第2話:side Nico
数日後
「店長、六反田さんち行ってきます。」
六反田さんのお店が開店する前に装花の手入れをしに行く。
3日に1回手入れに通う契約をしている。月初めに花を総入れ替えして季節感を出し、その後は間引いたり追加したり。店から2キロ圏内の4店舗限定でおこなっている。
なかなかの人気の企画で、店に人手があれば増やせるんだけど真波さんとわたしとでは4店舗がいっぱいいっぱい。
「気をつけてね。あ、碧生くんも行ってくる?」
真波さんが、隣で仕事を覚え中の碧生くんに声をかける。
「いいんですか?」
「ニコちゃん一緒にお願い。」
運転は碧生くんが引き受けてくれた。
「碧生くんって実花ちゃんといつからの付き合いなの?」
「ぼくが10才くらいのときですかね。実花のお母さんとぼくの伯母が友人で、預けられてたんです。」
「おばさんのお友だちの家に?」
「10才のときに両親が離婚して母に引き取られて。でも、仕事優先する人だったんで、祖父母は遠くに住んでたので頼れず、母の姉が見てくれてました。で、伯母が用事のときにいつも預けられてて。」
聞いてるだけでなんか複雑。
「他人が聞けばネグレクトっぽいですけどね。どういう親なんだって。でも、子どもながらに母の仕事は応援していたし、そのころでも通信手段も普及してるんでスカイプで顔を見ながら話できるからそんな寂しくもなかったかなって。なんだかんだで社会人になれたからまぁいっかって。」
笑いながら話す。まぁ、いっか、だなんて10才で親と離れ離れって本当は寂しかったんじゃないかな。
「おかあさん、海外によく行ってたの?」
「今でもほぼ海外っす。着きました。」
さすがに通ってただけあってナビなしで到着した。
碧生くんの話を聞いてたらあっという間にお店に着いたちゃった。おかあさんは何の仕事してるんだろう。聞きたいけど根掘り葉掘り聞くのも良くないか。
「おはようございます。」
開店前だけど店の入り口は開いているので挨拶しながら入る。
「ニコちゃんおはよう。」
六反田さんの奥さん、一果さんが顔を出す。後ろからついて来ている碧生くんにすぐ気づき、
「碧生!ニコちゃんのところに配属されたの?」
六反田さんの奥さん、一果さんが碧生くん見るなり抱きついて喜んでいる。
「たまたま?」
「う、うん。」
なんか含みのあるやりとり。碧生くんの目がちょっと泳いでるのは気のせい?
「ニコちゃん、碧生のことよろしくね。ビシバシやってあげて。」
母親のように振る舞う一果さんと屈託なく笑う碧生くん。2人の関係がよくわかる。
この日の仕事終わり。
碧生くんと帰るタイミングが一緒になる。
「碧生くんってどこに住んでるの?」
いつも自転車で通勤してるから近くなんだろう。
「ここから電車で1駅行ったところっす。」
「自転車でちょうどいいっすね。」
碧生くんの言い方をマネする。
「なんすか。それ。」
「碧生くんみたいでしょ。」
2人で笑いながら外に出ると、
「あおくん!」
制服姿の実花ちゃんがいる。待っていたのか駆け寄って碧生くんにしがみつくように手を握りくっつく。
「おっ、実花。」
もともとかわいい実花ちゃんが制服で現れるだけでもキュンってしそうなのにくっつかれたら男子はたいてい落ちちゃいそうだけど、碧生くんは慣れてるのか
「『おっ、実花。』じゃなくて、なんでメッセージ送っても返事くれないの?」
ちょっとつれない雰囲気。
「おばさんに聞いたのか。」
「そうだよ!こんな近くにいるのになんですぐにウチ来ないの?」
「いろいろ忙しくて。」
「じゃあさ、今からご飯行こう。」
「今から?」
2人のやりとりを傍観していたら、
「ニコさんも一緒に行きませんか?」
と碧生くんが急に振ってきた。返事に戸惑っていると碧生くんの横で実花ちゃんの顔が一瞬で曇り、わたしの方を見て小さく首を振る。
「あっ、えーと、せっかくだけど予定あるから。誘ってくれてありがとう。」
と言うと実花ちゃんの表情が明るくなった。
なんとわかりやすい。
大好きな碧生くんと2人でデートしたいよね、わたしは邪魔者だ。
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