結婚指輪の重み~義姉の優ちゃん

春風秋雄

家に帰ると、いつも義姉の優ちゃんがいる

「ただいまあ。おー、また優ちゃん来てくれてたのか」

「健司さん、おかえりなさい。もう少しで夕飯できるからね」

「ありがとう。いつも助かるよ」

俺は須藤健司。35歳の普通の会社員だ。俺には4歳の娘「百合香」がいる。妻の香奈は2年前に白血病でこの世を去った。俺が優ちゃんと呼んでいる小林優奈は香奈のお姉さんだ。つまり俺の義姉ということになる。義姉といっても、年は俺より2つ下の33歳。だから「お義姉さん」とは呼びづらく、優ちゃんと呼んでいる。優ちゃんは俺が突然ひとりで2歳の百合香を育てなければならなくなったのを、見るに見かねて、度々手伝いに来てくれている。優ちゃんも結婚をしているが、子供はいなく、旦那さんも出張や残業が多いらしく、車で20分程度の距離に住んでいるので、気軽に来てくれているので助かる。

「このところ毎日のように来てくれてるけど、家の方は大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。このところ旦那は毎日接待で午前さんだよ。ひとりで晩御飯食べてもつまらないし、百合香ちゃんと一緒に食べる方が楽しいからね」

「孝一さん、忙しいんだね」

「どうだろうね。外に女でも作ってるんじゃないの」

「そんなことないでしょ。孝一さんはまじめな人だから、浮気なんかできそうにないもの」

優ちゃんの旦那さんは俺よりひとつ年上の商社マンだ。

「そういう健司さんはどうなの?そろそろ再婚とか考えてもいいんじゃないの?」

「まったく考えてないなあ。今は百合香の世話で、遊ぶ暇もないから出会いがないというのもあるけど、百合香が新しいお母さんに馴染んでくれるかどうかが心配だもの。この子はけっこう人見知りする方だからね。優ちゃんに懐いているのは奇跡だよ」

「そうなんだ。私と香奈は顔もそれほど似てないし、性格もかなり違うのに、よく懐いてくれたね」

「物心がつく頃から世話してくれてたからね。百合香は優ちゃんが大好きなんだよ」

「そうだよ。ユリカは優ちゃんが大好きだよ」

リビングで人形と遊びながら二人の会話を聞いていた百合香がそういう。娘の百合香も俺をマネして優奈ちゃんのことを優ちゃんと呼ぶ。

3人で食卓を囲んで食べていると、香奈には申し訳ないが、これが本当の家族ではないかと錯覚してしまう。できることであれば、優ちゃんが百合香のお母さんになってほしいと思うが、既婚者である優ちゃんにはそれは望めない。

俺ひとりで百合香を育てることになったとき、知り合いの紹介でヘルパーを頼んでいた。朝、保育園へ私が百合香を送っていき、夕方ヘルパーさんに迎えに行ってもらい、ヘルパーさんは夕飯の準備をして私が帰宅すると仕事を切り上げてもらう。40代後半の女性で、とてもよくしてもらっている。俺は普段は6時半くらいには帰宅できるが、たまに仕事の関係で8時近くになるときはヘルパーさんに連絡して、その時間までいてもらうようにしている。優ちゃんがうちへ来るときは、ヘルパーさんが百合香を家に連れて帰った頃を見計らって来ているようだ。優ちゃんが来ると、ヘルパーさんはあとのことは優ちゃんに任せて仕事を切り上げているようだ。ヘルパーさんの作る料理は、決してまずくはないのだが、どうも俺の好みの味とは違っていて馴染めなかったが、優ちゃんの作る料理は、味付が香奈と似ているので、俺は優ちゃんが作る料理が好きだ。百合香も優ちゃんが作る料理の方が好みのようだ。


