誰もが通る道、早いか遅いかだけだ。
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「おい、レイシア。お前、歩くの遅すぎんだよ。貸せよ、その小汚い荷物を。俺が持ってやるよ」
「や、そ、そんな悪いですよ。図書館で本を借りてきましたので重いですし」
王立ラインノート魔術学院からの帰り道。
いつものように、4人で学生寮までの短い帰り道を彼達と歩く。
アタシ、皆より小さいから、歩くのが遅いんだよね。
でもそんなアタシを気遣うように、隣を歩く彼がアタシの顔を覗き込むように、荒々しい口調で話しかけてくる。
歩くのが遅い、そう言って、アタシの手からひったくる様にカバンを奪い取る、まるで太陽の光を浴びたオリハルコンのような光輝く金色の長髪に、彼の熱い気持ちを表しているかのような、赤い瞳をしているカイン君。
口は悪いんだけど、いつも歩幅の小さいアタシに合わせて歩いてくれる、本当はとても優しい人。
「レイシアさん、いまから書店に寄りませんか?その後は2人で軽い食事でもいかがでしょう?」
まるでミスリルが満月の光を映し出したかの様な、光輝く銀髪をなびかせ、全てを見通すような澄んだ青い瞳でアタシを見つめるアベル君。
そんな学院でも1、2位を争う位の人気者2人の間に挟まれるように歩くアタシ。
うわわぁぁ~、2人の顔が近くて恥ずかしいよぉ。きっと顔が真っ赤になっちゃってるよぉ。
「アベル先輩もカイン先輩もそんなにグイグイ迫ったら、レイシア先輩が困ってるじゃないですか」
そんなアタシ達を見て、アハハと笑顔を浮かべながら、世界樹の森の木々の様な美しい緑の髪を持ち、少しとがった耳をピョコピョコと動かしながら話しかけてくるリットン君。
「レイシア先輩はこれから僕とデートなんです。お邪魔虫な2人は帰ってください」
「なんだとリットン、貴様!」
「リットン、訂正を。レイシアと出かけるのはこの私です」
あわわわ~、また3人で口喧嘩しちゃってるよぉ。
3人共、どうして少し胸が大きいだけの、平凡なアタシを巡って喧嘩しちゃうんだろ?
「もう3人共やめてください!喧嘩するなら一人で帰ります!」
「じょ、冗談だよ、怒るなよレイシア」
「えぇ、友人同士の軽い冗談ですよ、レイシア」
「レイシア先輩、喧嘩しませんから、これからも一緒に帰りましょう!」
そう言ってアタシを笑顔を向けてくるカイン君、アベル君、リットン君。
はわわわ~、皆の笑顔がまぶしいよぉ~。……この眩しい笑顔がアタシだけに向いているなんて、まるで夢みたい!
こうしてアタシ、レイシア・フォン・アヴェールと、麗しの彼達との毎日が過ぎていくのでした。
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女神さまに肋骨エルフの事を聞いてみたら、突然記憶に流れ込んできた、訳の分からないラブコメチックな文章。はわわわ~とか言ってるけど、これってもしかして……
ねぇ女神様。もしかしてあの肋骨エルフさんの名前って、レイシアだったりします?
『はい、そうです、彼女はレイシアという名前です』
なるほど。肋骨さんはレイシアさんか。
記憶に流れ込んできた文章では、少し胸が大きいだけの少女の名前らしいが……
『先ほど流したものは、彼女が書き綴っている物語です。
彼女が300歳の時から書き始め、もう200年ほど書き綴っているようですね。
ストーリーとしては魔術学院に通うレイシアという女性が美男子達に囲まれて……』
女神様!やめてあげて!彼女の願望を文章にした黒歴史を晒すのは止めてあげてぇ~!主人公を自分の名前にして、願望を書き綴ってるなんて他人にバレたら生きてけないから!!
『そうなのですか?書き綴った物語、全て読みましたがなかなかに興味深いものでした。特に主人公を巡る争いに、魔族の美男子までもが……』
止めたげて!これは他人に知られちゃいけない、黒歴史なんだから!
俺だったら立ち直れないから!
『ふむ。神託で神官にも伝えようと考えていたのですが』
世界規模で黒歴史を広めるのは止めてあげて!
いくら胸無しの一族とはいえ、可哀想すぎる!すぐに戻って教えてあげなくては!
『まだ1巻目の最初しか伝えていないのですが。では残り800巻は後日という事にしましょう』
どんだけ妄想書き綴ってるんだ、肋骨エルフ!ヘタしたら神話規模で黒歴史残すことになるぞ!
早く戻って教えてやらねばと、妙な正義感を胸に白い景色が黒く染まるのを待つ。
景色が徐々に黒く染まり、意識が落ちる。
……誰もが一度は通る道だ。肋骨エルフよ、心を強く持つのだ!
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