第7話【ダルム視点】序盤から苦戦してしまった

 ここのダンジョンは『層(そう)』という括りで分けられており、最深で50層まであるらしい。

 目的の素材は20層まで潜れば、そこに生息するモンスターを討伐したときに稀にドロップしてくれる。

 モンスターは生き物と違って、倒すとコインになったり何かの素材に変化するという不思議な生き物である。


 しかも、ダンジョンの中なら不思議な力が働いて無限にモンスターが生まれるので、倒し放題だ。


「いつ来ても不思議よねー。モンスターってどうして地上には出ようとしないのかしら」

「ギルド登録時で習ったのは、ダンジョンというエリアは特質な空間。地上の空気はモンスターには体質が合わないから出れないと、ちゃんと言われたよ……お姉ちゃん?」

「も……もちろん知ってるわよ! ちゃんと覚えているか試していただけ」


 マインの顔は嘘くさかったな。

 全く~これだからマインは情けないところがあるんだよなー。

 ま、俺もミーンの説明を聞いて今知ったんだけど!


 ミーンは変なところで勉強熱心だから、しっかりと聞いていたんだろうな。


 第1層はモンスターの中で最弱クラスのスライムくらいしか出てこないから俺だけでも余裕すぎて片手で……倒せなかった……。

 おかしいな、今日は俺の調子が悪いのだろうか。


 スライムを1撃でコッパ微塵にできるかと思ったんだけど、剣を使っても2撃必要だった。

 ここのダンジョンのモンスターのレベルが高いのかもしれない。

 構わず奥へ奥へと進んでいった。


 ♢


「マイン! いい加減に手伝ってほしい! 俺1人ではダメージを負ってしまう!! 今日は俺の調子が異常に悪いんだよ」

「……し、仕方ないわね。なら一旦引きましょう」

「ば……ばかな! まだたかが第5層だろ? この程度なら駆け出し冒険者が1人でだって侵入できるエリアなんだぞ……」

「でも調子が悪いんじゃ仕方ないでしょ~?」


 さすがにプライドに傷がつく。

 ソフィアに知られでもしたら大恥だ。

 なんとしてでもこのまま第20層まで潜り込んで任務は終わらせたいのだ。


 だが、ここの層から出てくる小型ゴブリンという人型モンスターを相手に、俺は苦戦していた。


「小型ゴブリン相手なのに私の回復魔法必要なのかなぁ?」

「ふざけていないでさっさと回復させてくれー! 俺は人生で初めて怪我をしてしまったんだ……。痛くてたまらん!」


 まさかこんなところで後方支援が必要になってしまうとは誤算だった。

 今までは身体強化魔法のみで突破していたというのに……。

 ソフィアがいなくなったプレッシャーからなのだろうか。

 周りのモンスターが普段の何倍も強い気がしてならない。


「ミーン! 早く身体の傷を癒してほしいんだがー!」

「え? もうとっくに発動させているよ?」

「なんだって!?」


 俺の身体の痛みは全く変わらない。

 いや、もしかしたら治っているのかも。

 怪我をしてしまうなんて初めてだからな。

 痛みを覚えてしまったから、頭の中で痛い痛いと思い込んでしまっているのかもしれない。


 そうか!

 治っているんだな!


 ならば遠慮せずにこのまま小型ゴブリンと戦ってやろうじゃないか!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る