第10話 side Aoi

ひと通り遊び尽くして、軽く飲みながらご飯を一緒に食べた。

汗でびちょびちょとか電車何時があるかなとか話ながら並んで歩いてたら、

「お二人で写真いかがですか?」

施設内に作られたフォトスポットの女性スタッフに声をかけられる。

大小のカラフルなバルーンと造花で飾られてる。

「かわいい!撮ろう撮ろう。」

ニコさんが腕を引っ張るのをつい

「えー。」

と俺は言ったけど、もちろん撮りたい。

でもニコさんは俺の言葉で立ち止まり

「あ、さすがに写真まではね。」

と正気に戻ったように足を駅のほうに向ける。

やっちまった。拒否したと思われた。ここで引き下がったら一生後悔する。ツーショット撮るためにも説得だ。

「いやいやいや、撮りましょうよ。」

「だって、碧生くんイヤでしょ。」

「俺も撮りたいっす。」

「ホント?」と聞いてくるニコさんの仕草に一撃された。

ちょっと首傾げて上目遣い。可愛いすぎる。

さらに

「楽しすぎて彼氏と勘違いしちゃった。」

と彼氏(仮)発言。もう彼氏にしてもらっていいですよ。

「俺のスマホで撮りましょ。」

スマホをカメラマンのおねえさんに渡して風船で大きく作られたハートの中に立って並ぶ。

「はーい、こっち向いて。手を繋いだりバックハグしてもいいですよ。」

おねえさんがカップル前提で話しかけてくる。

「彼氏じゃないですよ。」

とニコさんが笑いながら返す。

バックハグって。さすがに恋人じゃないのにできないよなぁ。しようかと少しでも頭をよぎった俺、相当ヤバい。だけど…

「はーいチーズ。」

の声と同時にニコさんの肩に手を回し体を引き寄せくっついた。

連写のシャッター音が聴こえる。

「いい写真撮れました。」

おねえさんが笑顔で言う。

ニコさんが驚いた顔でこっち見るから

「彼女と錯覚しました。」

とだけ言いスマホを受け取りにその場を離れた。

自分がどういう表情しているのかわからないくらい緊張した。

「ありがとうございました。」

おねえさんから受け取るときに

「おにいさんファイティン。」とにこやかに指ハートまでもらった。

俺の気持ちダダ漏れのようだ。

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