第7話 side Nico
店休日なのにとくに予定がないから自宅の庭をいじる。一緒に手入れをしている母が
「相変わらず予定なしなのね。」
と休みに家にいる娘にチクッと嫌味を言う。
「ないない。こうやってお母さんと庭のお花たちと会話するのが楽しいの。」
「お母さんはそろそろ赤ちゃんと戯れたいわ。」
暗に早く孫が見たいと言われる。
「頑張ります。」
彼氏作って早く結婚して、としょっちゅう言われるから適当に返事する。でも、さすがに1日家にいてもつまんないし、どこか出掛けようかな。
あっ。そうだ、買っただけで読んでいない小説を持ってカフェに行こう。
たまには電車で移動もいいなと思い、車は置いて店の近くのカフェに来た。
「ホットカフェラテLサイズと塩バターマフィンとチーズベーグルください。」
少し遅めのランチをとることにした。
顔馴染みのカフェの店員さんと軽く雑談して注文を待ち、どこに座ろうか眺める。
今日は6月中旬のわりに気温が上がらず湿気も少なく過ごしやすい。
席はまあまあ空いている。テラス席がいいなとそちらへ進むと1人掛けは埋まっている。混んでるわけじゃないから2人掛けに座っちゃおう。
まずは腹ごしえら。
温めてもらったチーズベーグルを冷める前に一気に食べる。表面にのっているチーズがカリカリで美味しい。カフェラテに口をつける。
塩バターマフィンはあとに残して、本でも読もう。バッグに入っている文庫本を出して開く。30分ほど読み進めるもののこの本はハズレだ。本の退屈さと外の気持ちよさで眠気に襲われる。5分くらいならいいよね、と目を瞑る。
目を開けるとカフェでうたた寝していたことを思い出した。はぁ、気持ち良くて結構寝ちゃったかな…ん?なにかがおかしい。寝起きの頭がだんだんはっきりしてくる。
背もたれに寄りかかってるのかと思ったら、わたしは誰かの体にもたれかかってるようだ。
首が落ちた状態で、今、視界に私以外の腕がもう一本見える。
え、なんで隣に人が?
勝手に相席されてる?
恐る恐る顔を上げて腕の持ち主を確認すると、
「わぁ〜!!」
横に碧生くんがいて、わたしの奇声で耳を塞いでいる。
「え、え、なんでなんで?」
顔を見ると不機嫌。え、服によだれでも垂らしちゃったとか頭をよぎり口の周りを拭うけどそんなことはなかった模様。
「まじで何考えてるんすか。」
え、寝起き早々なぜ怒られるのかわからない表情をしていたようで
「置引きとか痴漢にあったらどうするんですか?」
と不用心すぎるわたしを心配して怒ってるみたい。
美人とかかわいいわけでもないからそんなことに無頓着で、
「大丈夫だよ、そんな若い女の子でもないし。」
とちょっとおちゃらけながら返すと、
「そんなこと…そういう問題じゃないです。」
強い口調で言われたから謝った。
「すみません…ハックシュン。」
そして、思いのほか肌寒かった。肩をさすろうとしたらわたしのじゃないカーディガンが肩から掛かってる。
「これ。碧生くんの?」
「そうです。コーヒー冷めてますよ。」
「カフェラテね。」
「どっちでもいいっす。」
ですよね。
碧生くんは呆れてるのか返しが冷たい。っていうか、不機嫌になるなら付き合わなくていいのに。
なんて言ったらもっと不機嫌になるか。
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