もはや常連さんと言っても過言では無い

気がつけば白い景色の中にいた。

ついさっき、新しい人生を楽しんでと追い出されたばかりなんだけど……今の所楽しい要素が一つも無い!

異世界要素のエルフはいたけど、そのエルフはロリだし胸無いしエロフじゃ無いし、おっぱいが皆無。

ていうか、いきなり中身変わっている事がバレて、ボコられるし。なんなの?あのエルフ。あれだけ激しく動いて胸にさざなみすら起きないとは。

あいつの胸に装着されているのはおっぱいではなく、肋だな、肋骨さんだな。


『あらあら、また来たのですか?そう何度も来ていただいても困るのですが』


あ、女神様コンチャーっす。ロリ魔王エルフにボコられてきました。


『ここは軽いノリで来る事が出来る場所では無いのですが……貴方は運がいいのか、悪いのか』


へぇ、そうなんですか?因みにどうすればここに来ることが出来るんです?何となく、酷い目に遭えば来れる様な気はしますけど。


女神様に聞いてみる。なんだかこの白い景色の中にいると落ち着くというか、気持ちいいというか。何とも言えない妙な気分になるんだよな。


『ここに来る条件は、HPが残り1になり、意識が無い事。そして強い運命力を持っている事です』


HP1ってかなりヤバく無いですか?え?俺、死ぬ寸前なんです?


『目安として、スネを単行本で強く叩く痛さが3ダメージ程ですね。箪笥に小指を軽くぶつけるのが1ですかね?』


ヤベエ!俺、箪笥に殺される!迂闊に家の中歩けねぇ!


『本来なら貴方が死のうがどうでもいいのですが、さすがに可哀想なので、私の加護を与えましょう。どんなダメージを受けても必ずHP1を残し生き残る

、女神の加護を』


どうでもいいとか酷くない?まぁおかげでチートな加護を貰えるみたいだけど。


『この加護があれば、例えドラゴンに食べられて咀嚼され続けても決して死にません。飲み込まれ胃液で溶かされ続けても死にません。火山に落とされても死なずに燃え続ける事になります。どうです、素晴らしい加護でしょう?』


……呪いじゃねぇか。死ねずに苦しみ続けるなんて、どう考えても呪いじゃねぇか!

もうヤダ、この女神様怖い!帰らせて!


『ふぅ、仕方がないですね。では今度こそ良い人生を歩んで下さいね』


女神様の優しい声に白い景色が徐々に黒くなる。

声は優しいけど、やる事はエゲツないな、女神様。呪いみたいな加護を押し付けられなくてよかったあ。


景色が黒くなり、徐々に全身に痛みが走る。そうだった、ボコられてる最中だったんだ。

重い瞼を開けるとそこにはロリメイドエルフがいた。


「あ、肋骨さんだ」

「誰が肋骨やぁ!寄せたらちょっとは胸あるわい!」


ロリ肋骨メイドエルフが負け犬の遠吠えを叫びながら拳を振るう。

その拳は寸分違わず俺の顎先を捉え、意識を刈り取る。……そして気がつけば本日3回目、白い景色の中にいた。


『貴方、加護が無いのによく死なずに何度もここに来れますね?ある意味チートではないですか?』


……ただいま戻りました。


呆れ声の女神様に帰宅の挨拶をする。

恐らくここは生と死の狭間。少しの事で死へと転げ落ちる狭間なのだろう。

そんな生と死の狭間に運良く引っかかり、どうにか命を繋いでいる俺。

……なんだか実家の様な安心感を感じる自分がイヤになるな。





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