記録1 経験値よりも熟練度ですか……

「はい1匹、2匹!」


『―――ッ!?』


 ヒースの振りかぶる剣はゴブリンの首を的確に捉え致命傷を入れる。


「決まった……」

 

 油断すんな!


 余韻に浸っているヒースの後ろから奇襲を仕掛けてくるゴブリンの額を射る。


 

 ここは森から少し奥にある遺跡跡、ゴブリンが住み着いており村の人たちは近づかないよう心掛けているため狩りの際もあまり森の奥へ行かないよう鉄則がある。


 じゃあなんで自分たちがここにいるかというと――


 ――ヒースのレベリングに付き添っているだけです。


 ヒースのの意味は『遺跡でレベリングしね? な、な(食い気味)』という意味であり狩りが早めに終わったらいつもやっている。


 村にばれたらやばいのではないかって? 


 もうばれてんだよ。


 最初はヒースが一人でやってるのがばれてこっぴどく怒られたが何度も懲りずにやっていくため最終的に自分が付き添う形となっている。


「悪いなリーフ、助かった」


 頼むから最後まで気を抜かないでくれ。


「あはは、スキルのレベルがちゃんと反映していることに感動してしまったよ」


 そうかい。じゃあさっさと死体を埋めて帰るぞ、そろそろ日が沈みそうだ。


「ゲームだったら素材落として死体は消滅するからなあ、今になってあのシステムのありがたみが分かってきたよ」


 またげーむの話か。


 ヒースはよく『げーむ』という謎の単語を話題に出してくる。

 未だに『げーむ』というものが何か分かっていないがこれから学べることは多くあった。

 『レベル』『スキル』『モンスター』、さっきのゴブリンの戦闘も『げーむ』で知った情報で楽に倒せた。

 だが今回で言う『しすてむ』というのは全くわからない。


「だってなあ……死体を埋めたり燃やしたりするのがいちいちめんどくさいんだよ。そういうゲームは知ってるよ、でもあれはワンボタンで済むからいいんだ、こっちは穴掘って埋めるっていう行動を疲れた体に鞭打ってやんなくちゃいけないんだぞ、文句の一つや二つ言いたくなるよ」


 そうぶつぶつ文句を言いながらヒースは魔力を使って穴を掘る。

 

 ……魔法使って楽に終わらせてるのに何言ってんだこいつ。


 声には出さず心の中で押しとどめ、こっちはゴブリンの死体を解体して換金できそうな素材を集めていった。



 


「それにしても不思議なもんだな」


 何が?


 帰りの途中、ヒースは何かを考えこむように話し出した。


「モンスターの死体を埋めてるときいつも思うんだよ、どうして埋めたり燃やしたりで不純物が生まれずに消滅するんだろうって」


 お前、先生に教わったことをもう忘れたのか?


「いやいやちゃんと覚えてるよ、放置すれば腐った臭いでモンスターが集まりそれと同時に死体に残る魔力が不純物となり実体化し新たなモンスターとなる、だから埋めたり燃やしたりすれば臭いもなく魔力も大地に吸収される、だろ?」


 どうやら先生から教わったことはちゃんと覚えていたようだ。

 死体を残せばモンスターのおびき寄せと新たなモンスターが生まれる、それを対処するには先ほど自分たちがやっていた埋葬と焼却。

 これをやれば臭いも出さず魔力は大地に吸収され新たな自然として生まれ変わる。


 じゃあなにが言いたいんだ?


「うーん……ちょっと説明が難しいんだよなあ。 まあいいか、今気にしていても仕方ないしこの話なしで」


 はぁ~?


「悪い悪い、話の整理が付いたらいつか話すから」


 何を言いたかったのかすごく気になるがいつか話すと言っていたのでこれ以上は追求しないでおこう。

 そうこうしていると村に着いたので今日の戦利品を売りに行こうとすると。

 

 ん? なんか騒がしいななんかあったのか?


 村の人たちが焦った様子で何かを探していた。

 

「もしやこれは……」


 なんか知っているのかヒース?


 何か心当たりがありそうな感じのヒースに問いかける。


「まあある程度は、とりあえず何があったか聞いてみないと分からない」


 それもそうだな……


 周囲を見渡し近くに聞けそうな人がいないか確認する。


 いた……酒場のおっさん!


「お前らちょうどいいところに、今村で大変なことが起こっててリンさんの娘さんが帰ってきてないんだよ!」


 リンさんの娘さんが!? 


「どうやら薬草を取りに森に行ったらしい、今先生たちが森に捜索しに行ってるから帰ってきて悪いが探してきてくれ」


 リンさんとこ娘さんはお手伝いさんでとてもいい子だ。

 薬草の採取も薬剤師の両親の手伝いで取りに行ったんだろう。

 たとえ道中が安全といっても子供一人で行くのは危険すぎる。

 リンさんにはお世話になってるしそれにこの村の住人ましてや子供を見捨てるわけがない。


 任せてくれ


「最速で見つけてやるよ」


 自分とヒースはすぐに了承し再び森の中へ入っていく。

 とりあえずまずは先生と合流しようと採取場所に向かおうとするが。

 

「リーフこっちだ!」


 はっ? そっちは遺跡跡だぞ、薬草の採取場所はその反対じゃ――


「いいから、俺を信じろ」


 ヒースは先生たちが探しに行っている薬草の採取場所から反対方向、さっき自分たちがゴブリンを狩っていた遺跡跡に行こうとしていた。

 ここまで自信があるということはヒースは今回の事件大方分かったのか。


 もしかして『げーむ』の情報で分かったのか!?


 その問いにヒースは素直に答えた。


「そうだよ。 これはチュートリアルの最後のクエスト『村の子供を救出せよ』でな、しかもこのクエストはでもあるんだ!」


 なんか知らない単語がいっぱい出てきたんだけどほんとに信じていいんだよな!?





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