今日の優ちゃんは9時近くになっても帰る気配がないので、

「優ちゃん、もう9時になるよ。帰らなくていいの?」

と聞くと、優ちゃんの代わりに百合香が

「優ちゃん、今日はお泊りしてくれるんだって」

とうれしそうにこたえた。

「そうなの?家は大丈夫なの?」

「うん、今日は旦那出張だから、いつも百合香ちゃんに一緒に寝ようと言われてたから、今日は泊まろうかなと思って」

「じゃあ、悪いけど優ちゃんは百合香と布団で寝てあげてくれるかな。俺はリビングのソファーで寝るから」

「えー、なんで?3人で川の字になって寝ればいいじゃない。香奈がいたときは、そうやって寝てたんでしょ?」

「そうだけど、いいの?」

「全然いいよ。それの方が百合香ちゃんもうれしいでしょう?」

「うん、ユリカ、3人で寝たい」

俺は孝一さんに申し訳ないなと思いながらも、その提案を承諾した。

「じゃあ、百合香、お風呂入ろうか?」

「うん、優ちゃんも一緒にはいろう!」

「優ちゃんと一緒に入りたいの?だったら、先に二人で入ってくる?」

「二人じゃない。優ちゃんと、パパと、ユリカの3人で入るの」

「ダメだよ。パパと優ちゃんは一緒に入れないから、どちらと一緒に入るか決めてよ」

「そんなのイヤだ。3人で入る!」

「そんなワガママ言ったら、今日はお風呂なしにするよ」

「イヤだ!」

と言って百合香は泣き出してしまった。すると優ちゃんが

「いいよ。3人で入ろ!私は準備して少し後から入るから、先に百合香ちゃんはパパと入って待ってて」

「うん!わかった。絶対後から来てよ」

「大丈夫だよ。ちゃんと待っててね」

俺はいいのか?大丈夫なのか?と優ちゃんを見たが、優ちゃんは「まかせて」という顔をして笑っていた。


俺と百合香が先に入り、百合香の体と頭を洗ってやり、湯舟につかっていると、脱衣場のドアが開く音がし、優ちゃんの気配がした。

「健司さん、入っていい?」

俺はドキドキしながら「いいよ」と答えた。

浴室のドアが開き、優ちゃんが入ってきた。優ちゃんは香奈のビキニの水着を着ていた。

百合香は大はしゃぎだった。

「えへへ、香奈の水着を借りちゃった」

「よくそんなのを見つけたね」

「健司さんは私が裸で入ってくると期待してただろうけど、残念だったね」

「いやいや、裸で入ってきたらどうしようと思っていたから、安心したよ」

「でも、香奈の水着、ちょっと小さいんだよね」

香奈の胸はそれほど大きくなかったが、優ちゃんは豊満な胸をしていて、水着からおっぱいがはみ出していて、目のやり場に困った。

うちの風呂の浴槽は大きめなので、3人で湯舟につかっても余裕だった。百合香は優ちゃんとアヒルのおもちゃで遊んで楽しそうだった。優ちゃんの左手の薬指には指輪が光っていた。

