新たな恋愛をしたいそうで、婚約状態の幼馴染と組んだパーティーをクビの上、婚約破棄されました

第19話 力の差

「ソフィアよ、回復魔法を発動すればよい。本気でやって力の差を見せつけてあげたまえ。そうでもしないと、この男は力も理解できずダンジョンで早死にする」

「わかりました」

　ダルムが更に機嫌が悪くなったように見える。

　格下と思われてプライドが傷付いたのだろう。

　いいよ、これも今後のためだから。

　一度くらい激しく負けて、実力に見合った冒険をしなさい。

　私とダルムが頑丈に作られた特殊なテーブルの上に腕を乗せる。

　普通のテーブルだと、それごと破壊してしまうような冒険者もいるため、ギルドには頑丈なテーブルが用意されているのだ。

「レディー……ファイト」

　ライムハルト殿下の合図でダルムとの腕相撲が始まった。

「ぐぅううううう！！！　ば……ばかな！」

　ダルムの顔が真っ赤だ。

　どうやら本気を出しているらしいが、私にはまだまだ余裕がある。

　今まではダルムに強化魔法を発動していた状態でやることが殆どだったので、私は本気でやっても負けることが多かった。

　だが、強化魔法をダルムに発動していないと、これほどまで差がうまれるのか……。

　知らなかったな。

「両手使っていいよ」

「な！？　後悔するなよ。うぉおおおおお！！」

　片手で勝てないのだから、ダルムは負けを認めてもいいだろう……。

　仮に両手で私に勝てたとしても、何の誇りにもならないでしょ。

　ダルムが両手を使っても、私が入れている力は1割くらい？

　さすがにこれだけ楽なのもこの街に来る途中、ライムハルト殿下と朝の特訓をしたからだろうか。

　力もわかったことだし、ここからが本番だ。

「じゃ、あとで治すからね。んーーーっ！！！」

　──ドガシャーーーーーン！！

「ぎゃぁぁぁ！！！」

　ダルムの身体ごとテーブルに叩きつけ、彼は死にそうなほどの悲鳴をあげていた。

　多分、この勢いだから手の骨が折れて、身体も数カ所痛めたに違いない。

「まさか本当に本気を出すとは……」

「え、でもライムハルト殿下が本気を出せと……」

「……すまぬ。ここまで彼が弱いとは思わなかったのだよ……」

　ダルムは口から泡を吹いていて、放っておいたら本当に死んでしまいそうだ。

　私は回復魔法をかけてすぐに治した。

「ソフィアよ……。お前がここまで卑怯な女だとは思わなかった」

「え？」

　完全に回復したダルムから発した最初の言葉は、まさかの私に対しての卑怯発言だった。