第22話 side Aoi
「じゃあ行ってきます。鍵は明日会社でいいです。」
仕事行く準備しながら今までのことをいろいろ考えてた。
ニコさんがそっけなくなったのは2人で遊んだあとすぐくらい。
あの待ち受けの写真見て実花との関係を誤解してそっけなくしてたんなら…俺のこと気になってたってこと?
今日のニコさんは俺に対して表情が違う…気がする。
昨日の夜、もっといっぱいゆっくり話したいけど俺は仕事に行かないといけない。
「うん。本当にありがとう。行ってらっしゃい。」
ニコさんが玄関までお見送りしてくれる。
おいおい、このシチュエーション。同棲してるみたいじゃん。自分の家でニコさんがお見送りってどういう状況だよ!?それだけでテンション爆上がり。
今の、動画に撮って永久保存したい、なんて考えて無意識にポケットにいれたスマホを探るけど見つからない。
「あ、スマホがない。スマホ忘れちゃいました。」
「取ってくるよ。」
忘れ物を取ってくれるなんて、くぅ、俺の彼女か!心のなかでツッコミを入れる。
待ってるあいだも落ち着かずとパンツのちょっとしたゴミを払おうと腰を落とそうとしたら
「はい…わぁぁ!」
ニコさんの叫ぶ声。その声で顔をあげたら渡してくれようとしたときにニコさんがなにかにつまづいた。
「危ない!」
ニコさんを受け止めたら顔がぶつかり、ニコさんの唇の端と俺の唇の端がくっついた。
ほんの数秒、お互い固まったもののニコさんは急いで顔を離す。
その瞬間、俺の本能はスパコン並みの速さで動いた。
唇と唇が触れたことで昨夜からの欲求が大爆発したのだ。
咄嗟に立ち上がり腰に手を回しもう片方の手で頭を押さえ唇がしっかり重なるようにし直した。
つまりキスしてしまった。
相手の気持ち無視したキスといえど止められなかった。気持ちが高揚してるのがわかる。
ずっとキスしていたい。なんなら下品な話、舌も絡ませたい。
でも、ニコさんの気持ちを無視してるからゆっくり唇を離し、目を見つめると潤ませているじゃないか。ナンジャコリャー。こんな表情見せられたら言わないなんてできない。
「好き。」
声にならない声、口の中だけで言う。多分聞き取れないくらいの声。
口にすると好きが止まらなくてもっとぎゅっとしたい。なんなら押し倒したい。もういろんな欲求が込み上げて抑えるのに必死。なんとか抑えるためにニコさんの体をグイッと離してもとの体勢に戻す。
勢いでこんなことしちゃったけどどうしたらいいかわからず目線逸らし、しばらくお互い沈黙でいると、
「あ、ほら遅れるよ。」
顔を赤らめたニコさんにスマホを渡され出勤を促された。時計を見ると本当にヤバい時間。
「あ、あぁ、じゃあ行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
笑って小さく手を振ってくれた。
エレベーターの壁にもたれかかり苦悶する。
えーあの反応なに。イヤだったのかイヤじゃなかったのか。どっちなんだよ。
キスは拒否されなかったよな。告白聞こえたかな。
えー気になる気になる。
もう1回部屋戻ってちゃんと話す?
さすがにダメだ、遅刻する。
えーどうしたらいいの俺。
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