第17話 幼馴染のレオンハルト

「ドックスはいずれここに泣き寝入りしてくるだろう。そうなるまでの間、飢え死にさせないようにコッソリと見張りをつけているんだよ」


「な……? 泣き寝入りするって……。そのときはどうするのです!?」

「もちろん、入国は断る。あえて断り、一人で生きていかねばならない恐怖を体験してもらう。己のやってきたこと、それからキャルム元陛下を殺した疑惑も浮上している。各々の罪を償わないとな」

「そんなことまで……!?」


「あぁ、俺が調査しているときに独り言でアイツが自分で白状していた。全く……、聞いているとも知らずに熟バカな王様だよ」


 レオンハルトはため息を吐きながら呆れていた。


「どうだ? レオンハルト君はこれだけ活躍しているんだ。そろそろお前達がくっついてもいいと思っているが……」

「はひ!」

「俺はお前だけしか愛するつもりはない」


 そう言ってくれるのは嬉しいんだけれど……。

 幼馴染同士なんですよ!?

 それに、何度もレオンハルトのことを怒ったり文句言ったり……。

 そんな私のどこが良いのかわからなかった。

 私が魔女という特殊な女だからと言われたら悲しい。


「嬉しいんだけど、いつから私のことをそこまで……」

「何を言っているんだ? お前がドックスに取られるずっと前からに決まってるだろう!」

「え!? でも、そんな素振り一度も……」


 私は目を大きく開いて驚いた。

 どうして早く言ってくれなかったんだ……。

 小さい頃の私は、レオンハルトのことを好きだった。

 だが、特に進展もないし、当時の陛下からどうしてもと言われてしまい渋々ドックスの元へ行ったというのに……。


「そりゃあ、俺も小さい頃は弱かったし、とても王子相手に叩けるような器はなかったからな……。だが、ここにいる陛下から色々教えてもらったよ。まだ時間はあるから強くなって王子から奪えとな。だが、どんなに頑張っても国相手に戦えなかった……。だから俺はグレて色々な女と遊ぶようになってしまった」


 あれ……。

 レオンハルトのことを散々軽い男と文句ばかり言っていたけれど、そうさせてしまったのは私なのか!?

 だとしたら、とんでもなく申し訳ないことをしてしまったではないか!


 すぐに頭を下げて謝った。


「ごめんなさい……全く知らなかったとはいえ、あなたのことを軽い男だのヤリチョメチョメだの、文句ばかり言ってしまって……」

「ヤリ○○とは今初めて聞いたが……」

「え……? あ、あの。すみません!!」


 私は相当混乱してしまっている。

 思ったことをベラベラと喋るのはよくないな。

 だが、そんなことをお構いなしにレオンハルトが私の頭を撫でてきた。


「お前と久々に再開したとき、どれだけ嬉しかったと思う? 気絶しているお前を運ぶとき、どれだけ感情を押さえて我慢したことか……。照れ隠しで口調は荒げてしまったが、昔も今も気持ちはかわらんよ」

「そうだったの……ありがとう。お父様、レオンハルトとだったら良いのよね?」

「前々からそう言っているだろうが。幸せになりなさい」


「言っておくが、俺はお前が魔女になろうが聖女に戻ろうが、たとえ神様になったとしても二度と離さないつもりでいる。しつこいかもしれないが宜しく頼む」


 うっすらと涙が溢れてしまった。

 不器用だが彼なりの気持ちの表現だということも私にはすぐにわかった。


「うん、離さないでね」


 幼馴染であるレオンハルトに初恋をしてからかなりの年月が過ぎてしまったことはどうしようもできない。

 だが、ようやく初恋が報われたのだった。


 今日からはレオンハルトと一緒に新国家を創っていきます。

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婚約破棄と追放された聖女は、国を出て新国家を作っていきます〜セッカチな殿下の身勝手な行動で国は崩壊しますが、もう遅いです〜 よどら文鳥 @yodora-bunchooo

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