記録7 魔法使い レイン


 あの時は危なかった。

 もし彼女が助けてくれなかったら俺たちはやられていたに違いない。

 というかヒースの奴なに先制攻撃仕掛けてんだ、話し合いでどうにかなる流れあったんじゃないのか。 まあ結局襲われることに変わりはないけど。

 それにしてもなんでヒースは彼女に自分は転生者だって明かさなかったんだろうか、本人からは秘密にしてくれって言われたし別に言っても言わなくてもどうでもいいから秘密にしとくか。



 建物に入った自分たちは無事奴らから逃げ切ることができた。


 た……助かった。 


「まさかあんなピンチになるとはなぁー、まあいいやありがとう助かったよ」


 絶対分かってたろお前……とりあえず俺からも言わせてくれ、助けてくれてありがとう。


 自分たちを助けてくれた少女にお礼を言う。


「いいよ別に、助けるのは当たり前のことだから」


 少女はそう言い微笑みをかけた。


「そうだ、自己紹介していいかな? 私は『シスメ・レイン』レインって呼んで」


「『レン・ヒース』ヒースでいい」


 俺は『アルス・リーフ』気安くリーフでいいよ。


 レインは自己紹介をしたため自分たちも紹介する。

 

「ところで二人はなんでこの国にきたの?」


 俺たちは『イオクニ』に向かう途中だったんだがヒースの奴がこの国に行くって言って、そしたら霧に巻き込まれてここに来たって感じだ。 レインさんはどうしてここに?


「さん付けはいいよ。 私は『イオクニ』の23番ギルド『エリュシデータ』の調査員をしてて今異常事態が発生している『人形の国』の調査をするためにここに来たの」


「ほかの奴はどうした、流石に君一人で調査に来たわけじゃないだろ」


「えっとそれが……途中ではぐれちゃって」


「はぁ……魔法使いが仲間とはぐれて単独になるのは致命傷だぞ」


「はいほんと……自分でも思ってます」

 

 呆れたように言うヒースにレインは反省する。


 というかなんでヒースはレインが魔法使いってわかったんだろうか、いやまあ見た目で分かるか。

 紅い長髪で優しさを出している顔つきをしており年は自分たちと同い年ぐらいだろう、そして服装は彼女が所属しているギルドの制服だろう胸の所にマークがついていた。

 まあその前に手に持っている杖で大体わかるが、体も細いし軽い服装で十分に確信できる。


 で、ここからどうするんだヒース?


 自己紹介も終えたのでこれからどうするか話し合う。


「ここから脱出するには元凶であるあの人形を倒すしかない、レインはあの人形については何か知っているか?」


「うんん、そもそもなんなのあの人形って?」


 ああそこからなのね。



―――情報交換中



「へえ、そんなことがあったんだ。 私はここを調査して結構時間たってると思うけど一度も会わなかったよ」


 それは逆に運が良かったのでは。


「とりあえず情報も共有できたしそろそろ移動するか」


 移動するかってどこに行くんだ?


 そういうとヒースは一枚の紙を差し出した。

 紙はどうやらイベントのチラシであり『人形のコンテストが王城で開かれます是非ご参加ください』という内容で他にも地図やら展示内容など細かく記載されていた。


 俺がレインと話しているときに色々と物色していると思ったらこれを探していたのか、転生者だからこれ渡せばスムーズに行くんだろうなあとか思ってるんだろうなこいつ。


「あ、この人前にイオクニで問題起こした人だ」


 後ろからチラシを見たレインがある人物に目が入り指をさす。

『ルード・ヘロ』名前の上にいかにも熟練の顔つきをした爺さん顔の写真が載っていた。

 この爺さんが一体どんな問題を起こしたか聞いてみるとレイン自身も噂程度しか知っておらずその噂の内容がどうやら人口問題の改善案で出した案が色々とやばかったらしく却下されたことで大暴れしたっという内容だったちなみにその案の内容は知らないとのこと。


「……ま、結果がああなるんだから却下するのも当たり前なんだよなあ」


 なんか言ったかヒース?


「いやなんでも、とりあえず次の目的地である城に行こうもしかすると奴を倒す術が見つかるかもしれないからな」

 

「じゃあ私も仲間と合流するまで同行する形でいいかな」


 別に断る理由もないし逆に戦力が増えるからありがたいよ、ヒースもいいだろ?


 右手の親指を立て肯定を示すヒース。


 じゃあよろしく頼むよレイン。


「うん、こちらこそよそしくね」


 目的も決まったので自分たちは家を出て城に向かうのであった。



 ▲


 小話1

 

 ところでレイン、ここら辺の家は全部しまってたはずなんだけどどうやって入ったんだ?


「どうって鍵開け魔法だけど」


 それってなんでも開けられるのか?


「うーん……いけると思うけど対策されてるから簡単には行かないと思うよ」


 ふーん、まあそれでも便利だなその魔法いつか取得してみたいなあ。


「昔、それでNPCの盗撮やら寝込みを襲うプレイヤー事件が流行ってたなあ、まあリウの奴らに全員フルボッコにされたけど」


 誰にも聞こえない声量でヒースは懐かしそうに言った。




小話2


なあヒースちょっと聞いていいか?


「なんだよ小声で喋りかけてきて、どうせ転生者とかレインのこととか色々聞きたいんだろ」


 そうだけど、なんというかその……少し不安なんだよこのままいって大丈夫なのか。


「ああ、まあ不安になるのは分かるな一応安全なルートで行ってるから安心しろ、で彼女はまあなんだ……大丈夫だと思う。 後は転生者なんだがそれはお前だけが知っていればいいさ、知られると面倒ごとになりそうだからな」


 面倒ごとってなんだよ。 まあいいやとりあえず今はお前の正体はばらさないってことでいいんだよな?


「ああ、それで頼むよ」


「ねえねえ、二人してなに話してるの?」


 後ろを歩いていたレインが自分たちの話が気になり聞いてきた。


「男だけの秘密の話さ」


「なにそれ、逆に気になるんだけど」



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