神社にお参りに行ったけど、なんかちょっとだけ様子がおかしいような?

!~よたみてい書

初めまして、ご対面

「なんてこった」


 虹だ。


 青空に虹色の橋が出来上がっている。


 といっても、一部の箇所が晴れているだけで、周囲を見渡せば雲が浮かんでいる。


 雨雲のような灰色をしたものも少なくはない。


 ちなみに、インターネッツで調べると、参拝前で虹を見かけた場合、神様に歓迎されているらしかった。


 ただ情報が少ないし、反対の意味を唱えるモノもあるので、正確には分からない。


「専門家の人、カムヒア!」


 神社に到着し、鳥居の前で静止する。


 ちなみに、この神社に訪れるのは初めてだ。


 なにが在るのかは全くわからない。


 地図系アプリで予習はしてはいるけど、確実な情報は無かった。


 なにせ、大きいとは言えない神社だからね。


 といってもこじんまりした小さなものでもない。


 そして赤い鳥居は何基もある。


 というか、鳥居の単位がってのはインターネッツが無いと分からなかった。


 それから参道の脇を通って拝殿はいでんに向かう。


 参道の中央は神様が通る道なので、私たち愚かな人間は端を歩かなければいけない。


 神様優先!


 その途中、手水舎てみずやという神聖な水がためられている水場を見かけた。


 ここは是非自分の手を清めておきたい。


 というか手水舎を見かけたら必ず手を洗っている。


 のだけれど、お日様の光が宙をキラキラと輝かせていた。


 何本もの糸が陽光を反射させている。


 そう、蜘蛛の巣だ。


「うへぇ、自分の体を汚してまでは……」


 私の体の中で、清めたいと汚れたくない二つの気持ちが争っている。


 そして導き出された結論は、


「今回は無し!」


 そのまま拝殿に直行。


 ガラス戸が閉まっていたので横に開けていく。


 そして目の前には賽銭箱、おみくじが置かれた台、頭上には大きな真鍮しんちゅうの鈴。


 まずは鈴を鳴らして、神様に参拝客の私が来たことを知らせなくては。


 天井から垂れ下がっている縄を軽く掴み、揺する。


 カランコロン。


 次に二回頭を下げて、二回手の平を叩き合わせて音を出し、もう一回お辞儀をする。


 二礼二拍手一礼。


 そして財布をポケットから取り出し、小銭入れをパカっと開ける。


 小銭はいっぱい貯まっていた。


 キャッシュレスが浸透して便利な社会になっているのはいいけれど、対応した電子マネーがお店によってバラバラで実は不便な社会だ。


 ゆえに小銭が貯まる事態になっている。


「会社の利益より、消費者の利益というか、利便性を見てくれ!」


 小銭入れから一円玉を五枚ごえん、ごえんを取り出す。


 ちなみに、ご縁に関連した額であれば五円じゃなくてもいいらしい。


 五十円でも、五百円でも。


 某鬼のマナー講師の熟女が語っていた。

 

 そしてお賽銭箱の隙間に小銭を滑り込ませていき、両手を合わせて目をつむる。


「神様、初めまして。私は遠くとも言えず、近いとも言えない場所からやってまいりました、よく分からない存在です。私は今現在、インターネット上で創作物を作っています。もっというと、物語という小説的なものです。どうか、これらが――」


 私が神様に向かってお願い事をしていると、横の奥の社務所しゃむしょ、いや実家と半々だろうか、おばあちゃんが扉を開けて中に入ってきた。


 それから自転車を少しいじって、すぐに戻っていく。


 きっとぶつぶつ呟いていることが気になって確かめに来たのだろう。


 私でも様子を見に行く。


「カクヨムコンテスト8で何か作品を発表するために、執筆がはかどるように、神様どうか私の背中を押してくださいませ」


 願い事を終えたら、財布から百円玉を一枚、十円玉を八枚、五円玉を三枚、一円玉を五枚をまとめて放り込む。


 そして二百円のおみくじを奥底で埋もれている一枚を選んで引き抜く。


「君に決めたっ!」


 用事が終わったので帰るために参道に戻っていった。


 その途中で、社務所兼実家に立ち寄る。


 玄関付近に張り紙が貼ってあったので注視した。


【お札、お守りあります。申し訳ありませんが、御朱印はございません。ご用の方はインターホンを押してください】


 お札、ちょっと興味あるな。


 お守りはもっと興味あるな。


 でも、見本が置かれてないし、値段も分からない。


 うぅ、次に来たら買ってみよう。


 もやもやした気分を抱えながら家に向かう私。


 ちなみに、帰宅途中で突風に見舞われた。


 インターネッツによると、参拝後の風は、神様から応援されているらしい。


 といってもやはりこちらも情報が不足していて、確証が無い。


 ただ、向かい風で歩きづらかったので応援されている気はしなかった。


 また、前から吹かれる風は願いが叶ったことを教えてくれているらしいけど、何が叶ったのだろうか。


 帰宅後、おみくじを開ける。


 第二十七番 吉。


 そして縁起物の小物として、小さな金色のカエルが付いてきた。


 カエルは、福がカエル、お金がカエル、無事にカエル、悪い状況を良い方向にカエル、と語呂合わせ的な効果があるらしい。


 つまり商売繁盛、金運、交通安全のご利益。


「私はベッドにひっくりカエル」


 そういえば、武蔵野坐令和神社もインターネット越しに参拝している。


 神様同士でどっちが面倒みるか争ってたりしないだろうか。


 心配だ。


「協力して全面バックアップの方向でお願いします」


 遠くに向けて小さな祈祷を捧げる。

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