第34話 side Nico

11時過ぎてお風呂入り、とりあえずリビングに戻る。

夜中に碧生くんが起きて、誰もいないのは困るだろう。

朝まで起きないかもしれないけど、今夜はリビングで過ごすと決めた。

ソファで寝てもいいようにと自分用に薄い掛け布団も用意する。

ソファの下で寝ている碧生くんを眺める。

なんでこんなことになってるんだろう。

碧生くんはしんどかっただろうな。嫌われてるだろう相手の家でその家族とご飯を一緒に食べるとか。考えただけで地獄だ。

でも、この状況がおもしろくて自然と笑っちゃう。

わたしが「誤解してた」と先に伝えてあげれば良かったのかも。

ってそれは碧生くんがまだわたしに気持ちがあるかものときに有効なだけで、今はもうどうでもいいかもしれない。

さすがに眠れないなぁ。そうだ。たまってる録画したドラマでも見よう。

間接照明だけ付けてテレビとハードディスクを起動させる。

作ったハイボールを近くに置いてソファのカウチに足伸ばしてクッションを抱く。

最高のスタイル。

抱いたクッションから碧生くんの匂いが少しする。

誰もいないからクンクンと嗅ぐ。わたしってば変態。

ドラマ見ようとしてたのに流れてたバラエティが面白くてそのまま見続け、声を出さずに笑っていたら、足元で碧生くんの体が動いた。

起きるかな。

目が開くかをじっと眺めてると碧生くんの瞼が少しずつ開く。

目が合った?と思ったら、いきなりカッと目が開いて、バサっと布団から飛び起きる。

寝起きでこの動きはすごくない?なんてどうでもいいことを思う。

「な、なんで俺、ここに。」

状況が飲み込めないでいる様子。

「お父さんが飲ませすぎだよね。」

なんでここにいるのか思い出すのにちょっと時間がかかったようだけど、なんとなく状況は把握できたらしい。

布団に手をついて俯きながら

「あっ、あー。すみません。すぐ帰ります。」

と立ちあがろうとするところを肩を押さえて布団の上に座らせた。

「まぁまぁ。烏龍茶でも飲んでったら。」

「えっ、じゃ、じゃあいただいたら帰ります。」

テーブルに置いていたペットボトルの烏龍茶をグラスに注ぎ碧生くんに渡す。

わたしは碧生くんの隣に布団をよけて体育座りをする。

さすがに布団の上に並ぶのはなんかいろいろまずい気がした。

碧生くんはわたしといるのが気まずいようで目を合わせてくれない。

わたしは話がしたくてどうにかして引き留めたくて、

「もう夜中だし泊まって行って。お母さん、明日の朝はパン焼くって張り切ってる。スウェット、お父さんのだけど良かったら着替えて。」

ずるいけどお母さんが楽しみにしてることを伝える。

「でもニコさんが俺にいられるの嫌じゃ…。」

もちろん実花ちゃんの話聞いてなかったらすぐに帰れと言ってた。

碧生くんの目を見て、

「嫌じゃないよ。」と言うと、

「な、な、な、なんでですか?俺のことどうでもいいからっすか?」

わたしの変わりようが怖かったようですごい勢いで碧生くんが迫ってきた。

嫌じゃないと分かったからなのか距離感もおかしい。

「違う違う。今日ね、たまたま実花ちゃんの話を聞いちゃって。」

と碧生くんを落ち着かせて今日聞いたことを話した。

終わるや否や碧生くんがいきなり布団の上で土下座した。

「本当に不誠実なことしてすみませんでした。」

その姿をみて、つられてわたしも

「大人気ない対応して本当にすみませんでした。」

と正座になって頭を下げた。

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