新たな恋愛をしたいそうで、婚約状態の幼馴染と組んだパーティーをクビの上、婚約破棄されました
よどら文鳥
第1話 婚約破棄とパーティー追放
「ソフィアの魔法なんてもういらないわよ! そろそろ私たちのメンバーから離脱していただけないかしら?」
「何を言っているのですかマインさん! 回復魔法なしでダンジョンを進むつもりですか?」
ギルド依頼でダンジョン探索に入ろうとしたタイミングで、マイン=コウランから信じられないことを言われてしまう。
私ソフィア=エンブレムは、驚きのあまり他の仲間に助けを求めた。
マインさんの妹ミーン=コウランは姉に溺愛しすぎているため、絶対服従のようなところがあるからマインさんの味方になるのは分かっている。
私の婚約者且つ幼馴染でもあるリーダー、ダルム=ファイスレットならば助けてくれるはずだ。
だが……。
「ソフィア、悪いがマインの言っていることは正しい。俺もいつかお前を解雇しようかと考えていたんだ」
「そんな……」
「お姉ちゃんが間違ったこと言うわけないでしょ~。それに魔法支援はミーンだって出来るんだからっ」
ミーンは姉のマインにしがみつきながら、手の上に光を放った。
「ミーンったら素晴らしいわー! お姉ちゃんも華が高いわよ」
「そういうことだ。ミーンは詠唱すらしなくともこれだけの光を出せる。ソフィアの回復魔法も役に立ったことはあるが、お前の場合毎回詠唱しているじゃないか。つまりミーンの方が優れているのは明白だ」
え、まさか今までダルムは知らなかったの!?
最近ミーンが詠唱もなしで魔法を放っていられるのは、私の魔力を予めミーンに分け与えているからなんだけど。
他人の魔力を使うときは詠唱なしで発動できて当たり前なんだよ……。
まぁ、魔法は使えない代わりに前衛で剣士をやっているダルムなら知らなくても仕方がないか……。
「わかった? 妹さえいれば私たち3人でこの先のダンジョンだって余裕なのよ」
いや、おかしいでしょう!
そもそもマインさん……いや、もう敬語なんていいや!
マインとミーンが2人だけじゃ心細いって主張していたから、私とダルムのパーティーに入ってもらったんだけど。
しかも私がダルムにお願いして。
マインも剣士担当で、まぁまぁ強い……はず。
ミーンの魔法も発展途上だから一緒に行動すれば成長するかな、と思っていた。
だが、マインはいざという時の非常時にだけ動くと言い、殆どダルムに任せっきりだし、ミーンは私の魔力を頼りにするようになった。
こんな状況で追放だなんて、当然納得いくわけがない。
「ダルムと私で作ったパーティーでどうして私がクビなの?」
言ってやった。
今まで年上のマインには敬語を使っていたが、さすがに私も怒っているので今はタメ口上等だ。
「はぁ……。これだけは黙っていようと思ったんだが、仕方がない。本当のことを言ってやる」
ダルムは呆れたような表情をしながら、私に対して暴言を放った。
「幼馴染のお前は女としての魅力がない! マインとミーンは共に一緒にいて居心地がいいんだ。だが、お前が一緒だと自由にできない。それに俺とマインとミーンの3人だけでも十分に冒険者としてやっていける」
結局異性目的かよ!
私が邪魔なだけじゃん!
マインとミーンは前からダルムとの関係が怪しいとは思っていたけど、これでハッキリした。
ついに私も呆れてしまってこれ以上何も言うこともない。
「あら~ソフィアったら私たちにダルムを取られて妬いちゃってるのかしら!」
「お姉ちゃん、それは言い過ぎ~。悲しすぎて声にも出せないくらい落ち込んでいるのよ」
嫌味のように言ってくるミーンの方が言いたい放題のようだ。
まさかこんなことになってしまうなんて。
ダルムとは幼馴染同士だけど、親同士の関係もあって婚約している状態なんだが……。
ちなみにマインとミーンは、私たちが婚約者同士だということを当然知っている。
「と、いうわけだ。ソフィアと結婚してもつまらないからな。俺との婚約も破棄した上でパーティーも出ていってもらおうか。本当に邪魔で迷惑だったんだよ」
「責任は取ってもらうけど!」
「あぁ、もちろんだ。慰謝料をお前に払ってマイン達と愛のあるパーティーとして成り立てば安いもんだ。それに俺たちなら婚約破棄の慰謝料程度、冒険者依頼をこなしていけば簡単に稼げる!」
どっからそんな自信が出てくるんだろうか。
マインとミーンに夢中になりすぎて頭までおかしくなってしまったのだろうか。
この国だと、貴族もしくは一流の冒険者なら一夫多妻が認められている。
ダルムは冒険者でありながら男爵という貴族だ。
2人を嫁にすることは可能だが、果たして養えるほどギルドでやっていけるんだろうか。
それに、私をクビにするのは構わないけど、ミーンの回復魔法ってほんのちょっとの擦り傷とか切り傷にしか効果ないんだけど……。
それこそ自分の腕にくっついた蚊を退治しようとして、手で叩いたときの僅かな痛みを消すくらいの効力なんだよね。
今までは私の魔力を分け与えていたから重傷も治せていたんだけどさ。
まぁ、ダンジョンに入ればわかるか。
さすがに今回のダンジョンなら、命を落とすような危険な場所ではないだろうけど……。
苦労するだろうなぁ。
そう思いながら、「わかった、今までどうも!」とだけ言って、歩いて街へと1人で帰った。
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