勇者の鎮魂歌
シドー
記録0 友人がなんか変です
どうもはじめまして、自分は『アルス・リーフ』と申します。
出身はアーリア国で都市から遠く離れた小さな村で生まれ育ってきました。
友達と遊んだり村の一人として手伝いをやったりなど充実した日々を送って数年がたちました。
さて、ここで本題です。
自分は今とある問題に当たっているのです。
その問題はかなり難しく頭を悩ませる自分は今、草むらに座り空を見上げながら誰もいない空間に語りかけている状態になっています。
その頭を悩ませる問題はというと……
「いいぞいいぞぉ、体術スキルがいい感じに伸びてる。 このままいけば森にいる魔物と戦えてスキル上げが捗る捗る。 そしたら今度は……ふ、ふふふ……ぐへへへへ――」
友人がおかしくなってしまいました。
紹介しよう、今目の前で情緒不安定になっているのが自分の友人『レン・ヒース』。
こいつも同じくこの村に生まれ幼馴染として遊んだり時には勉強を教えてもらったりと長い付き合いを送ってきました。
でもある日を境に友人は変わってしまいました。
その日は友人が森に入ってから一向に帰ってこないと友人の親から聞いたので自分も探しに行こうと森に入って数分歩いたぐらいでした。
バンッ!
何かが破裂したような音が森に響いたのです。
自分は何事かと思いその音の方へ走り出しました。 距離も近いしもし魔物だった場合でも逃げれる手段はあるのでとくに問題もなくたどり着きました。
「やった、やった、魔法ができたぞー!」
少し開けた場所で友人は喜びを表しているのか変なダンスを踊っていて離れたところに壊れている焦げた的があり友人がなにかやったんだろうなと察しました。
ヒース!
「ん? ああリーフじゃないか、こんな時間にどうしたんだこんな場所まで来て、危ないじゃないか?」
笑顔で答えるヒースに自分は少しイラッとした。
とりあえずヒースにここで何があったか聞いてみる。
いやお前の親から聞いてな、遅いもんだから心配してたぞ。
それにしても、いったいここで何やっていたんだ?
「まじか、そんな経ってたのかちょっと魔法の練習してただけだったのに」
魔法? お前魔法なんてどこで覚えたんだ?
「俺んちに魔導書があってな、独学でやったんだ。 今度お前にも教えてやるよ、楽しいぞぉ魔法は」
あ、いいです。
「何いぃぃ!?」
あいつの驚き様は印象に残るほどの奴だった。
多分本人は絶対魔法に興味をひかれると思っているらしいがあの時は正直やることで手一杯な状態だったため自分は断った。
結局あれから何事もなく村に連れ帰りヒースは親にこっぴどく叱られ事なきを得た。
そしてその日からヒースは歯止めが利かなくなり家の手伝いが終わればすぐ鍛錬をやりその激しさも日々増していきついでに自分もそれに巻き込まれる形になってしまった。
それから5年の月日が経ち、現在に至る。
「なあなあリーフ、これから森に狩りに行くんだろ? 一緒に行こうぜ」
別にいいがあまり奥には行き過ぎるなよ。
分かってるとヒースは言うが過去の経験上また途中で駄々こねて奥に行くんだろうなあと考え一緒に森へと入っていく。
▲
16歳となった者たちは村に貢献するため手伝いのほかに仕事を与えられるが自分たち男は狩りを任せられている。
すぅ……
弓の弦を引き絞り対象に狙いを定める。
対象が止まる瞬間まで静かに潜む。
(……ここ!)
弦を離し矢を勢いよく放つ。
「キュイッ!?」
対象の生物、ツチ兎は矢に気付くことはなく体を貫かれ鳴き声と共に絶命する。
ふう、これで今日のご飯は確保できたな。
「おーいリーフ、そっちはどうだった」
とりあえず今日の分は、そっちはって……またか。
ちょうど合流してきたヒースの方を見ると何食わぬ顔で背中にイノシシを背負っており、相変わらずのヒースの結果に自分は呆れてしまう。
「お前だってイノシシぐらい一人で狩れる力を持っているじゃないか。 ツチ兎もいいがたまにはイノシシもいいんじゃないか? 俺も協力するからさあ」
考えておくよ。
ツチ兎を回収し終え自分は返答する。
確かにヒースの言っていることは本当のことであり、その気になれば一人でイノシシは狩れる。
それならなぜイノシシを狩らないかというと、ただただ面倒くさいだけである。
「ところでリーフ、これからどうする? 今日の狩りの分も終わったしいつものあれやろうぜ」
ヒースからの誘いに『ああ、いつものきたな』と思いながら少し考える。
(今の時間帯と日が沈むまでの時間を適当に予想して……)
いいよ別に、いつも通り日が沈む前に帰ることを条件で
「ああそれでいいぜ。 よっし、じゃあさっさと村に帰ろうぜ!」
テンションをあげたヒースは重いはずのイノシシを背負っているのにも関わらず村の方へ走り出した。
まったく、調子に乗らなければいいけど。
先ほどの返答に若干後悔があるがいったからには頑張っていこうと自分を鼓舞しヒースに置いてかれないよう自分も村の方へ走り出す。
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