第13話【ダルム視点】まさかの苦戦になった

 駆け出し冒険者とは、ギルド登録した直後の最低ランクだ。

 依頼も最弱モンスターのスライムの駆除、もしくは指定薬草の採取、あとは雑務ばかりしかない。


「ギルドとしてはあまりにも危険と判断した場合に限り、依頼承認を行わない場合がございます。今回はそれに該当しますね」

「まさか……」

「ギルドとして承認できません」


 なんということだ……。

 どうしてソフィアがいなくなっただけで、俺たちのパーティーはこんなにも評価されなくなってしまったのだろうか……。

 前回の依頼でミスしたからだけではない気がする。

 皆ソフィアのことを評価しすぎなのではないか?


 まぁ、仕方がない。

 ライムハルトにコネでパーティーに入ったのだから俺たちにトバッチリがきているのだろう。

 ならば実力で証明してやろう。

 駆け出し冒険者の依頼で余裕で達成しているところを証明し、三流冒険者の依頼も簡単に達成できるところを見せればいいのだ。


「駆け出し冒険者の依頼を引き受けますよ。そのかわり、それでしっかり俺たちの力を判断してくださいよ?」

「はい、承知致しました」


 小さなダンジョンへ入り、スライムよりもワンランク上の人型モンスターゴブリンを討伐し、たまにドロップする魔法石を5個入手するという依頼を引き受けた。

 なお、変な話だが、以前俺たちが苦戦を強いられた小型ゴブリンよりも普通のゴブリンの方が格下だ。

 コイツらはサイズが大きいほど弱くなっていく特徴がある。

 本来なら小型ゴブリン相手でも容易に倒せるんだけれど。


 魔法石が市場で最も需要とされている燃料のようなものだから、冒険者はまずスライムで戦闘慣れをして、そこからゴブリンをひたすら狩まくるというのが基本だ。

 まさか、俺たちが基本に戻されてしまうなど夢にも思わなかったが。


 だが、魔法石は安易に入手できる上にいくらあっても困ることはない。

 無限に生まれてくるゴブリンを倒しまくり、余裕だと見せつけてやるんだ。


 ♢


「く……こんな馬鹿なことがあってたまるか! マイン! 一緒に戦おう!」

「え……!? 私もやらなきゃダメ? こんな雑魚相手に」

「いいから! 雑魚相手とはいえ、何度も戦えば疲れるんだ」


 ゴブリン相手でも、最初はなんとか倒してきた。

 今日も調子が悪いのか……?

 まだ魔法石は1個だけしか入手できてない。

 残りはコインばかりの外れだ。


 このまま戦闘を続ければ俺のスタミナが切れてしまうだろう。

 ずっと見学しかしていないマインにも参戦してもらい、ミーンには回復魔法をかけてもらう。

 パーティーとして当たり前のことなのだが、マインは妙に戦闘を嫌がる。

 なぜだ?


「仕方ないわね……。ミーン! しっかり補助魔法かけてね」

「もちろん~! 任せて!」


 だが、マインの動きがぎこちない……。

 この動きでは駆け出し冒険者として疑われてもおかしくないぞ……?

 ミーンもどうして補助魔法をもっと手厚く発動させないのだ?


 二人のぎこちなさを見ていて心配になってきた。


「ミーン! 俺に回復魔法をかけてくれないか? 俺が完全に回復できればこんな奴らなんて……」

「もうとっくになんどもかけてるよ~?」

「な!?」


 衝撃的な言葉を聞き、ミーンの方に顔を預けてしまった。

 その隙に、ゴブリンの突進を喰らい、俺は吹っ飛んだ。


「ぎゃんっ!!」


 変な声をだしてしまったのと同時に、大ダメージを受けてしまい、意識が朦朧としてきた。


「こんな……駆け出し冒険者が闘うような相手に苦戦などあり得ない……」


 だが、俺にここまで深傷を負わせてくるとは……。

 一体どうなっているんだ!?


「一旦引きましょう!」

「その方がいいかもしれない……私の魔力、全部使っちゃったし……」


 明らかにおかしい。

 ソフィアよりも魔力が優れていたはずなのに、これではソフィアよりも……いや、普通の魔道士よりも弱い……。


「まさか……な」


 ソフィアがもしかして、本当にとんでもない奴だったのではないかと疑ってしまった。

 いや、そんなことはない。

 たまたま運がなくて、このような結果になっただけだろう。


 一旦引き、出直すしかない。

 ギルドにはどう報告すればいいのだろう……。

 こんな簡単な任務さえできずに戻ることになるとは屈辱的だし、悔しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る