第19話 シャーリャ王女の相談3

「シャーリャ様はもったいないですよ。せっかく王女であるのに、国を変えられる権限をもっているのに辞めちゃうかもなんて考えてしまうのは。いっそのこと、もしそうなってしまっても、王女と悪女を両立してしまえば良いんですよ」

「どういうことです!?」


 話しはじめると私は夢中になってしまっていた。

 ついついいつも思ってしまうことまで口走ってしまうものだ。


「別に悪女な王女がいたっていいじゃないですか。どうせ貴族界にいる大人なんてみんな金と欲望に飢えた悪みたいなもんですし!」

「…………」


「私もお父様たちからの命令を無視したことだって何度もありますよ。大親友がいるんですけれど、地位の関係で関わるなと言われていましたが、無視して今もその子とは仲良くしてますし。自由が一番ですよー」

「…………」


 ベラベラ話してしまったが、途中で我に返った。


「はっ! 今のは……、申し訳ございません。つい勢いで」

「別に気にしていませんよ。むしろお姉さまっぽく堂々とした雰囲気になってきましたね」


 なんということだ。

 うっかり王女に向かってこんな暴言を吐いてしまった。

 私はパニックになってしまって会話に集中できない。


「つまりお姉さまのアドバイスとしては、世の中には他にも男は沢山いるんだし、出会いをしてみるのも手。けれど王女という立場では難しいから、自ら悪女になってでも大人の命令を、つまり国王であるお父様にも逆らって好きに動いてみれば問題を解決できるかもしれない。どうせ大人も悪なんだしその命令に従うな自由が一番。そう言いたいのですね?」

「うぁぁぁあうううう……」

「お姉さま?」

「あ、はい!」


 なにかシャーリャ王女は喋っていたようだけれど、全く耳に入ってきていなかった。

 たのむからもう一度言ってくれ。


「その親友さんは幸せ者ですね。お姉さまも地位なんかより人を大事にしろと、出会いを大事にしろと言いたいのですね?」

「は、はい! そうです! それが言いたかったんです」


 助かった。

 二度聞いてくれたから、私は冷静に返事ができた。

 これからは話に夢中になってしまってもベラベラと喋りだすことだけは気をつけることにしよう。


「ふふ……。お姉さまに後押ししてもらえたら、なんだか楽しみになってきました。今までは縛られた中でしか動けませんでしたが、吹っ切れて行動したら、もしかしたら全てがうまくいきそうな気もしてきましたね」


 シャーリャ王女の表情がとても明るくなってきた。

 どうやら王女をやめて悪女になってしまい暴走することだけは阻止できたようだ。


 これならば、私も相談ができそうだな。


「私からも相談がありまして……」

「どうぞ、お姉さま」

「実は……」


 ここで言葉に詰まった。

 シャーリャ王女は婚約破棄の件は白紙にしてくださったのだ。

 レインハルト様の気持ちだけで私が王女に相談してしまえば、またややこしいことになるしシャーリャ王女を困らせてしまうだろう。


「お姉さま? どうしましたか?」

「う……あの、シャーリャ様にしか出来ないんです。なんとか良い国にしてください!」


 シャーリャ王女が活躍すれば、レインハルト様が『シャーリャと一緒になりたい』というわがままもなんとか通りそうな気がしてきた。

 一瞬で考えた程度では、この程度しか方法が思いつかないのだ。


「ありがとうございます。お姉さまに応援してくださったら、勇気が出てきましたわ」


 どうやら、無事にごまかせたようだ。

 シャーリャ王女からの笑みは可愛らしく、私にだけニコリと笑ってくれたのは嬉しかった。

 ごまかしてしまったのに、こんなに微笑まないでください……。


 私は、またひとつ罪悪感をもってしまった。

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