第26話 side Aoi

スマホに雨雲レーダーの通知が入ってカーテンからチラッと外を眺める。

暗くてよく見えないけど、窓に雨が強く打ちつけられている。

雨雲レーダーはよく当たるよな。

わっ、雷も鳴ってる。

スマホの時計を見ると23時。

2人はもう着いてるよな。

兄ちゃんと2人きりで車とか危険なことしか思いつかない。変なことされないか。

ニコさんにメッセージ送ろうかな。

メッセージアプリでニコさんを選ぶけど躊躇する。

作業してるところを邪魔したくない。

「がんばって」のメッセージくらいイイかな。

そもそも、キスしておいてそのままってわけにもいかない。ここは積極的にいこう。

でも鬱陶しがられないかな。

もう考えすぎてわけわかならい。

今朝の最後のやりとりのLINEスタンプが目に入る。

だいたいこの変なクマのスタンプはなんなんだ。

…買っちゃおう。

勢い買ってしまった。

勝手にお揃いにしただけでなんとなく満たされた。

スマホが鳴る。

ニコさん!?と画面を見ると「実花」。

実花かよ、こんな時間になんなんだ。

めんどくさいと思いながらとりあえず出ると

「あおくん、今家に1人なの。怖いから家に来てほしい。」

「えっ。」

おじさんは早起きだから22時には寝ると聞いたことがある。

こんな時間に2人ともいないなんて相当な緊急事態なんじゃないか。

「おじさんたちは?」

「おばあちゃんが家の段差で転んで動けなくなっちゃって。救急に連れてっていないの。」

「大丈夫なのか?」

「さっき電話あったんだけど捻挫で済んだみたい。」

「不幸中の幸いだな。じゃあ、もうすぐ帰ってくるんじゃ?」

「もう少しかかるみたいで…雷が怖くて。お願いあおくん!」


泣きそうな声で言われたら無碍にできない。

昔から雷怖がってたもんな。ってもう高校生だろ。

雨がひどくて車で来たのに実花んちの駐車場から家に入るまででびちょびちょだ。

一応家を出る前に一果おばさんにメッセージを送っといた。

ドアを開けるなりパジャマの実花が飛びついてきた。

「あおくんありがとう。」

ギュッと抱きついて俺の体に顔をうずめる実花の体を離した。

「おばさんたち帰ってくるまでいるから寝ろよ。」

バッグの中からタオルを出して濡れた頭や体を拭く。

「寝るまでそばにいてほしいな。」

と言いながらまた俺の腕に抱きつき、くっついて離れない。

「小さい子じゃあるまいし家の中にはいるから1人で寝ろよ。」

「あおくんのそばがいいから実花がここで寝る。」

と言い、部屋から布団と枕を持ってリビングのソファで寝始めた。

「あおくん、はい。」

と手を出す。

「ん?」

「手繋いで。」

差し出された手は無視して「おやすみ。」と半ば強引に終わらせる。

こうなるって頭ではわかってたのになんでここに来たかな。

ニコさんへの後ろめたさを感じ、来なければ良かったと今更後悔する。

おばさんから「1〜2時間で戻るから。」とメッセージがきた。

不貞腐れた実花はこっちに背を向けて数分で眠りにつく。

俺来なくても寝れたんじゃねえの?って思ったけど、今更そんなこと言ってもも仕方ない。

1人がけソファに座り、バッグからタブレットとイヤホンを出し、とりあえず動画を見ながらおばさんたちを待つことにした。


「碧生。」

「はっ!」

目を開けるとおばさんが帰ってきてた。

あ〜ソファに座って寝落ちしてた。首が痛い。

「ごめんね、明日も仕事でしょ。あっちで寝て。」

和室に布団が敷かれてる。

「うん。」

寝ぼけながら布団に入った。

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