「健司さん、体は洗ったの?」

「いや、まだ。優ちゃんは水着のままじゃ洗えないから、あとで入りなおす?」

「私は家でシャワーを浴びてきたから大丈夫だよ」

「そうか、そしたら優ちゃん、先に百合香と一緒にあがって、百合香のパジャマを着せてあげてくれないかな」

「ひょっとして健司さん、私の水着姿を見て興奮して、立ち上がれない状態?」

図星だった。俺は恥ずかしさから「いいから、早くあがって」と追い立てた。


俺が風呂からあがって、リビングで缶ビールを1本飲み干してから寝室へ行くと、百合香はぐっすり寝ていた。その横で香奈のパジャマを着た優ちゃんは百合香の顔を見ながら

「ぐっすり寝ているよ。本当にかわいいね」

と言った。

「今日はありがとうね」

俺が百合香を挟んだ反対側の布団に入りながらそう言うと、

「私の水着姿を見た興奮はおさまった?」

「何言ってんだよ」

「ねえ、遊ぶ暇もないなら、そっちの処理はどうしてるの?」

とんでもない質問がきて、俺はドギマギしたが、

「男ならそれなりに処理の仕方は知っているから」

とこたえた。

「今日は私が手伝ってあげようか?」

「え?手伝うって?」

「一応旦那がいるから、一線は越えられないけど、手でしてあげるくらいならいいよ」

その言葉を聞いただけで、俺の股間は一瞬で興奮状態になってしまった。しかし、相手は既婚者なのだから、ここは冷静になるしかない。

「孝一さんに悪いから遠慮しておくよ。少しでもそんなことをしたら、歯止めがきかなくなってしまいそうで怖いから」

「そっか。残念。健司さんのアレはどんなのか見たかったのに。じゃあ、もう寝るね。おやすみ」

と言って、優ちゃんはこちらに背を向けてしまった。

「おやすみ」

俺は上を向いたまま、そうこたえた。

しばらくして、優ちゃんは背中を向けたままつぶやいた。

「私ね、結婚してなかったら、百合香ちゃんのお母さんに立候補していたと思う」

その言葉には色々な意味が含まれているのだろうなと思った。私も素直につぶやき返した。

「俺も、優ちゃんが結婚してなかったら、百合香のお母さんになってくれと頼んでいたと思う」

そう言うと、優ちゃんはこっちに向き直り、

「それ本心?」

と聞いた。

「本心だよ。お世辞でも何でもなく、本心だよ」

「でも、それは百合香ちゃんのお母さんにということで、健司さんの奥さんにという意図ではないよね?」

「俺にとって、それは同義語なんだけどね。わかりやすく言えば、俺としては、奥さんになって欲しい女性の中から、百合香のお母さんを選ぶという順番かな」

それを聞いて優ちゃんは「ふーん、そうなんだ」と言ったきり、またこちらに背中を向け、その後は一言もしゃべらなかった。

俺も何も言わず、じっと天井を見つめながら色々考え事をしていたが、いつの間にか眠っていた。


その後、何度か優ちゃんは手伝いに来てくれたが、俺が帰宅すると

「じゃあ、私は帰るね。百合香ちゃん、またね!」

と言って帰ってしまう。そして、うちに来る頻度もかなり減っていた。まるで、俺を避けているようだった。

3ヶ月くらいしたある日、その日も優ちゃんは来てくれたが、久しぶりに一緒に食卓についてくれた。食卓について驚いたのは、ワインが置いてあったことだ。

「ワインなんて、どうしたの?何かあった?」

「私だって飲みたい時はあるのよ。たまにはいいじゃない」

と言って俺のグラスにワインをついでくれた。

百合香は久しぶりの3人での食事で楽しそうだった。

「パパ、優ちゃんね、今日はお泊りしてくれるんだって」

「そうなの?最近は早めに帰ってたけど、家は大丈夫なの?」

「大丈夫。ちょっと色々あったけど、もう大丈夫だから」

そうか、優ちゃんも色々あったんだ。そんな中でも手伝いに来てくれてたんだと、心の中で感謝した。


食後、百合香のママゴトに付き合い、3人で遊んだあと、お風呂に入る事になった。また百合香が「この前みたいに3人で入りたい」というと優ちゃんは

「いいよ。また3人で入ろう」

と言って、準備にかかった。

前回同様、俺と百合香が先に入り、少ししてから優ちゃんが入ってくることになった。2回目ともなると、俺も少しは落ち着いた気分で湯舟で待っていられたが、あの水着からはみ出たオッパイを思い出すと興奮しそうでドキドキした。頃合を見計らったように優ちゃんが

「入っていい?」

と声をかけてきたので

「大丈夫だよ。いいよ」

とこたえると、百合香もマネして「いいよ」とこたえた。

浴室のドアが開いて優ちゃんが入ってきた。そしたら、なんと、優ちゃんは水着を着てなかった。優ちゃんは素っ裸で浴室に入ってきた。

「優ちゃん!何で?水着は?」

「えへへ、水着はやめた」

かけ湯をして湯舟に入ってくる優ちゃんを俺は直視できなかった。百合香は大はしゃぎだ。

前回同様、優ちゃんは百合香とアヒルのおもちゃで遊んでいる。俺はそちらを向かないようにして湯舟につかっていた。百合香がしきりにパパも一緒に遊ぼうと、二人の方を向かせようとするが、俺はあいまいな返事をして、そちらを向かないようにした。長時間お湯につかっていたのにくわえ、思わぬ展開で、すっかりのぼせそうになり、

