ここにきて新たなテンプレキター!

「ほななにか?坊ちゃんはもう戻って来られへんのか?あちゃ~、領主のおっさんにバレたらヤバイやつやん。どないしょ?」


見た目少女(少女とは言っていない)を落ち着かせるために頭ポンポンをし、落ち着いたところで改めて転生の経緯を説明する。

経緯も何も、俺が死んで、坊ちゃんとかいうクソガキも死んで、クソガキを殺した奴が勇者だからその勇者を前科持ちにしないために女神さまが細工をし、俺とクソガキが入れ替わる形で転生をした。

何故か知らんがクソガキは余命カウントダウン始まっているであろう、戦国時代の大名の息子に転生したらしい。……南無南無。


「どうやって誤魔化そか。……ま、それはおいおい考えよ」


小さな顎に指をあて、ウンウンと頭を捻り解決策を考えていたロリっ子詐欺エルフ。

いくら考えても無駄だと気が付いたのか、手の平をパンと鳴らし、考えを放棄したようだ。


「ところで自分、坊ちゃんの記憶とかはあるんか?無いとかなり生活キツイんとちゃうんかな?」

「あ、そういえばそうだ!記憶がないといろいろとヤバイかもしれない」


慌てて自分の名前、今いる場所、昨日何をしたのか、これまで何をしてきたのかを思い出してみる。

今いる場所はオルテニアという国のヴォロラ州のビブローというそこそこな町。

その街を治めるビブロー家の3男が今の俺、ハドリー・ビブロー。今年で10歳。

おお、クソガキの記憶があるぞ!どこかで聞いたような国の名前と町の名前だけど、これでどうにか誤魔化しながらやっていけ……マジか。

クソガキの記憶を探ってみたら、何故勇者のガキにフルボッコにされたかが分かった。


町の住人の少女たちに性的な言葉を投げかけたり、メイドさんに抱き着いたり(黒歴史エルフメイドは除く)は日常茶飯事で、勇者の幼馴染のサマンサという、これまたどこかで聞いたような名前の女の子に至っては、日頃からスカートめくりやボディタッチ。挙句の果てはスカートに顔を突っ込み匂いを嗅ぐなどと、カタカナで書くライトなヘンタイではなく、漢字で書くマジで変態な行為を繰り返していたようだ。

勇者にボコられた日には、ついにそのサマンサを無理やり暗がりに連れ込もうとし、勇者がブチ切れ、フルボッコボコに。……転生先で信長さんにシャレにならないガチのフルボッコを喰らうがいい!

こいつマジか、最低だなと記憶をさらに探っていくと……マジかぁ。

毎晩メイドさんの入浴シーンをのぞき見している画像が浮かんできた。……3兄弟に父親も揃って、だ。

どうやら風呂場に魔道具を設置しているようで、毎晩屋敷の巨乳メイドさんたちのあわれもない姿を親子で鑑賞していたらしい。こんなので一家団欒しやがって……クズ家族最高だな!

俺は脳裏に浮かぶその桃源郷のような光景を、脳細胞に焼き付ける。……いいおかずを手に入れたぞ!


「そのにやけ面やと記憶はあるみたいやな。どうせ魔道具で風呂場覗いとるとこでも思い出したんか?残念でした~、その魔道具の画像はアタシが作り出した偽物です~。腐れエロ親子、ざまぁ見さらせ!」

「なんだってチクショウ!……あ、ホントだ。良く思い返してみたら、レイシアさんの胸、揺れるレベルであるように小細工され……へぶ!」

「オドレ死にたいんか!いつぶち殺したってもええんやで!」


顎を的確に捉えるレイシアさんの拳に、危うく女神様との再会を果たしかける俺。

そんな膝から崩れ落ちる俺を無視し、パチンと指を鳴らすレイシアさん。


「お坊ちゃま、今、消音の結界を解きましたので、これからは大きな声は出さないようにお気を付けください」


ニコリと微笑みながらメイドらしい口調で話し、さらに俺の耳元に近づきささやきかけてくる。


「ですので、余計なことを話そうものなら……オドレ死ぬで」


そうだった……クソガキの記憶では、この肋骨黒歴史ロリっ子もどき高齢エルフは、つい最近屋敷に雇われたばかり。……16歳の期待の新人という事で。

兄達は俺付きのメイドという事で羨ましがってた。……事実は小説(連載200年800巻)より奇なり、だけどな。


「では旦那様が今回の件でお話があるそうですので、一緒にお越しください」


そりゃそうか、仮にも領主の息子が領民にボコられて、死にそうに(実際は死んでたけど)なったんだからな。

頭の中でどうやって誤魔化すかをシミュレーションしながらレイシアさんの後をついていく。

そして父親が待つ書斎の扉を開けると、俺を除く一家全員が勢ぞろいしていた。


「ハドリーよ、お前にはがっかりだ。日ごろの行いを改めよと言い続けてきたが、改心できなかったようだな。挙句、領民に負け、死の淵をさまようとは……ハドリーよ、お前は金輪際ビブローを名乗ることを許さん!一族の恥め!我がビブロー家より追放する!」


は?…はぁ?……はぁぁぁぁぁ~~?


「レイシア、お前も主人に嘘をつくなど言語道断だ。貴様も追放だ!……何がCだ。長年胸を眺め続けている我らの目をごまかせるとでも思っていたのか?少しは成長するかと見守っていたが、ここまで哀れな物だともはや成長する伸びしろは無いだろう。我がビブローに無乳はいらぬ。今すぐ出ていけ、追放だ!」

「はぁぁ?い、いや、旦那様!そ、それはあまりにも」

「揺れぬ者に発言権はない!二人とも今すぐ出ていけ!」


異世界転生のテンプレ、追放物キター!……喜べねぇよ。ボコられてすぐ追放って。俺が一体何をしたってんだよ。

少しの生活費と、必要最低限の荷物だけを持たされ、屋敷から追い出される俺。

そんな俺の横で口を半開きにし、「マジか……マジなんかぁ」と呟いているレイシアさん。


とりあえずは……どうしよう?レイシアさんと二人、「マジなんかぁ」と呟きながら屋敷を後にする。

俺の異世界生活……ハードモード過ぎないか?








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