第20話 お父様の焦り
「ミリアナよ……、一体お前はなにをしでかしたのだ!?」
「はい? 最近のお父様はいつも同じことしか言いませんね」
「当たり前だ! 特に、今回は貴族界全体に影響を及ぼすかもしれんのだぞ!」
そう言われても、本当に心当たりがない。
言いがかりもやめてほしい。
「私がどんなに動こうとも、貴族界を変えられるほどの力も権力もありませんが」
「あぁ、それは当然だ。だが、シャーリャ王女を利用したのだろう!?」
「はい?」
「とぼけるでない! シャーリャ王女が突然態度を急変されおった。その結果国王までも落とし込み、貴族界に新たな政策が加わろうとして大混乱になっているのだぞ」
大袈裟だな。
シャーリャ王女には人を大事にして出会いを大切にしたほうがいいですよとは言った。
だが、政策を変えろなんて言った覚えはない。
「そもそも、どんな政策が加わるのかは存じませんが、どうしてシャーリャ王女が提案した政策が私のせいだと言うのかが理解できませんが」
「本当か!? シャーリャ王女のコメントでは、『親愛なるお姉さまができまして、そのお方にアドバイスをいただいたから行動できましたの』などと言っておったぞ!」
シャーリャ王女の真似をして喋るのはやめてほしい。
可愛らしい王女の声を台無しにしないでいただきたいものだ。
ところで、もしそれが本当だとしたらお姉さまと言っているのは私以外にはいないと思う。
つまり、原因は私のようだ。
「で、どんな政策を?」
「上下関係の格差、差別は一切禁止とする、同じ人間同士だから民間人とも平等とするなどと宣言しておったぞ! これは伯爵家にとっては絶大なダメージだ」
「あぁ、でも男爵家にとっては良いことですね」
シャーリャ様ってば、悪女になっちゃうかもーなんて言っていたけれど、どうやら思いとどまってくれたようだ。
しかも、私が長年希望していた政策を実行してくださるなんて、なんて素晴らしいお方なのだろうか。
そんな人にお姉さまなどと呼ばれていることは恐縮してしまう。
「国王陛下も渋々了承されてしまった。どんな手段を使ったのかは知らぬが、よほど卑怯な手を使って脅迫でもしたのだろう。つまり、ミリアナの責任だ」
「言いがかりもほどほどにしてほしいですね。むしろ、平等になるならば良いことでしょう?」
「威厳を保てなくなるのだぞ!? これでは私は……」
あーはいはい。
お父様が所有している領地で、領民に怒鳴り散らしてかなり無理な仕事を押し付けていたことが出来なくなるかもしれないんじゃ焦るよね。
だが、むしろこれでいい。
お父様のせいで領民たちは苦しんでいた。
私も時々領地に足を運ぶことがあったけれど、こっそりと差し入れをあげたり仕事を手伝ったりしていたことはお父様たちには内緒だ。
私の負担や労力も減るだろうし、これで私自身も救われるというものである。
シャーリャ王女に感謝したい。
「その悪女の王女様から、またお前宛に手紙が届いていた」
「ちょうどいいタイミングですね。私も彼女に会いたいと思っていたので」
「ふん……。もう私は知らん。だが、これ以上余計なことをしたら勘当だぞ」
「だから、私はなにもしていませんから!」
さすがに無実の罪をきせてくるのは頭にくるから、私も半ギレでお父様に歯向かった。
そして、手紙を受け取ってからは逃げるように王宮へ向かう。
前回同様、私と話がしたいという内容だった。
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