第23話 side Aoi
骨董屋の喜多見さんちでメンテナンスをしているとスマートウォッチに通知が入る。
『ニコさん』
作業着のポケットのスマホを急いで出して確認する。
「お世話になりました。本当にありがとう☺︎」
と変なクマのありがとうスタンプ。
おい!キスはどこいった!
あまりに普通のメッセージにつっこんでいた。
なかったことになってないよね。
あぁ、俺はしたのかキスを?
「したよ!」
「あら?小田桐さんどうされたの?」
レジ台で本を読んでいた喜多見さんに驚かれた。
「あ、すみません。ひとりごとです。」
やべっ。イラついて声に出た。
確実にしたよ。
だってキスの余韻でキューッと心臓掴まれてしまう。
朝の一連の出来事を思い出すと顔もニヤける。
仕事中ということを忘れて悶絶してしまう。
「今日の花は言うことなしね。」
「えっ。」
いつもなら持ってきた花から4〜5本は勝手に替えられてしまうのに。
「ありがとうございます!」
店へ戻ってきた。
事務処理を済ませ店に入り、自分の業務をとりあえずこなす。
そのあいだもキスが散らつく。
「碧生くん、手伝って。」
「はい。」
店長が作った花束を持ってきた。
「昨日ニコちゃん大丈夫だった?」
『ニコちゃん』に過剰反応してしまう。ついでにまたキスの残像が。
「あ、あぁ、あのあと起こしてタクシーで帰しましたよ。」
「そっか。あ、これリボンつけてくれる?」
動揺してうまく答えられず適当なウソで切り抜ける。
店長が持っていた花束を俺に渡す。このタイミングで苦手なリボン付け。
動画見ていつも練習してるんだけどなかなか上達しない。
それでも、
「あれ、練習した?」
「え?」
「上手。」
意外にも褒められた。
初めて上手にできて嬉しい。
よっしゃー。
という感じで、自分の頭の中とは裏腹に今日1日調子が良かった。
自分のパソコンを閉じ今日の業務を終わらせる。
あ〜でもニコさんの気持ちはどうなんだろう。
俺のこと、嫌いではないよね。
でもあのキスのせいで嫌いになったらどうしよう。
話がしたい。
すぐにでももう一度ちゃんと自分の気持ちを伝えないと。
今のままじゃやり逃げだろ。
今から会えないかメッセージ送ろう。
とスマホのメッセージアプリを開こうとしたら
「え、今からニコちゃんを?」
真波さんが事務所の電話で誰かと話してる。
ニコさんがどうしたんだろう。
「なんでこんな時間にそんな場所へ?」
電話を切った後もボヤいている。
「どうしたんすか?」
「マネージャーからでね、車で2時間のところのホテルで明日の朝9時までに装花の依頼があったらしいの。で、先方がニコちゃんを指名したとかで今からニコちゃんを呼んでほしいって。マネージャーが連れて行くらしいわ。」
「えっ、そんなことあるんですか?」
「うん、たまにね。でもこんな夜からってね。ニコちゃんに連絡しないと。あ、碧生くん先に帰っていいわよ。」
「はい、お疲れ様です。」
仕事なら誘うことができないか。
それにしても昨日の今日で兄ちゃんとと一緒に過ごすのとかニコさんが心配。大丈夫かなぁ。
そもそも兄ちゃんと夜通し一緒?
本当に仕事なんだろうかと疑ってしまう自分がいる。
兄ちゃんがニコさんの前で変なことには4月のときから感じてた。
もともと変だけど輪をかけて変だ。見ていてパワハラがすぎる。好きな子をいじめる小学生みたいだ。
そんな感じだからこの話が怪しくてしょうがない。
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