「優ちゃん、そろそろ百合香を連れてあがってくれないかな」

というと、

「あれ、健司さん、顔真っ赤じゃない?のぼせた?」

「うん、ちょっとのぼせてきた」

「私の裸にすっかりのぼせたんだね。ひょっとして今ギンギン?」

百合香が「ギンギンってなに?」としきりに聞いている。

「いいから、頼む、あがってくれ」

と言って、何とか追い立てた。


風呂上りのビールは飲む気になれず、冷蔵庫からペットボトルの水を取り出すと、がぶ飲みをした。しばらくリビングのソファーにもたれ、体をさまし、落ち着いてから寝室へ向かった。


寝室へ入ると、百合香はスヤスヤ寝ていた。何も言わず自分の布団に入ると優ちゃんが

「さすがに今日は私の裸を見て、まだ興奮がさめないでしょう?」

とからかうように言った。

「びっくりしたよ。てっきり水着を着て入ってくると思ってたから」

「だって、香奈の水着小さいんだもん」

そう言ってから、優ちゃんはおもむろに立ち上がった。てっきりトイレにでも行くのかと思ったら、足元を回って、私の布団に滑り込んで来た。

「優ちゃん、だめだよ。孝一さんに悪いよ」

と言うと、優ちゃんは大きく開いた左の手の甲を私の目の前に突き出した。そこに指輪はなかった。

「じゃーん!私、離婚してきました」

「えー!離婚したの?いつ?」

「正式に離婚届を出したのは今日。ずっと前から、あいつが浮気してたのはわかっていたから、弁護士に相談したの。間違いなく慰謝料は取れるから、興信所に依頼して証拠を集めなさいと言われて、先月あいつに証拠を突きつけて離婚請求したの。慰謝料と財産分与の金額で少しもめたけど、やっと決着ついた」

「そうか、そんなことになっていたんだ。それで、今はどこに住んでいるの?」

「実家にいる。今日も実家から来たんだよ」

「そうなの?実家には何て言って来たの?」

「そのまんま。百合香ちゃんのところに泊まってきますって言ってきた」

ご両親はどう思っているのだろうと、俺は少し不安になった。

「それでね、百合香ちゃんのママになれるよう頼んでくるからと言ったら、お父さんも、お母さんも、喜んでね、頑張っておいでって言ってくれた」

「うーん、そうか」

「うーん、そうかじゃないよ。どうなの?私を百合香ちゃんのお母さんにしてくれるの?」

「香奈はどう思うかな。自分のお姉さんが百合香のお母さんになること」

「それは大丈夫。私、香奈に頼まれてたんだ。もう長く生きられないと悟ったんだろうね。私に何かあったら百合香のことお願いって。お姉ちゃんが結婚してなかったら百合香のお母さんになってと頼めたのにねって」

「香奈がそんなこと言ってたのか」

「だから、順序だてて聞くよ。まず、私を健司さんの奥さんにしてくれますか?」

「はい」

「よろしい。では、私を百合香ちゃんのお母さんにしてくれますか?」

「よろこんで」

「やったー!離婚した日に再婚が決まっちゃった!」

「なんか、思わぬ展開だなあ。またご両親に挨拶に行かなければいけないなあ。それから・・・」

「ねえ」

「なに?」

「もう話はいいから。そろそろ私のパジャマを脱がそうとは思わないの?ここはこんなにギンギンになっているくせに」

そう言って優ちゃんは俺のギンギンのものを握ってきた。

パジャマをはだけると、さっき見たばかりの、豊満なオッパイが現れた。


優ちゃんは、百合香が目を覚まさないよう

声を押し殺しながら、新しい家族になった

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