第2話



「 …………。」



「 …………。」



気まずい雰囲気が漂う。



私はもちろん、理壱さんの知り合いに会ったことなんて今までないし、向こうの男性も私の存在を知らなかった様子で。



「 あ、えーっと。どうも。東雲先生と同じ中学の渡辺 将司(まさし)です。えーっと……その、こいつ、今日の新入歓迎会で飲み過ぎちゃったみたいで……。」



……東雲先生。同じ中学の先生……。

理壱さん、中学校の先生なんだ。



思わず頬が緩みそうになったのをキュッと堪える。



「 そう、だったんですか。わざわざありがとうございます。」



「 それにしても驚きました。猫を飼ってるとは聞いてたんですが……まさか、それがこんな可愛らしい……えーっと……」



どうやら、理壱さんと私の関係性が気になっているらしい。

私自身も前代未聞の出来事で、対応マニュアルなんてものもないわけで。



私と理壱さんの関係。

嫁でもなければ、彼女でもなく、ましてや妹でもない。

ただの拾われの身。

他人。



改めてそう思うと、ズキンと胸が傷んだ。



「 あ、えと、愛芽。愛芽っていいます。」



その時だ。

渡辺さんの携帯が鳴り始めた。



「 あ、やば。嫁からです。遅いって催促ですね、これは。あはは。では、僕はこれで。」



そう言うと、渡辺さんはそそくさと帰っていってしまった。



そっと玄関で項垂れている理壱さんに近付く。



「 理壱さーん。おーい。理壱せんせー。こんなところで寝てたら風邪引きますよー。」



んんーっと小さく返事をする理壱さんが新鮮でクスリと笑った。



……他人、か。



……………



…………



………



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