第19話 side Aoi
居酒屋の店員さんに頼んでニコさんをおぶるのを手伝ってもらいタクシーに乗り込み、降りるときは運転手さんにまたおぶるのを手伝ってもらい、今自宅マンションのエレベーターの中だ。エレベーターにもエアコンが付いているけど、残暑が厳しく、おんぶしていると背中が汗ばむ。
もうすぐ部屋に着く。マンションがエレベーター付きで本当に良かった。
ニコさんがいくら太ってなくても大人の女性をおぶって7階まで階段では上がれない。
部屋の前に着きスマホで部屋の鍵を開ける。ニコさんの靴はとりあえずそのまま、ベッドに寝かせてから脱がして玄関のたたきへ置いた。
ニコさんの足元に座る。
連れてきちゃったけど判断間違ったかも。手を出すわけじゃないけどすごくいけないことをしているような気がする。
なんていろいろ考えながら寝顔を眺める。
かわいいなぁ、ずっとみていられる。
…
「はっ。俺キモイだろ。」
ニコさんに見入ってる自分に気付き我に返って恥ずかしくなって手で顔を覆う。
大きく息を吐き、ニコさんにタオルケットをかけた。ひとつに結んだ髪が寝にくそうだなと思い、ヘアゴムを外す。
「すみません変なことはしません。」
と誰も部屋にはいないのにつぶやき、ゴムのあとがついた髪を指でサラッと梳かす。
髪に触れただけで指先から体全体へ電気が走ったうようになる。
頭を撫でてみるとまた電気のようなものが体に流れる。
この感覚がやめられない。触れたくて次は頬に。
フワッとしてて気持ちいいな。手が頬から離せない。
離せずいたらニコさんが寝返りを打った。起きるんじゃないかとドキドキしたけどまだ寝てる。
「あぶねー。」
無意識で寝顔と顔の距離が近づいていることに気付く。寝返りしなかったら危うくキスするとこだった。
「あぁ…キスしてー!」
このどうすることもできない欲求をベッドに顔を突っ伏し叫んで発散する。悶々とするよ。どうすんだよ、ほんとに連れてくるなんてやめれば良かった。
そもそもニコさんは寝てるしこの部屋には誰もいない。
チュッと軽く唇が触れるくらいなら。
あーダメダメ。
頬に軽くだけでも。
あーダメダメダメ。
肌が触れただけで止まらないのにキスしたらもう絶対とめられない。だいたいそんなキスしても意味ない。襲うようなことダメ、ぜったい。ここでしてしまったら明日から罪悪感で顔合わせられないよ。
俺は今夜一晩どうするんだよ。
眠れる自信がない。
汗ばんでいたからとりあえずシャワーを浴びてみて少しだけ気持ちが落ち着いた。
どういう形であれ好きな人と2人きりの空間。パッと見、幸せなようで付き合ってなければこれは拷問だな。ため息が出る。
そんな俺の気も知らないでスヤスヤ寝てるニコさん。
寝顔もかわいすぎか。
写真くらい撮ってもいいかな…。
もし俺がスマホ落としたら写真が流出→ニコさんに盗撮バレる→変態扱いされる
「だはぁ、それは一巻の終わりだ。」
そんな訳わからない想像するくらいやばい思考になる状況。ソファに寝転がって天井を仰ぐ。
とりあえず明日も仕事だから寝てみよう。
ベッドとソファの配置が垂直だから頭をベッドに向けるか足をベッドに向けるかって悩む。だけど、足をニコさんに向けるなんてあり得ないから頭を向ける。
俺の頭とニコさんの頭の距離、50センチくらい。
寝息が聞こえる。
気にしない。
気にしない…。
寝れるか!
朝が白んできた。やっと朝になってくれた。といってもまだ朝の5時前。
こんなに夜が長いことはなかった。
頭をかきながらソファから起き上がる。あー今日の仕事大丈夫かな。
ニコさんのはだけたタオルケットを肩までかけるついでにまた眺める。
彼氏になりたいなぁ。
彼女になってほしいなぁ。
髪の毛が顔にかかってるのを言い訳に髪を避けて頬を手で包み込むように触れた。
無防備な寝顔もたまらない。
好きが止まらない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます