第11話【ダルム視点】家から追放された

「ソフィアを解雇しただと!? お前……自分が何をしたのかわかっているのか!?」

「うん、わかっているよ。ソフィアよりも強くて可愛い子がパーティーに加入してくれたし、もういらなかったんだ」

「バカもの!!」


 父上の強烈なビンタがとんできた。

 パワーもスピードも壊滅級で、動きが見えず避けることも防御することすらできない。

 俺は吹っ飛ばされていた。

 頬がジンジンと痛む。


「イタタ……。だって父上がいつも言ってたでしょう! ソフィアよりも強いものを見つけることができたら縁談を断っても良いって」

「まさか……、パーティーから脱退させただけでなく、婚約までも!?」

「何度も言うけれど、俺はソフィアに恋愛感情が湧かなかったんだよ! マインとミーンって子がパーティーに入ってくれたんだけどさ、その二人の方がよっぽど魅力があるし、ソフィアよりも数段強い。だから、父上にもいずれ紹介しようかと」

「話にならん! お前がそこまで強さを判別できない愚か者だとは思わんかったわ!」


 父上は強すぎるが故に勘違いをしている。

 父上から見ると、弱い俺やソフィア、それにマイン達のことは全員同じくらいの力だと判断しているに違いない。


 100キロのダンベルを持ち上げる人が、1グラムと2グラムの小さな物を持つとき、どちらも同じ重さだと感じるようなものだろう。

 だから、俺は父上に反抗した。


「俺は好きな女と一緒になりたいんだよ!」

「……。ならば好きにするが良い。あまりにも馬鹿すぎて勝手な行動をとる貴様など、俺の面倒を見れる範囲ではないからとっとと出て行け。お前など俺の息子ではない! 勘当だ」


 いやいや、自分の間違いを俺に押し付けるのはおかしいから!

 父上は怖いけど、引くわけにもいかない。


「それは困るよ! マインとミーン二人とも結婚したいんだから。どうしても貴族の称号だけは必要なんだ」

「そんなもの、お前が実績を作り国に認められれば、騎士爵くらいなら可能だろう。あのソフィアを解雇してしまうくらいのパーティーなのだろ? 自分でやれ! 俺がどれだけ手を加えようともお前は自分の意見だけで勝手に行動してきた。今回もそうだろ! ならば俺はもう面倒はみない!」


 父上の説教は理解ができるところとそうでないところがあった。

 自力で貴族入りするようにしろと命じてきたことには賛成だ。

 マインとミーンがいればどんなダンジョンも任務も出来るはずだし。


 ソフィアを過大評価し過ぎな件は納得いかなかった。

 もしかして、父上がソフィアに好意があって、自分の娘にしたかっただけなのではないかと、ふと脳裏で推理した。

 だとすれば、俺はソフィアを父の淫らな欲望から救ったヒーローといったところだ。


「父上、その提案受け入れるよ。俺はこの家を出る。正式に親子ではなくなる手続きもして構わない。俺は元父上のようにはならないから!」

「ほう……。もう何も言わん、勝手にしろ」


 初めて父上を言い負かせた気がする。

 殴られはしたが、俺は勝ったんだ!

 気分が良い。

 荷物をまとめて家を飛び出した。


 これで俺には帰る場所もなくなり、全て自力でなんとかしなければならない立場になった。

 だが、勝手に縁談を決めるような邪魔もなくなり、何をしても自由の身である。

 解放されて優越感に浸った。


「よし、まずはマインとミーンに報告か。二人と結婚するには俺たちで頑張って一流冒険者になって国に認められることが絶対条件だと」


 ある程度時間はかかるかもしれないが、簡単なことだ。

 マインとミーンも納得し、不調が治ったら本格的に冒険者として動こうかと決めた。


 だが、さぁいよいよ活動開始というとき、意味不明の噂が入ってきた。


「ソフィアがライムハルト殿下のパーティーに加入しただと……!?」


 ライムハルトといえば超一流冒険者だ。

 上位の冒険者が10人揃っても危険で潜れないダンジョン最深層を、たった1人で潜ったことがあると噂されている。


 俺たちとは格が違いすぎるのだ。

 何故そんな絶大な力をもったところにソフィアが……。


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