第5話 side Nico
碧生くんが入社して2ヶ月が経ち、だいぶここの仕事も慣れてきたようで、
「碧生くん。ちょっと手伝って。」
「碧生くん、電球替えて」
「碧生くん、荷物受け取って」
「碧生くん!」
とわたしがお願いすればなんでも「はいはい。」とやってくれる。
「ニコちゃん。そのうちパワハラで訴えられるよ。」
事務所で作業していたら店頭から戻ってきた真波さんに突然言われた。
「なんでですか?」
「碧生くんのこと使いっ走りにしてるでしょ。」
「してないですよ。お願いするといろいろしてくれるから。」
「それがパシリだよ!もう。ダメだよ。ハラスメントに厳しい時代なんだから。自分でできることは自分で!」
「はい。」
注意されてしまった。お願いすればやってくれるからつい調子に乗っちゃった。
「重すぎて持てないものは頼んでもいいですよね。」
「そういうものはしょうがないけどさ。」
「ここだけの話、碧生くんの外見で力仕事を難なくしてくれると萌えます。」
顔だけ見たらかわいいのに腕の力が入ったときの筋肉が見えたとき、ギャップにやられた。
「萌えるって。」
と真波さんは呆れながらも
「でもわかるわ。実はわたしもおんなじこと思ってた。」
女子トークでキャアキャア盛り上がる。ただこれは碧生くんに聞かれたらセクハラになるかもな。
店を閉め、今日の事務作業も終わった。
真波さんは早番で先に帰ったし、アルバイトの子も帰った。
碧生くんは…まだ出先から帰ってきてない。
骨董屋の喜多見さんのお店かぁ、いつも指摘多いから時間かかるんだよね。碧生くんは、装花はまだ見習い中だから、メンテナンスをお願いしている。それだけでもこちらも他の仕事ができるようになるのでありがたい。
待つこともないけど、なかなかできない事務所の片付けでもして碧生くんを待つか。
いらない段ボールに去年の日報やら売上を綴ったファイルを詰め込む。
ヨイショ…お、重い。紙って重いんだよね、これからはやっぱりペーパーレス化を推めなくては。今詰め込んだモノをしかたなく段ボールから少し出してなんとか運べるようになった。
事務所の奥にパーテーションで仕切られた倉庫部屋に入る。倉庫ぐっちゃぐちゃだよ。今度片付けしないとね。と、毎回この部屋に来るたび思う。あんまり入らない部屋だからしないんだよ、これが。
とりあえず空いてる棚は…上の方しか空いてない。近くに置いてある脚立を立てて荷物を持って2段目に足を置いて立つ。
お、重い…けど持てないことはない。
碧生くんに頼めばこんなのも軽々としてくれるんだろうな。でも真波さんに注意されたばかりでなんとなく頼みづらい。だから、これくらい自分でしなくちゃ。
グイッと段ボールを頭より上に持ち上げようとしたら、重心が後ろに引っ張られた。
ヤバいヤバい!
このまま段ボールと一緒に後ろへ倒れちゃう…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます