第12話【ダルム視点】駆け出し冒険者の依頼しかできなくなってしまった

「どうしてソフィアがライムハルト様にスカウトされてるのよ!?」


 マインの意見はごもっともだ。

 妹のミーンもうんうん、と頷いている。


「ソフィアの戦闘能力で普通に考えたらありえないことだよ。おそらくソフィアの父のコネだと思う。あいつの父親は元々すごい冒険者だったし」

「ダルムだってコネを使えばいいのに~……」

「俺は遠慮するよ。後先のことを考えれば当然のことだから」

「え~もったいないでしょ~」


 ミーンは相変わらず浮かれてばかりだ。


「俺では役不足なんだよ。メリットとしては物凄い報酬が手に入ることくらいだろうし。その分、危険ばかりになるし、役不足だと言われクビにされるのがオチかな。ソフィアの奴はそのことまで考えられずにコネで加入したに過ぎない。そこまで無能な女になってしまったとは思わなかったけど」


 ミーンは俺の話を興味深そうに聞いてくれていた。

 マインは当然のことのように思っているようだ。


「すぐに根をあげて自ら逃げ出すか、ライムハルト殿下からクビを宣告されるだろうね。全く、俺たちからのクビになったばかりなのに、さすがに同情してしまうよ」

「あら、ダルムったら随分と優しいのね。幼馴染の情でもでたのかしら?」

「ダルムったら私たちがいるのにひどい~!」

「おいおい、俺は元々ソフィアのことを好きじゃなかったと何度も言ってきただろう」


 ソフィアが好きじゃないと言ってもなかなか信じてもらえなかった。

 だが、考えてもみてほしい。


 婚約相手でなおかつ同じ冒険者で、常に二人きりの行動が多かった。

 旅先で二人で野宿することも何度かあったのだ。

 その時に夜の関係を誘っても、あいつは全くしようとしてこなかった。

 何度も何度も断られていたら、冷めても仕方のないことだろう。

 俺は最初からソフィアが嫌だったわけではない。


 あいつが俺の感情を変えたんだ。


「ソフィアに払う慰謝料も早く集めなければならないからね。調子も戻ったし、そろそろギルド活動をしようかと思うんだけど」

「ええ」

「もちろん~」


 前回は調子が悪すぎて失敗してしまったからな。

 今度は大丈夫だろう。

 三流冒険者クラスが引き受けるような依頼を選び、ギルド職員のアーニャ氏の元へ行く。


「お言葉ですが、この依頼は辞めておくことをオススメします」


 アーニャ氏が申し訳なさそうな顔で俺たちに頭を下げてきた。

 もちろん、何を根拠に言っているのかわからないので、言い返した。


「今までこれくらいの三流冒険者クラスの依頼をこなしてきたのは知っているでしょう? 前回はたまたま調子が悪かっただけなのです」

「失礼ですがソフィア様が抜けたパーティーでは、駆け出し冒険者クラスの依頼をギルドとしては推奨いたします」

「「「は!?」」」


 3人で声が被ってしまう。

 それくらいに俺たちは理解ができなかったのだ。


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