナの頬は
にこやかな表情をしており、
同じようにエルゼも笑みをこぼしている。
そんな二人の晴れやかな気持ちを
無視するように、空の雲行きは悪く、
涙を流す前のせつない顔をしている。
////////////////////////////////////
//////////////////
エルゼ「初めて見るねー雨、濡れると冷たいし、なんだか雲の色が寂しいなー。」
雨が降り始めてからは気持ちも少し
冷めたのか、いつもより落ち着いた様子の
エルゼ。
横のシイナは雨が食べられないかと、
上を向き口を開けながら前を進む。
エルゼ「そんなことしても食べられない
よー、あれ?でも貴重な水分?になるから
私もやった方が良いのかな?」
二人揃って雨の降る中、
大きく口を開けながら上を向いて
歩く。
エルゼ「こんなことしてたら風邪引いちゃうねー、どこかで雨宿りしたりできないかなー。」
風邪を引いてしまうことを心配するエルゼ。
雨が降り身体を濡らせばもちろん
風邪を引く可能性はあるが、
暑い昼の砂漠の上も、寒い夜の砂漠も
顔色一つ変えずに毎日おなじ服装で過ごし
ている。
「さっきの穴砂漠まで戻って穴の中で
雨宿りする?」
シイナの反応を覗うエルゼだったが、シイナも
エルゼの様子を覗っていた。
エルゼ「よく考えたら雨が降ったら
砂が崩れて、穴なくなっちゃうね。」
結局数時間 雨の降る中を歩き続け、
全身びしょ濡れになりながら進む。
エルゼ「あれ?あそこに見えるの建 物 ?」
二人の目線の先、建物と言うには風化し
崩れ過ぎている物がいくつか並んでいる。
エルゼ「うわぁ、ボロボロ!!でも隅によれば
雨宿りできそうだよー!」
シイナ「うわぁぁ!!」
また新しく見るものにシイナはエルゼ以上に
目を輝かせて声を発した。
エルゼ「うぉおおー!シイナが驚いてるー!!」
「今日はたくさん初めてが増えて、
この雨も恵みの雨だったみたい♪」
今日一番、エルゼは喜びの声をあげ
雨宿りする建物を一軒一軒見て回る。
数軒見終わって、そろそろ雨宿りしようかと
最後の建物を確認すると……、
二人「「…………!!」」
そこには原型の無い、何か得体の知れない
物が、端の隅に存在していた。
また新たに見る始めての物に、
興味の勝る二人は、不思議な物体に
慎重に近づき、動かないのを確認すると
それを見ながら話し始めた。
エルゼ「これなんだろう!?これも人かな!?」
シイナ「ヒト…?」
エルゼ「かな?でも私達とは全然違うって
思うんだけど、クウレとも違うよね?」
エルゼ「なんだろうこの白いの?
溶けてるやつは赤黒くて何か臭いけど…、」
液状のような固まっている様な、溶けて
落ちた物と、
固くて白い物の二つが一箇所に
隅の方に集まっている。
その物体を見てシイナはエルゼやクウレの時に
感じた胸の奥の熱さを感じた、そして
ふと頭によぎるクウレが砂を喰らう光景を
思い出し、手に取ったその赤黒い何かを
「むちゃ…くちゃくちゃ……」
口から喉元を通り、まるで胸の奥の光を
鎮める雫を垂らすように胃の中へと
落ちていく。
エルゼ「えぇ!!食べちゃたのシイナ!?」
「さすがにもうペッはできなよね…、
わたしは……臭くて食べられないなー。」
謎の物体から離れた建物の隅で
しばらく雨宿りしていると、
バタッ とシイナが倒れこんで動かなくなる。
エルゼ「シイナ!?どうしたのお腹壊しちゃった?」
心配するエルゼに覇気のない低い声で、
「うぁぁ………、」と口をこぼす
シイナ。
崩れるように溶け、落ちるように、
堕ちるように、 失意に変わってなくなって
いく、……肉も心も全てが堕落に侵されて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます