第2話 お父様へ報告した
「なんと! ダルム君がそんな酷いことを言ってきたのか!!」
まずは、今回の件をお父様に報告した。
家族で一緒に過ごしているときは言葉が乱暴なところもあるし厳しいことも言ってくるが、私の望みも聞いてくれる優しいお父様だ。
この辺りの土地を所有している子爵でもある。
婚約破棄を一方的に告げられたとはいえ、私の判断で勝手に「はい、そうですか」と決めるわけにもいかないだろう。
幼馴染とはいえあんな暴言を吐く男と一緒に暮らすこと自体無理があるけど。
「すまなかったな。ダルム君とお前は小さい頃は仲が良かったし、良い相手かと思って縁談を進めていたつもりだったが……」
「いえ、冒険者を一緒に始めてからダルムは変わられてしまったようです。どうやら自分の力に自信があるというか……。今までも異性にだらしないところを時々見ていましたが、ここまで酷くなってしまうと流石に……」
「ダルム君の力が活きるのはソフィアの回復魔法と支援魔法があってこそだろう? まさか自分の力だけだと思っているのか」
「どうなんでしょうかね……」
毎回ダルムには身体強化の支援魔法をかけて、その上で彼が負傷した瞬間に回復魔法を私が発動していた。
そのおかげでダメージを負ったという感覚がなかったはずだ。
だがそのせいでダルムは、無傷で討伐やダンジョン攻略を行えていたと思い込んでいたのかもしれない。
「まぁ、理由などどうでもいい。ソフィアをここまで侮辱するような者などと無理に結婚することもないだろう! 俺からダルム君の両親にこのことは告げる」
「ダルムの両親は元一流冒険者ですよね? その功績を認められて爵位を授与されたと聞いてますが」
「あぁそうだ。ま、俺には及ばないが。ダルム君への制裁はあいつらがやるだろうよ」
きっと家から追い出されて、彼自身貴族としての地位も危うくなるだろう。
そんなことになったら一夫多妻も出来なくなる。
だが、全く同情すらしていない。
それくらい私の心に深い傷を負わされたのだから。
「こんな目にあった直後にこんなことを言うのもアレなんだが……」
「なんでしょうか?」
「ソフィアは十分に自立できるだけの魔力と力がある。婚約相手は、お前自身で決めてほしい」
「良いんですか!? もしかしたら子爵家として──」
「お前は地位を気にするよりも幸せになってほしいんだ。それくらいの功績がある!」
不謹慎ではあるが、ダルムに婚約破棄されて、パーティーからも追放されたことで私の運気が急上昇したような気分だった。
私の本音としては、あまり好みではなかったダルムと結婚するよりも、自分で好きな人を作って恋愛結婚して、幸せな家庭を作りたいと思っていたのだ。
あわよくば、私の好きな冒険者任務も一緒に活動できるような王子様……。
ダルム相手だと全てが中途半端だったからなぁ……。
嬉しくてお父様に抱きついてしまった。
「おい、俺は婚約相手にはなれないぞ!?」
「お父様みたいな厳しくも優しい人がいいですね」
「そうか……ありがとう! 娘にそう言ってもらえると嬉しいもんだな。婚約破棄の件はこっちでなんとかしとくからお前はもう気にするな。そのかわり良い相手をみつけろよ?」
「はい!!」
婚約破棄とパーティー追放を命じられたときは今後の冒険者活動はどうしようか少し悩んでいた。
だが、お父様のおかげで、これからも冒険者活動は続けようと思えたのだった。
むしろ、今までより気合が入ったような気がする。
お父様に再びお礼を言って、私はすぐにギルドへ向かった。
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